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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
147/911

147.循環の迷宮~5階②~

 『循環の迷宮』探索の3日目。今は5階の一番奥、6階への階段の近くで野営をしているところだ。

 今晩はこのダンジョンで出会ったバーナビーさんのパーティとご一緒させて頂いている。


 お互い4人のパーティだから、全員で8人。

 やっぱり人数が多いと賑やかになるよね。


「おおー! バーナビーさんの干し肉料理、なかなか面白い味がしますね! とっても美味しいです!」


「そうでしょう、そうでしょうとも! この味を出すために特別な香辛料を用意したんですよ!」


 とりあえずエミリアさんはバーナビーさんとお料理のことで盛り上がっている。

 ……うん、確かに美味しいなぁ。


 買って持ち込むのも良いけど、現地で作ってすぐ食べるっていうのも良いよね。

 多分、雰囲気とかそういう要素も大きいんだろうけど。


「でもアイナちゃんが持ってきたこのお料理も美味しいよ~! プロの味がする!」


「あはは……。それはプロが作ったお料理ですからね。

 私が作ったものといえば、こっちの簡単なスープくらいなものです」


「これだよね? ……うん、家庭の味って感じがする!」


 そ、それは仕方ないよね? 私はプロの料理人じゃないんだから。

 ……お料理の経験といえば一人暮らしで自炊してたくらいだし、そんなにハードルを高くされても困るのだ。


「――でもバーナビーさんを見てると、ダンジョンの中で作るのも良いかなって思います」


「そうですね、ヒナ共はうるさいですけど結構楽しいですよ。

 アイナさんは高レベルのアイテムボックスをお持ちのようだから、本気を出されたら私はもう敵わないと思いますが……」


「いえいえ。料理の腕は全然、まだまだですから――」


「……っていうか、ヒナ共って何よ!?」


「え? 飯時になるとぴーちくぱーちく騒ぐでしょ?」


「なんですって!?」


「……モニカはそうだけど、私まで含められるのは心外……」


「メイジーさんは静かなイメージありますよね。あんまりぴーちくぱーちく感は無いかな……?」


「いやいや、アイナさん。彼女はこう見えて一番注文が――どげふっ!?」


 あ、メイジー殿さんの鉄拳がわき腹に入った。


「……何か……?」


「い、いえ……。何でも……」


 バーナビーさんのパーティって、案外激しいパーティだよね。

 うちは優しさに満ち溢れたパーティで良かった良かった。


 ……そういえばバーナビーさんのパーティのもう1人、ビリーさんはどうしたのかな?

 そんなことを思いながら辺りを見回すと、少し離れたところでリーゼさんとお話をしているのが見えた。


 おやおや、確か昨日も2人でお話してたよね?

 これは新しい恋の予感かな? ……何ていうのは下世話か。



「――ところでアイナさんって、普段は何をしているんですか?」


 遠くの2人に意識を傾けていると、バーナビーさんがおもむろに聞いてきた。


「え?」


「いえ、今回このダンジョン探索はここまでなんですよね?

 せっかく知り合えたので、何かのご縁があればもっとお話をしたいなって思ったんです」


「……そうですね。私は2週間ほど前に王都に来たばかりなんですけど、最近は錬金術師ギルドで依頼を受けたりしていますよ」


「おお、錬金術師の方だったんですね!

 私の知り合いも錬金術師ギルドでいろいろと依頼を受けていて、先日C-ランクになったと喜んでいました」


 C-ランクと言えば、冒険者ランクで考えればなかなかのポジションだよね。

 実際、ルークやエミリアさんがそこになるわけだし。


「ランクが上がるのは嬉しいですからね。気持ちはとっても分かります」


「失礼ですが、アイナさんの錬金術師ランクはどれくらいなんですか?」


「えっと、S-ランクです」


「は……? え……(エー)ですか?」


「いえ、(エス)です」


「へ、へー!? アイナさん、すっごーい!!」


「……本当。S-ランクの人なんて初めて見た……」


「何やかんやで推薦して頂きまして……。

 ですので、今はもりもり依頼を受け始めたところなんです。――あ、ちなみに冒険者ランクはE+ですよ」


「ああ、そっちは普通ですね。良かった、人間じゃないかと思った……」


「いやいやバーナビーさん、それはひどい!」


「あっと、これは失言……!」


「でも実際、私もSランクなんて1人しか見たことありませんから気持ちは分かりますね」


「そう言って頂けると救われます。

 ところでアイナさんが見たSランクって、どなたですか?」


「英雄シルヴェスターです! 辺境都市クレントスで見たんですよ。……遠目でしたけど」


「おおー、シルヴェスター様ですか。私も彼が王都にいるときは遠目ながらに見ましたね。

 ――そうですか、彼はクレントスに行ったのですか……」


「ええ。凄い歓待を受けていましたけど――何か気になることでも?」


「辺境都市クレントスと言えば、その北にダンジョン……『神託の迷宮』があるのはご存知ですか?」


「私は聞いただけですけど――

 ルークは行ったことがあるんだよね?」


「はい。何も無い、1階だけのダンジョンでした。

 魔物も宝箱も何も無くて、ただの洞窟のような場所でしたよ」


「実は私たちも1回だけ行ったことがあるんです。

 ルークさんと同じで、何も無い洞窟を1階だけ見て帰ることになってしまったのですが……。

 しかし腐ってもダンジョン、やはり何か秘密がありそうな感じはしましたね」


「秘密……?」


「ダンジョンを活動の中心にしている者には伝わっていることなんですが――

 『神器』と『迷宮』には何やら関係があるそうなんです」


「……え? それってどういう……?」


「具体的には誰も知らないんです。もしかしたら、昔の誰かが作った想像の話なのかもしれません。

 しかし永らく伝えられてきた話なので、神器を持った英雄が迷宮の近くに行くということに強い興味を持ってしまいました」


「英雄シルヴェスターが『神託の迷宮』に――

 確かそんな噂もあったっけ? 私はルークから聞いただけだけど」


「はい、クレントスには英雄が訪れるような場所はそこくらいしかありませんからね。

 とは言え、あの場所ですらも何故英雄が行くのか……それは謎でありますが」


「ふーむ……」


 神器を持った英雄。神器を作ろうとしている私。

 迷宮に向かった英雄。迷宮の核を持っている私。


 ――そう考えると、私の今までの旅路も何か不思議な縁を感じてしまう。

 このまま進んでいけば、もしかしてその謎も分かってきたりするのだろうか。


 でもそれは何だか世界の奥底を知ってしまうようで、どこか怖いところもあるけど――興味深いところもやっぱりあるかな。


「そういえば『神託の迷宮』は1階だけですけど、『循環の迷宮』は30階以上あるんですよね?」


「え? はい、そうですね。30階は強酸が空気に含まれるので誰も通れないという話です。

 でもそこから下の階を想像すると、それだけでわくわくが止まりませんよね!」


「確かに……! それでその強酸なんですけど、私がどうにかできないかなって思ってるんです。

 錬金術で中和する何かを作れないかなって」


「お、おお……!? それがもしできれば、新たなる道が……!?」


「私たちはさすがにそこまで行く予定は無いんですけど、もしバーナビーさんたちが挑戦することになったらご相談くださいね。

 その際には情報を頂けると助かるのですが」


「はい! ……でも30階は遠いですからね。

 私たちはこれからも奥を目指し続けますが、それにしてもいつになることやら――」


 夢は追いかけ続ければいつかは叶う。そんな風に言うこともあるけど、みんながみんな最後まで追いかけられるわけでもない。

 でも、バーナビーさんたちには個人的には頑張ってもらいたいな。



 ――そのあとも私たちは、バーナビーさんのパーティの面々といろいろなことを話した。

 さすが現役のダンジョン冒険者だけに、彼らからは様々な話を聞くことができた。

 これは是非、私たちのダンジョン探索に活かさせて頂こう――……と思ったんだけど、私たちはもう6階の滝を見て帰るだけなんだよね。


「……そう。アイナさんたちとは、今日で最後なんだね……」


 メイジー殿さんがそんなことを言ってくれた。

 声は小さかったけれど、少しでも残念がってくれるのは嬉しいものだ。


「はい、ダンジョンの外でもまたお話してくださいね!」


「……うん。それじゃ土産話、持ってく……」


「面白そうね、私も一緒に行くよ!」


 モニカさんもメイジー殿さんの話に混ざってきた。


「お2人ともありがとうございます。楽しみにしてますね!」


 その後、どこか打ち解けることのできた2人と遅くまで話に花を咲かせてしまった。

 明日からも引き続き奥に進む2人には悪いことをしてしまったかもしれない……。

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