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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
144/911

144.循環の迷宮~3階②~

 その後は問題無く進み、私たちは4階への階段があるスペースに辿り着いた。

 すでにいくつかのパーティが野営をしているようで、1階のときよりも少し多いように感じる。


「それじゃ、今日はここまでにしましょうか。まずは他のパーティの方に挨拶をしてきますね」


「アイナさんが行くなら私も行きますね。夕飯の準備に取り掛かれませんし」


「では私とリーゼさんはテントの設営をしていましょう。リーゼさんも良いですか?」


「うん、大丈夫。ぱぱっと済ませちゃおう」


 それぞれが役割を決め、2日目の野営の準備が順調に始まった。




「こんばんわ」


「あ、アイナさん。無事にここまで来れましたか」


 まずはバーナビーさんたちのパーティに声を掛ける。


「はい。最初に少し失敗しましたが、そのあとは無事に何とか」


「あ、あー……。どこで濡れるか分かりませんからね、このダンジョンは。

 でも服を乾かしていたのは良かったと思いますよ」


 バーナビーさんは今朝のことを踏まえながら言った。

 少し気まずかった雰囲気も思い出したのか、しっかりフォローもしてくれる。


「そうだ! 昨晩ルークがいろいろと教えてもらったそうなので、そのお礼に夕食のお裾分けを持ってきても良いですか?」


「え、本当に!? それは嬉しいなぁ。

 私たちは今回10階まで行く予定なんですけど、ほとんどが干し肉でして……」


「リーダーはそこから30のレシピを持ってるけどね!」


 私たちの話が聞こえていたようで、バーナビーさんのパーティの1人がそんなフォローをしてきた。


「えぇ、30もですか? 凄いじゃないですか」


「同じものばかりだと、みんな文句を言うんですよ……。

 それなら自分が作れば良いのに……」


「あはは……。

 ところで10階まで行くんですか? それも凄いですね!」


「ふふふ。私たちはそんなに強くは無いですけど、何回も来るうちに敵のパターンを見つけましてね。

 このダンジョンに特化した戦いをしながら、何とか10階くらいまでには行けるようになったんです」


「なるほど。私たちは初めてっていうこともあって、5階までにする予定です」


「5階ですか……。

 それなら6階もちょっと覘いてみると良いですよ」


「何かあるんですか?」


「6階の最初のところに大きな滝があるんです。それはそれは見事なものですから、そこまで行くなら是非見ておいた方が良いかと」


「滝ですか。こんなダンジョンの中に……」


「ダンジョンは『神の贈り物』と言われることもあるほどですからね。

 常識では考えられないことや場所も多いものです。いや、だからこそ面白いと言いますか――」


「リーダー! 準備の手が止まってるよ~!!」

「寝る2時間前には食事を済ませるぞ!」

「……そちらさんも準備があるでしょ……」


 バーナビーさんの話が長くなりそうになった瞬間、向こうのパーティの面々がツッコミを入れ始めた。


「――おっと、すまない! それじゃアイナさん、続きは後ほど!」


「あ、そうですね。お忙しいところ失礼しました」



 私たちが少し離れると、バーナビーさんは手際の良い手付きで夕食の準備を始めた。

 干し肉だけとは言うものの、大きな鞄から調味料のようなものを出していろいろとやっているようだ。

 感心すると共に、アイテムボックスが無いと大変だなぁとしみじみと感じた。


「――それにしても、何か面白いパーティですね。バーナビーさんは大変そうですけど」


 エミリアさんが楽しそうにそんなことを言った。

 確かに見ていて面白いし、結束力もありそうだ。そんなパーティを見ていると何か微笑ましくなってくる。


「そうですね、好きなことを仲良くやるのが一番です。

 ――さて、バーナビーさんたちにお裾分けしないといけませんし、他のパーティにもぱぱっと挨拶を済ませてしまいましょう」


「はーい♪」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 私たちの食事が終わる頃、バーナビーさんのパーティの面々がやって来た。


「アイナさん、みなさん、こんばんわ」


「こんばんわ。あれ、どうかしたんですか?」


「お裾分けありがとうございました。お皿を返しに来たのと、そのお礼に来たんです。

 めちゃくちゃ美味しかったですよ!」


「ああ、わざわざすいません。そうだ、ついでに紹介しちゃいますね。

 改めまして、私はアイナです。うちのメンバーはこちらからエミリアさん、ルーク、リーゼさんです」


「ではこちらの紹介もさせてもらいますね。私がバーナビーで、あとはモニカちゃん、ビリー、メイジー殿」


 うちもそうだけど、何となく敬称でどんな関係か分かるのが面白いよね。

 仕事の場合は敬称を付けないのが基本だけど、ここは仕事の場では無いわけで。


「よろしくお願いしますね!」


「アイナちゃん、お料理美味しかったから今度一緒にここ潜ろっ」


 早速モニカさんがぐいぐいきた。この圧力、どこかテレーゼさんを連想させる。


「モニカ……距離を詰めるの早すぎ……」


 それにツッコむメイジー殿さん。確かにこの落ち着きっぷり、バーナビーさんが敬称で『殿』を付けるのも頷ける。

 私は敢えてメイジー殿さんと呼ばせて頂こう。もちろん頭の中だけにするけど。


 ちなみにもう1人のビリーさんは、リーゼさんに話し掛けていた。

 バーナビーさんはルークと話し始めていたから、私とエミリアさんはこの2人と雑談することにしようかな。


「ところでエミリアちゃんは司祭様なんだよね? 可愛い♪」


「あはは、ありがとうございます。モニカさんは……えぇっと?」


「私は盗まない盗賊だよ! 一通りのスキルは持ってるけど、人様のものには手を出さない良い子ちゃん★」


「その代わり、ダンジョンに入り浸ってる……」


 盗賊っていう職業もゲームなんかではよく聞くけど、でも結局は犯罪者なんだよね?

 モニカさんの場合はあれかな? 錠前破りをできる鍵の専門家とか、クラッキングの知識を持ったホワイトハッカーみたいなものかな?

 技術なんて使う人の気持ち次第でどうにでもなっちゃうからね。私の錬金術も含めて、だけど。


「盗賊のスキルっていうと、やっぱり罠を見つけたり鍵を開けたりする感じなんですか?」


「そそそ。こういうダンジョン探索には私みたいのがいないとね!

 ……ところでアイナちゃんたちは、宝箱の罠はどうしてるの?」


「私が鑑定で罠を見破って、それでどうにかして開けてる感じです」


「ええ、それはそれで凄いね!?

 でも『開けたら中身ごと爆発する罠』みたいなやつもあるから、どうしようもない宝箱も出てきそう」


「そういうのもあるんですか。『水爆弾』という罠なら今日ありましたけど……」


「ああ、あれは水飛沫が凄いよね。それはどうやって開けたの?」


「ルークが服を抜いでから開けました。他の3人は濡れないように隠れてましたね」


「あはは、なるほど! そういうダンジョン探索も面白そうだねぇ」


「でも……モニカは途中でキレそう……」


「そうかも!」


 そう言いながら、モニカさんは明るく笑い飛ばした。

 少し賑やかな感じはするけど、こういう明るい人がいるとパーティも華やぐよね。

 何か大きな問題があったとき、ムードメーカーみたいな人が支えてくれる場合も多いし。


 うちのパーティはみんな良い子ちゃんだから、いざというときには少し脆いかもしれない。

 みんな抱え込み過ぎるというか――って、そういう私もきっとそうなんだろうけど。


 やっぱり過酷な冒険を続けるには戦闘の強さだけじゃなくて、心の強さも考えないといけないのかな?

 そんなことをぼんやりと、バーナビーさんのパーティを見ながら考えてしまうのだった。

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