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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
138/911

138.前日準備

 錬金術師ギルドを出たあとは、引き続き街中の食べ物屋さんを巡った。

 パンやお惣菜、備品やちょっとしたものを買いながらお料理を作ってくれるところを探したけど、やはり翌朝というのが厳しいようだった。


 その上、時間が遅くなるほど仕入れの関係で引き受けるのが難しくなるからね。

 錬金術師ギルドの食堂には早目に行っていたから、そこはそれが良かったのだろう。


 とはいえ何軒もあたったことで、もう2軒のお店でもお願いすることができた。

 実際のところ、それだけあれば十分だろう。

 そもそも携行食だけじゃないという時点で、良い食環境になるわけなのだから。



「――というわけで、それだけで1日が終わってしまいました」


 宿屋の食堂でひと段落。

 今日もジェラードとリーゼさんはおらず、いつもの3人だ。


「まったくですね。もっと早く連絡ができていれば、もっとスムーズに注文をできたでしょうけど……。

 早目早目が大切だということを痛感しました」


「日々これ経験ですね。もし次があれば、次こそはあっさり準備が終わるかも?」


「ダンジョンに行けば準備の過不足がまた分かってくるでしょうし、そうやってダンジョンへの理解度が深まっていくんでしょうね」


「そうですねー。でも今回の準備は無事に全部終わりましたし、あとは明日出発するだけですね。

 ……ああ、行く前にお料理取りに行かなければいけませんけど」


「はい、お料理楽しみです!」


「本題はダンジョン探索ですからね!」


「わ、分かっていますとも!」


 でも途中のお楽しみがあるというのはやっぱり良いよね。

 『今から5日間、ずっと携行食です!』なんて言われたらやっぱりどこかしんどい部分もあるし。



「――さて、ところで今日は少し早めに解散して良いですか?

 錬金術師ギルドで受けた依頼をこなしておきたいかなって」


「ああ、34件あるんでしたっけ……?」


「アイナ様、寝不足にならないようにお気を付けください……」


「大丈夫、大丈夫。2時間もあれば終わるはずだから!」


「2時間で終わるのもまた凄いですけどね……。

 ちなみに報酬ってどれくらいもらえるんですか?」


「えぇっと、物自体は大したことないから……全部で金貨30枚くらいです」


 S-ランク以上の報酬とはいえ、全部が全部高額の報酬では無いのだ。

 とはいえ2時間で金貨30枚というのはやはり破格の報酬ではあるのだけれど。


「2時間で金貨30枚って……。

 アイナさん、将来は安定してそうですよね……」


「あはは、おかげ様で。最近は冒険者ギルドの依頼も受けていませんし、こっちで稼いでおかないと」


「しかし、できれば魔物討伐なども受けていきたいですね……」


 ルークもそこはしっかり主張する。

 戦闘すればするほど強くなる、今は伸び盛りの時期のようだ。


 ルークにも自分の理想とする像があると思うし、そこは尊重してあげないとね。

 ……ということは、しっかり魔物討伐も受けていかないといけないか。


「そうだね。ダンジョン探索が終わったら少し落ち着くだろうし、魔物討伐も受けていこう」


「はい、それは嬉しいです!」


 ダンジョン探索が終われば、あとに残るのは神器関係が大半だ。

 王様から工房をもらうなどの話はあるものの、実際のところは開店休業にしても良いし――あ、もしかして開店必須だったりするのかな?

 要らないからといって他の人に売るわけにもいかないだろうし、もしかしたら早まったかもしれない……?


 とはいえ、いざとなれば人を雇ったりするのも視野に入れて、私はできるだけ自由な時間を確保することにしよう。



「――っと、それじゃ解散ですね。アイナさん、引き留めてしまってすいません」


「いやいや、これくらいは別に。それじゃ2人とも、しっかり休んでくださいね」


「アイナ様も無理をなさらず」


「お寝坊は禁止ですからね!」


「耳に痛い。それじゃ、部屋に戻りましょー」


 私たちはいつも通り部屋の前までいって、そこで別れることにした。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――2時間後。

 自分の部屋に戻り、ひたすらアイテムを作り続ける。


 作るだけならもう少し早くできるんだけど、納品用の箱を渡されていたんだよね。

 さすがに王族の依頼を剥き出しのアイテムのままで渡せないということで、錬金術師ギルドから提供を受けていたのだ。


「ふぅ、これでおしまいかな……」


 最後のアイテムを箱に入れ終えて、ようやく一息つくことができた。


 依頼の内容はレオノーラさん発と思われるヘアオイルや乳液を始め、少し違った美容関係のアイテムが含まれていた。

 ムダ毛処理クリームやら化粧落としなんていう、今まで作ったことも無いものもあったんだけど……そこも問題無く作ることができた。


 作れなかったらダンジョン探索のあとにしようとは思っていたけど、何だかんだで全部作れたのは良かったかな。


 それにしても、こういう風に依頼を受けていると自然と需要のあるアイテムが分かってくるし、工房を開いたときの品揃えの参考になりそうだよね。

 そんなことを考え始めると、どうしても夢は広がっていってしまう。


「でも、本命は神器だからなぁ……」


 私の旅の目的、神器作成。やはりこれはどうしても変えられない。

 クレントスで『神剣デルトフィング』を見たときの、そしてそれを作れることを知ったときの興奮が忘れられないのだ。


 『自分しかできないことをやる』


 これ以上に興奮できることがあるだろうか。いや、ない。


 神器を作ったあとのことは何も考えていないから、将来はゆるゆると工房を切り盛りしていくのも良いんだけどね。

 でもまだまだ、未来のことなんて想像が付かないわけで。


「さて、アイテムも作ったし、身の回りのことも終わったから――そろそろ寝ようかな?」




((…………))


((…………))




 ――ん? 部屋の外で、何だか誰かの話し声がする……?


 珍しいなと思いながら扉を開けて廊下を見てみると――そこには誰もいなかった。


 方向的にはルークの部屋の方だったけど……誰か来たのかな?

 うーん。ちょっと気になるし、行ってみることにしよう。




 コンコンコン。


 ルークの部屋の扉をノックすると、しばらくしてルークが現れた。


「アイナ様? 珍しいですね、どうかされましたか?」


「夜遅くにごめんね。何だかルークの部屋から声がしたかなって。宿屋の人でも来てたの?」


「え? いや、誰も来ていませんよ?」


「あ、そうなんだ。あれ、気のせいだったか……」


「ところでアイナ様は、作業はもう終わったのですか?」


「うん、ちょうど終わったところだよ」


「それでは明日も早いですし、新しいことに挑戦しにいくのですから――早めにお休みください」


「そうだね、少し神経質になっていたかも? それじゃ、おやすみー」


「はい、おやすみなさい」


 そのままルークと別れ、自分の部屋に戻る。


 どうやら誰かの話し声――というのは気のせいだったらしい。

 これは恥ずかしい! さっさと寝ることにしよう……。

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[一言] 体当たり女の強襲か?
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