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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
131/911

131.2人のお土産

「――どうしたの? アイナちゃんとエミリアちゃん……」


 19時、宿屋の食堂。

 私とエミリアさんがテーブルに突っ伏しているところにジェラードとルークが戻ってきた。


「「……疲れました」」


「今日は大聖堂に行ったんですよね……? 何があったんですか……?」


「はい……。レオノーラ様から魔法を教えて頂いてました……」


「まさかあんなにスパルタになろうとは……」


「ふ、ふーん? 大変だったんだねぇ……。それじゃぱぱっと食べて、さっさと休む?」


「そうですね、まずは食べないと……!」


 ジェラードの言葉に、エミリアさんが復活した。

 ぬぬ、言葉だけで復活できるとは羨ましい。仕方ない、私も頑張ろう。


「まずは注文をしちゃいますか……。私は軽めで……えっと、これでいいや」


「いつも以上に軽いですね……!? 私、今日はもうがっつりいきますよ!」


「あはは、エミリアちゃんはいつもじゃないの」


「そ、そんなことはっ!」


 あると思いまーす。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 食事を口に運び始めると、どうにか私にも気力が戻ってきた。

 うん、食事って大切だね。


「はぁ、生き返るー……。いや、それにしてもまさかあそこで腕立て伏せが始まるとは……」


「え、何で魔法の勉強で腕立て伏せが?」


「何か上手く脱力できてないからって……。

 エミリアさんに教わったときも手を擦り合わせてましたし、私の魔法のイメージと何か違う……」


「あはは、魔法の覚え方なんて人それぞれだからね。

 アイナちゃんがイメージしているのは、多分瞑想とか想像から入るタイプなんじゃないかな」


「そうそう、まさにそれです!」


「もちろんそういったやり方で教える人もいるよ。

 良い悪いじゃなくて、今回は教えてくれる人がそういう方針だったってだけだね」


「大聖堂の人って、何だか肉体派ですよね……」


「否定できませんね!」


 エミリアさんが即答する。

 見た目は完全に魔法系っぽいのに……何で覚え方が肉体系統一なんだろう。


 ちなみに私の腕立て伏せに付き合って、エミリアさんも腕立て伏せをさせられていた。

 結構な回数はできていたのだけど、レオノーラさんは何故か限界まで挑戦させていた。理由はよく分からない。


「それでアイナ様、魔法の方はいかがでしたか?」


「うん、おかげでしっかり使えるようになってきたよ! はい!」


 私はルークに指輪をはめた指を差し出した。


「え?」


「ちょっと指輪、取ってみてー?」


「えぇっと、それでは失礼して……」


 ルークはしばらく頑張ったものの、指輪を取ることはできなかった。


「ふふふ、どうだ!」


「なるほど、確かに指にくっついている感じがします……。

 情報操作の魔法も掛けてもらったことですし、これでもう失くす心配はありませんね」


「そうだね、あとはルークにも覚えてもらったら装飾魔法の件はおしまいかな」


「そ、そうでした……。私も頑張ります……」


 ルークは思い出したように言った。

 でも私が教えられるならいつでも良いからね。焦らずに頑張ってもらえれば良いかな。


 それにしても、私もついに自分で魔法を使えるようになったんだね! これは単純に嬉しい!

 ……レオノーラさん曰く、ごく初級の魔法らしいんだけど。


 ちなみに装飾魔法の使い方を簡単に説明すると――

 マナ操作だけでやる方法は、例えば指輪の場合は――肌と指輪の接する場所にマナを満たすイメージを作るだけ。

 つまりマナを接着剤みたいに使う感じだね。他には釘を打ち込むようなイメージでも良いらしいんだけど、こっちは少し痛そうだからパスしておいた。


 詠唱を伴ってやる方法は、マナを身体から離して、そこに言葉で魔法的な命令を与える――のだとか。

 その命令は普通に口で言えば良かったんだけど、『マナを身体から離す』っていうのがよく分からなくて、先の腕立て伏せに繋がったのだ。

 おかげで何とか分かるようにはなったけど……その対価としてかなり疲れることになってしまった。


「でも、エミリアさんなんて早々に使えるようになっていたんですよ。何か応用編までやってたし」


「ふふふ、私は魔法の経験者ですからね! 基本編は余裕でした」


「ちなみに応用編って、どういうものなんですか?」


「えっとですね、落としたときに光を発するようにするんです!」


「……へぇ?」


 エミリアさんの答えに、ルークは良く分からないといった表情を浮かべた。


「指輪とかイヤリングって落としたら見つけにくいことがあって……。

 街中ならまだ良いんですけど、原っぱとかで失くしたら見つけにくいじゃないですか?」


「おお、なるほど。そういったときに便利ですね」


「もっと応用すれば音も出せるようになるらしいんですが、私はさすがにそこまでは……」


「光らせる魔法だから、光属性の魔法を使えるエミリアさんと相性が良かったっていうのもあるんですよね」


「そうです、そうです。おかげで今日のうちに使えるようになりました!」


 満足げに笑顔を浮かべるエミリアさん。

 やっぱり新しい魔法を使えるようになるのは嬉しいよね。


「――というわけで、こっちの首尾は上々だったよ。ルークたちの方はどうだったの?」


 私は装飾魔法の話をひと段落させて、ルークとジェラードの話を聞いてみることにした。


「はい、今日はまず武器屋に向かいました。

 試し切りのブースにジェラードさんと行ったのですが――」


「いやぁ! ルーク君の剣は力強くて良いね!」


「そういうジェラードさんも、とても速い剣速で素晴らしかったです」


「試し切りのブースの方が心配になるレベル」


「さすがアイナ様。若干お店の方の目も厳しくなってきたところで、魔物と戦ってみようという話になりました」


「え? 外に行ったの?」


 これは予想外の展開だ。

 てっきり1日を街中で過ごしていたと思ってたんだけど。


「僕もたまには魔物と戦ってみたくなってねぇ。冒険者ギルドで討伐依頼を受けていったんだ♪」


「ルークとジェラードさんが一緒だったら、魔物の方も大変ですね」


「今までの魔物討伐はルーク君がメインだったんだよね。

 せっかく行って僕の獲物が無かったら嫌だったからさ、魔狼の群れの討伐をしてきたよ♪」


「ま、まろう……?」


「話によれば悪い魔物使いがいて、ダンジョンの魔物を――何かよく分からない方法で外に持ち出したんだってさ。

 それで、大きな魔力でその魔物をたくさん複製して暴れまくってたみたい」


「す、凄いことしますね……」


 魔物使い……ゲームとかでは聞いたことがあるけど、そういう人もこの世界にいるんだね。

 凄い錬金術師もいるのだから、凄い魔物使いとか――もちろん他の職業の凄腕もいるのだろう。


「でも案外とあっさり、すぐ終わりましたよね。

 私とジェラードさんで多分50匹くらいずつ、あとは他の参加者が1人いましたが……20匹くらいでしたでしょうか」


「もう1人の方に比べて、圧倒的すぎじゃないですかね……」


「冒険者ギルドの人も驚いていたよ? C-ランクの実力じゃない――って」


「それで、首謀者の魔物使いはジェラードさんが捕まえたんですよ。

 最後のダッシュはお見事でした」


「いやいや、あれが魔物だったら僕が負けていたと思うよ。対人間は僕の方が得意だっていうだけで」


「はぁ、凄かったんですねぇ……」


「――あ、そうだ。魔狼を倒してたらさ、魔石を落としたんだよ!

 お土産にアイナちゃんにあげるね!」


「え、良いんですか!?」


「アイナさん、ずるーい! 私には無いんですか!?」


「あはは、今回のはアイナちゃん用かなぁ。

 もう持ってるやつだけど、たくさんあったら良いかなってやつだし」


 え? 私が持ってる魔石?

 それって『空箱の魔石』? もしかして『安寧の魔石』!?


 ジェラードは微笑みながら私に魔石を1つ渡してくれた。

 ど、どっちだろう!? かんてーっ


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 【迷踏の魔石(小)】

 不思議な音を出す

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 ……………………。


 お前の存在を忘れてたぁあああああああああああああああああああああっ!!!!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴミwwwww でも持ってたらいつか、役に立ったりしてな 絶対音の出せない空間でこの魔石だけは音が出せて、 音を出せば無効化できる強力な魔法を敵に使われたりとかな 存在する以上、なにか意味…
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