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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
130/911

130.装飾魔法、初級編

「やっと来たわね、待ちくたびれたわよ」


 私とエミリアさんが大聖堂に着くと、レオノーラさんがいつもの感じで出迎えてくれた。

 わざわざ入口まで出迎えてくれるだなんて本当にありがたいことだ。


「レオノーラ様、おはようございます」

「レオノーラさん、おはようございます」


「……あら? 今日はルークさんはいらっしゃらないの?」


「はい、今日は別行動で他のところに行っているんです」


「そうなの。前回はあまりお話できなかったから、今日はと思ったんだけど」


 ほほう……。

 ルークは最近モテ期なのかな? 正体不明の高貴な女性にレオノーラさん。

 ストーカー娘とツンデレ娘……、ちょっとキャラは濃いかな。


「レオノーラ様……もしかしてルークさんに興味が!?」


「そ、そんなわけないじゃない! 私には婚約者がいるの、ご存知でしょ?」


「おぉ、そういう方がいらっしゃるんですね」


 さすが王族。そういう人がいるというだけで世界が違うことを思い知らされる。


「ふふ、機会があればアイナさんにも紹介してあげるわ。

 さて、それでは中に入りましょう。今日はエミリア様の部屋でお勉強をすることにするわよ」


「えっ」


 レオノーラさんの提案にエミリアさんは驚いた。


「何か文句でも? それに、今日のために片付けをなさったんでしょう?

 私もあれだけ手伝ったんだから、少しくらいはお邪魔しても良いはずよ」


 ……あ、レオノーラさんにも手伝ってもらったんだ? なら仕方ないよね。


「それじゃ今日はエミリアさんの部屋で」


「アイナさんまでっ!? ……分かりました、手前の部屋なら何の問題もありませんので!」


「……奥の部屋は絶望的だからね」


 レオノーラさんがぼそっとつぶやいた。一体、どうなってるんだろう……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「それではあまり綺麗な部屋ではありませんが、どうぞ……」


 エミリアさんの案内で、以前お邪魔したレオノーラさんの部屋の近くの部屋へ。

 中に入ってみると、そこはきちんと整頓された部屋だった。


「おお、綺麗にしているじゃないですか!」


 片付けたばかりだから当然だろうけど、散らかっている様子もなく、置いてあるものもすべて整頓されていた。

 ちなみに奥の扉はしっかりと閉ざされ、その前には何か綺麗な感じの布が横断するように掛けられている。


 わざわざあの布を取ってまで奥には行きにくいかな……。

 さりげない飾り付けと共に、この奥には行くな――そんな強い主張が感じられた。気にはなるけど、今回は行かないでおこう。


「2日も掛けましたが、何とかここまで片付けられました。あとは半年くらい掛けて奥の部屋をどうにかすれば……」


 ……え、そんなに掛かるの?


「その間はどうするんですか……」


「アイナさんと一緒に宿屋に泊まりますよ? だから大丈夫です!」


 少しきょとんとしながらも元気に言うエミリアさん。それって――


「半年も、王都にいるかなぁ……」


 特に今後の予定は無いけど、私が王都を離れることも普通にあり得るのだ。

 神器を作成するために遠くに行かなければいけなくなったとき――とか。


「むむむ、それは予想外の展開!

 ……そうしたらどうしましょう。レオノーラ様の部屋に潜り込みましょうか」


「ちょっと、何をおっしゃっているの!?」


「た、例えばのお話ですよ!」


「そんなことになるくらいなら手伝いはするから、時間が空くたびに戻ってきなさい!」


「えぇー……?」


「エミリア様の部屋でしょ!?」


「ぐぅ、確かに……。あ、でもこっちの部屋にベッドとかを持ってくれば――」


「そんなことは私が許さないわ。生活環境はきちんとしておくべきよ!」


「ぐぅ、確かに……」


 いつものようにエミリアさんがやり込められている。

 ちょっとかわいそうな気もするけど、それでも何だか仲良く見えるから羨ましい限りだ。


「――さて、それではエミリア様。今日もお茶をお願いするわ」


「はーい」


「私も何かやりましょうか?」


「そうね、アイナさんはお客様だから座っていて」


「はーい」


 手持無沙汰なこともあって、何か手元を動かしておきたかったけど――とりあえず2人に任せてぼんやりすることにした。

 お客様と言われれば、そのように振る舞っておこう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――それではそろそろ装飾魔法を勉強しましょう」


 お茶を飲みながら少し歓談したあと、レオノーラさんが切り出した。


「「よろしくお願いします!」」


「えっと……装飾魔法といってもいろいろあるのだけど、今日はアクセサリを落としにくくする魔法で良いのよね?」


「はい、それでお願いします!」


「分かったわ。まずはこの魔法だけど、3つの方法があるの。

 1つ目はマナ操作で完結するもの、2つ目は詠唱を伴うもの、3つ目は精霊に手伝ってもらうもの」


「精霊……! そういうものもあるんですね……!」


「……3つ目は、精霊と個別の契約が必要だから今回は省略するわ。

 アイナさんの期待を裏切って申し訳ないのだけど」


 私の言葉に、レオノーラさんは苦笑いをした。

 ファンタジーな響きに反応しすぎて、とても良い笑顔をしてしまったかもしれない……。これは恥ずかしい。


「だ、大丈夫です! 他のでお願いします……!」


「それではマナ操作の方からね。例えばこの指輪なんだけど――ちょっと引っ張って取ってくれる?」


「え? それじゃレオノーラ様、失礼しますね。えい……っ」


 エミリアさんがレオノーラさんの指にはめられた指輪を取ろうとするが――取れない。

 というか、動かない。


「それではアイナさん、お試しになって?」


 そう言いながら、レオノーラさんは私に手を差し出してきた。


「失礼しますね。えい……っ」


 レオノーラさんの手に触れると――柔らかい! 肌がきめ細かくて綺麗!

 ……じゃなかったね。えっと、指輪は全然動かなかった。


「――動かせません」


「これが今日教える魔法よ。マナの入れ具合で効果も変わるから、その辺も踏まえてお教えするわ。

 そのあとに詠唱を伴うものまでいくわね」


「マナ操作だけのものと、詠唱を伴うものって何か違うんですか?

 詠唱が無いほうが良いと思うんですけど」


「マナ操作の方はずっと意識していなきゃいけないの。意識をずっとそこに持ち続けるということね。

 アクセサリを身に付けるなんて日常のことだから、ずっと意識しているなんて無理でしょう?」


「なるほど、そういう違いがあるんですか……」


「それに詠唱を伴うとは言っても、熟練すればそれも不要になるのよ。

 例えば――エミリア様のヒールを見たことはあるかしら? あの魔法だって本来は詠唱が必要なんだから」


「おお、それでは両方覚えたいですね!」


「ある程度のマナ操作ができれば、詠唱がある方も使えるようになるはずよ。

 せっかく私が教えてあげるんだから、今日中に完璧にマスターすることね」


「え? でも私はまだ魔法を1つも使えないんですが――」


「あら、それは光栄ね。今回の魔法が、最初に覚える魔法になるのね」


「アイナさん、とりあえず覚えられなかったら私と一緒に練習を――」


「エミリア様? 最初から何故逃げ道を作っているのかしら?」


「ひっ」


 レオノーラさんはエミリアさんを微笑みながら、何か凄いオーラを発していた。

 まずい、今日中に覚えられなければ何かされそうだ……!


「え、エミリアさん……。死にもの狂いで覚えましょう……!」


「頑張ります……。もしダメだったら、私の屍を乗り越えていってください……」


 本当に死ぬことはないんだけど、全力で頑張ろう……っ!!

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