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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
127/911

127.依頼の受注

 昼食後、再び図書室に戻って本探し。

 神器関連の本は無いものかと調べたものの、他に見つけることはできなかった。


「人生、そんなに甘くはないか……」


 そんなことをつぶやきながら、先日見かけた王立図書館のことを何となく思い出す。

 私は入ることはできないけど、時間があったらエミリアさんに調べてきてもらおうのも良いかな?


 でも、本の貸し出しはしてないんだよね。

 全部覚えてきてもらうわけにもいかないし、それはそれで上手くいかなそうだ。


 ――もしかして、錬金術師ギルドで活躍したら資格をもらえたりしないかな……。


 自分で王立図書館の資格を取れるのであれば、それが一番手っ取り早いのだ。

 それならまずは何か動こう。動かないと、何も始まらないからね。


「さて、図書室はこれくらいにしてダグラスさんと少しお話してこようかな。

 S-ランク以上の特別な依頼もあるっていうし……」


 私はひとまず図書室を出て、錬金術師ギルドの受付に戻ることにした。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「アイナさああああん! お疲れ様ですうううう!」


 とりあえず声を掛けて来たのはテレーゼさん。

 だから恥ずかしいから大声で呼ぶのは止めてください。


「テレーゼさんもお疲れ様です。

 ダグラスさんはいますか? 依頼の件でお話したいんですけど」


「あ、それなら私がご案内しますね!」


 そう言いながらテレーゼさんは何やら資料を手に取り始めた。


「ダグラスさーん、いらっしゃいますかー!?」


「ちょ、アイナさん!?」


 私の呼び掛けに、ダグラスさんが奥から出て来た。


「――お、アイナさん。またテレーゼが何かやったか?」


「やってませんよ、ねぇ……?」


 私はにっこり微笑みながらテレーゼさんに尋ねる。


「も、もちろんですよ……。

 主任、アイナさんが依頼の話をしたいと……。はい、これ資料です……」


「おお、準備が良いな。ありがとう、テレーゼ」


「いえいえ……!」


 ダグラスさんはテレーゼさんから資料を受け取りながら満足そうに頷いた。

 危ない危ない、テレーゼさんから仕事を受けたら――本来と違うルートで仕事を受けたらトラブルになりそうだからね。

 仕事は仕事、それ以外はそれ以外でしっかり区別しないと。


「さて、それじゃ依頼の紹介をするから向こうの席に行こうか」


「あ、私も行きますね!」


「テレーゼは来る必要ないぞ?」


「でも本来は私の仕事ですし!」


「今は俺の仕事だから大丈夫だぞ?」


「くぅ~……っ」


 テレーゼさん、あえなく撃沈。


「ささ。アイナさん、向こうにどうぞ」


「はーい」


 うなだれるテレーゼさんを受付に残し、私たちは片隅にあるスペースに移動した。




 小さなテーブルを囲む2人席。

 テーブルの上に先ほどの資料を置いて、ダグラスさんと向かい合って座る。


「さてと、依頼の件だが――アイナさんにはS-ランク以上のものをぜひ受けてもらいたいな」


「掲示板に貼られているのはそれ以下の依頼なんですか?」


 遠くを見れば、掲示板にはびっしりと依頼票が貼られている。

 そしてその前では大勢の人たちがそれを眺めている。


 ――そういえばあの人たち、錬金術師なんだよね?


 ふとそんなことを思うと、何か嬉しくなってきた。

 王都に来るまで、錬金術師は1人としか会ったことがなかったのだから。


「B+ランク以下のものは掲示板に貼っているぞ。

 それと、あとは特に受注制限の無いもの――かな」


「なるほど、ではあっちから受けても良いわけですね」


「そうだな。あまり簡単なのは受けてもらいたくはないけどな。

 ……さてと、テレーゼが準備しておいてくれたものは……ファーマシー錬金とアーティファクト錬金の依頼か。

 あん? 何故かパプラップ博士の依頼も入っているな……」


 パプラップ博士……?

 ああ、バイオロジー錬金でププピップの豚を研究してる人だっけ。


「今日のお昼に食堂に行って、そこでその話をしたので……。それ繋がりでしょうか」


「おお、アイナさんも食べたのか? あの肉、うめぇよなぁ……」


「そうですね、とても美味しかったです。……やっぱり、それ関係の依頼なんですか?」


「ああ、何か凄いエサを試してみたいんだと。

 『高栄養飼料』の作成だな。素材と作り方は提供してくれるそうだが、これは難しそうだ」


「難しい……?」


「素材が劣化しやすいものだし、発酵の手順もあるから――温度管理や湿度管理が大変だな。

 それに時間も1か月くらい掛かるみたいだし……」


「それって失敗したらどうするんですか? 提供してもらった素材は弁償……?」


「ああ、いや。弁償は必要無くて、報酬は成功報酬になっているな。

 S-ランク以上の依頼だとこういうものも結構多いぞ」


「でも、本人がやらないくらいには手間なんですよね……」


「ま、そういうことだな。

 自分がやるには時間が無いし、他人がやるには難しいし……といった感じか」


 でもそれ、私的には何の問題も無いよね。

 素材も最初から揃ってるし、手順は全部すっ飛ばすし。


「それではまずそれを受けましょう」


「え? 詳しく見てないけど大丈夫か? 失敗が多くなると、信用は落ちるぞ」


「多分得意な感じだと思うんで大丈夫ですよ!」


「ふむ、それならお願いするか……」


「他は何かありますか?」


「あまり受けすぎても大変になると思うぞ。『高栄養飼料』は時間も掛かるそうだしな。

 その合間にということなら、これはどうだろう」


「これは――アーティファクト錬金ですか」


 思い出のアクセサリにできるだけ良い錬金効果と追加効果を付けたい……という依頼だ。

 こういうのって『できるだけ』の部分が曲者なんだけど、私は問答無用で最大値を付けられるから問題無いよね。


「これも受けましょう。まだいけます!」


「……凄いな。でも最初だっていうこともあるし、あと1つにしておこうか。

 アイナさんの実力はこの前見せてもらってはいるが、依頼の実績はまだ0だからな」


「そうですね、確かに。これからどんどん信用を築いていきましょう」


「そうしてくれると嬉しいぞ。

 それじゃバイオロジー錬金とアーティファクト錬金ときたから――最後はファーマシー錬金にするか。

 一気に3分野の依頼をこなせば、注目度も上がるはずだ」


「売り込み上手ですね!」


「使えるものは何でも使うさ!」


「直接的な物言い! でも嫌いじゃないですよ」


「ははは、アイナさんはそういうタイプだと思ってたからな」


 確かに、私ははっきり言う人は嫌いじゃないかな。

 その分、表と裏がある人は苦手なんだけど。


「……そうだなぁ。それじゃ、これはどうだろう」


「えぇっと、これは――」


 ハゲ薬。


「……あ、これは――できなくは無いんですけど、今回はパスで」


「む、そうか……。……え? 作れはするの?」


「何回か作ったことはありますけど、今はちょっと……そう、素材が難しいもので!」


 もちろん嘘である。

 今回パスしたのは、先日ジェラードから『育毛剤はあまり売らない方が良い』と言われていたからだ。

 報酬もそんなに高くはないようだし、今回は別のものにしよう。


「素材があればできるのか……? ちなみに効果はどんな感じだった?」


「髪の寂しい感じの頭に掛けたら、ふっさふっさふっさふっさになってましたね」


「ふっさふっさふっさふっさ……。

 な、なぁ……。それ、作ってもらうわけにいかないかな……。今回の報酬は安いけど、この手の依頼ってずっとあるんだよ……」


「でも、際限ないですよね?」


「ま、まぁそうだな。ハゲは1人じゃないからな……」


 それじゃひとまず却下。やるならやるで、慎重にジェラードと相談してみよう。


「作れるようになったらお伝えしますね。今回は別のものでお願いします」


「わ、分かった……。

 それじゃ、この中だと――『目覚めの粉』『全状態異常治癒ポーション』『抗菌薬<8172型>』あたりかな」


 ……ん? 『抗菌薬<8172型>』って、確かガルーナ村で作ったやつだよね。


「それでは『抗菌薬<8172型>』を受けます。

 ……というか、今持ってますね」


「な、なんでそんなものをピンポイントで持ってるんだ……?」


「少し前にガルーナ村……ミラエルツの北にある村なんですが、そこで作ったものが残っていまして――」


「あ!? もしかして、疫病の村を救ったっていうのは――アイナさん!?」


「え? あ、伝わってましたか?」


「そりゃもちろんさ! 凄腕の錬金術師が200人以上の村人を救ったって……!

 ははー、それじゃ持ってても不思議は無いか、なるほど……!」



 ダグラスさんからひとしきり感心されたあと、結局『抗菌薬<8172型>』の依頼を受けて、そのまま即納品。


 他の2件は持ち帰ることになり、受付のテレーゼさんに手続きをお願いした。

 私がパプラップ博士の依頼を受けたことに、テレーゼさんは何か満足している様子だった。

 今後のププピップの研究にご期待ください――といったところだろうか。


 さて、用事も済んだし、今日のところはもう宿屋に帰ろうかな。

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