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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
118/911

118.幸運の鐘①

「こんばんわ♪」


「ほら来た!」


 ガルルンのご神体にお祈りをしたあと、3分ほど経った頃にジェラードが現れた。


「おお……これがガルルンのご加護ですか……」


「え? え?」


 私の自信たっぷりの言葉とエミリアさんの感心の言葉を受けて、さすがのジェラードも混乱していた。


「――すいません、こっちの話でした。ジェラードさん、こんばんわ!」

「こんばんわー」

「こんばんわ」


「こ、こんばんわ? 遅くなってごめんねー、お待たせしちゃったかな?

 あ、もうガルルンの置物は見ているの」


「いえ、これは受け取り確認のときに見ちゃったやつなんですけど――これだけお披露目してたんです」


「なるほど。ところで、今回はどれくらい受け取ったの?」


「全部で11個ですね。案外多いなーって思ったんですけど、よくよく考えたら100個注文してました。

 あと89個、いつか受け取らないと!」


「アイナさん……。改めて考えると、それって凄い量ですよね……」


「王都までの道中で売ったりあげたりする予定でしたからね……。

 手にするのが王都までずれ込むだなんて、思ってもいませんでしたけど」


「それなら王都で広めれば良いんじゃないかな。ここはこの大陸で、発信力が一番強いしね」


「そうですね! さて、それじゃどんどん出していってみましょうか」


 そう言いながら、私はアイテムボックスから包みをひとつずつ出して、順番に開いていった。


 2体目、スタンダードタイプの普通のガルルン。これはメルタテオスに置いてきたやつと大体同じかな?

 3体目、片腕を上げているガルルン。少し躍動感があるものの、やはりどこかシュールである。

 4体目、背中を反らせてブリッジをしているガルルン。低い頭身ながら、その頑張りは見る者を勇気付けてくれる。

 5体目、口を大きく開いて威嚇しているガルルン。魔除けに良いかもね。


「――いかがでしょうか」


「動きが加わると、無駄にシュールさが出てきますよね。

 私はスタンダードなやつが今のところ好きです。他のはご神体っぽくないですし」


「さ、最初はご神体にする気なんてありませんでしたからね……」


「もしかして、金属製ならもっとご神体っぽくなるのでしょうか……」


 ルークがぼそっとそんなことを言った。


「――それ、採用!」


「え?」


 うーん、5体目にしようかな?

 一旦アイテムボックスに戻して――れんきんちかーんっ


 バチッ


「「「!?」」」


 いつもの音と共に私の掌に現れる鉄製のガルルン。

 錬金術の置換により、木を鉄に置換したのである。


「ルークの意見を参考に、鉄製にしてみました!」


「おお……。す、凄いね、アイナちゃん……」


「わぁ、なんだか良いですね!

 ――もしかしてもしかして、ダイアモンドのガルルンとかもできちゃうんですか!?」


「あー、多分できるとは思うんですけど――

 ダイアモンドのカットまでは難しいので、ガルルンの形をしたダイアモンド原石ができると思います……」


「はうぅ。輝きが無いのではダイアモンド原石の無駄遣いですね……」


「カットをしない宝石ならできると思うんですけどね。

 ささ、横道に逸れてしまいましたが、続きを見ていきましょう!」


「はーい!」


 6体目、横を向いて寝ているガルルン。机の上に置いておいたら和みそう。

 7体目、ちょこんと座っているガルルン。これは何体か並べたい衝動に駆られる。

 8体目、他の3分の1くらいのサイズのガルルン。それ以外はスタンダードタイプと同じだ。

 9体目、片足立ちで何か頑張ってるガルルン。頑張れ、超頑張れ。

 10体目、頭の上に鳥の巣を乗せているガルルン。……いや、作りが細かいね。特に鳥の巣!


「――いかがでしょうか」


「私、この鳥の巣のやつが好きですね! 可愛い~♪」


 これは単純に可愛いからね。うん、分かる分かる。


「僕はこの小さいやつが好きかな。プレゼントにも良さそうだしね」


 小さいやつは邪魔にどこに置いても邪魔にはならないしね。さりげなくテーブルの上に置いておくにもは良さそうだ。


「…………」


「……で、ルークは?」


「は、はい。そうですね、うーん……。強いて言えば、先ほどの鉄製になったやつでしょうか」


 なんと! 10個もあるというのに、ルークの心を射止めるガルルンがいなかったとは!?

 これはルークの好みを調査して、その内セシリアちゃんと企画会議を開かなければ……!


「ちなみに私は片足立ちしてるやつが好きかな。

 ――さて、それじゃ最後の11体目を出しますよー」


 ドスン。


「うわぁ。アイナさん、大きいですねコレ」


「大きいから最後に取っておきました!」


「あ~。アイナちゃん、これは――……ぶはっ」


「やっぱりコレですか? この前、ジェラードさんが途中まで言い掛けたやつ!」


「そうそう、こんな大きさだったよ! ささ、開けてみてよ!」


「どれどれ……?」


 期待に心を躍らせながら包みを開けると、そこには――


「ぶはっ」

「うへっ」

「こ、これは……」


 ――頭はガルルン、身体は人間の形をしたボディービルダーばりのムキムキ筋肉。しかも2等身。

 しかも他のものより1.5倍くらいの大きさがある。


「あ、あれぇ? こんなの、打ち合わせにあったかなぁ……?」

「アイナさん、これは酷いですね!」

「もしかしたら、作っている最中に何かが降りてきたのかもしれないよ……!」

「いろいろな価値観がありますね……」


 四者四様の反応。

 いや、これは傑作だけど――キワモノ枠にしか入らないね!?

 ご神体とは真逆の位置付けの存在になってしまった。真逆というと邪神? いや、それともまた違うなぁ……。


「……だ、誰か要りますか? このムキムキ」


 しーん。


「――え、えー? ジェラードさん、いかがですか?」


「い、いや……! 見る分には良いけど、僕はいらないよ……!!」


「力説ぅ! アイテムボックスの片隅にでもいかがですか?」


「僕のアイテムボックスはアイナちゃんのより小さいからね!?

 余分なスペースは無いんだよ……!」


 ……あ、そうか。アイテムボックスって、レベルによって大きさが違うんだよね。それじゃ無理を言えないなぁ……。

 仮にルークやエミリアさんにあげたとしても、結局は私のアイテムボックスに戻ってくることになるだろうし。


 あ、いや――


「エミリアさん、大聖堂のお部屋に「結構です!」」


 途中で遮られた!!


「くぅ、それではひとまず私が管理しておきましょう。他のやつも――あ、これだけはルークに渡しておくね」


 私は鉄製のガルルンをルークに渡した。


「え?」


「いや、ほら。ルークがまだガルルンに馴染んでいないから?」


「むむ……。でも失くしてしまいそうですし――」


 もう少し可愛いものなら『私だと思って』とか言えるんだけど、ガルルンはキモカワイイ系だからね……。

 さすがにそれを、そんな風には言いたくないわけで。


 あ、そうだ。もしかしてもう少し実用的なら良いのかな? 今はただの置物だもんね。

 それじゃ一回アイテムボックスに戻して――


「アーティファクトれんきんっ」


 バチッ


「「「え?」」」


「――を、してみました!」


「こ、これにもできちゃうんですか? すごーい」


「ふふふ、それじゃ鑑定といきましょう! かんてーっ」


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 【不思議な置物(S+級)】

 鉄で作られた不思議な置物

 ※錬金効果:幸運の鐘

 ※追加効果:幸運が1.0%増加する

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 ……あ。


 良さげなものが、付いちゃった……?

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