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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
一章 スライムの迷宮生活
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007 ステータス・スキル・レベル



『・種族:スライム Lv5

 ・名称:アズラット

 ・業

    スキル神の寵愛(天使)

    ■■■

 ・スキル 6枠(残3)

  <アナウンス> <ステータス>

  <圧縮lv1>  <>  <>  <> 』



(圧縮……レベル一?)


 ステータスを表示し、そのスキル欄を見て、自分の増えたスキルを確認するアズラット。

 しかし、増えた<圧縮>には他のスキルにはない表示が存在する。


(アノーゼー)

『はい? なんですか?』

『スキルにレベルがついているんだけどどういうことなんだ?』


 <アナウンス>や<ステータス>にはついていないレベルの表示。

 それについてアズラットはアノーゼに質問する。


『スキルにレベルがつくのは当然のことですよ』

『当然なのか?』

『はい。例えば、同じスキルでも何度も使えば熟練してきます。技術は使えば使うほど研鑽されていく。それをレベルで表示していると言うことです』

『……なるほど』


 ステータスの基礎的なレベルは経験値の蓄積だが、スキルレベルはスキルの熟練の度合いを示す。

 だが、そう話を聞くと一つ疑問が浮かぶ。レベル表示があるのは<圧縮>のみであること。

 <アナウンス>や<ステータス>にその表示はない。


『他のスキルにレベル表示がないのは?』

『<アナウンス>や<ステータス>は技能的なスキルではないからですね。両方ともシステム的なスキルと言えるでしょう。神からの連絡を受ける<アナウンス>、世界の仕組みとして自身の能力を表示する<ステータス>。<圧縮>は己の肉体を圧縮し抑え込む技術的なものであり、レベルが低ければ簡単な圧縮しかできず、レベルが高くなればそれこそ巨大な体も小さな体に圧縮できる、そういう技術を高めることで差が生まれるものだからこそレベル表示が成立するのです』


 つまり技能として成立するようなスキルにはレベルが存在するがそうでないものには存在しない。

 逆に言えばレベルの無いスキルはその時点で完成形であり、それ以上がなく、レベルのあるスキルは成長が見込めると言うことだ。


『へえ…………そういうものなのか』

『そういうものなんです。アズさんの持つ<圧縮>は育てれば結構使えますよ? まあ、アズさんの場合体を今の状態に維持するのに必然的に勝手に圧縮のレベルが上昇することになると思いますが……』

『常時発動しているのか?』

『アズさんは現在の体の大きさを維持することを望んでいますよね? その意志がスキルに作用し、常時発動する形をとっているんです』


 スキルによってはスキル使用者の意思を受け、常時自動で発動してくれるスキルもある。

 本当の意味で常時自動で発動するスキルとはまた違い、自由に解除できるし発動していない状態にすることもできる。

 アズラットの場合、その大きくなる体を元々の大きさを維持させるためにそのスキルを発動しているわけである。

 寝ている間に元に戻ったりすると大変である、と言うことから寝ている状態でも発動していなければならない。

 そういったことにより、<圧縮>スキルは常時勝手に発動することになるのである。


『ふうん。そういえば、いつの間にかレベルが五に上がってるな』


 スキルに関してあまり詳しく聞いてもわからないな、と思いつつアズラットは自分のステータスの別の部分を確認する。

 それはアズラット自身のレベルである。以前最後に見た時は二だったが、いつの間にか五に上がっている。


『五、ですか。そうですか……それだけレベルが上がれば穴に引っかかる大きさになってもおかしくはない……のかもしれませんね』

『え? どういうこと?』

『スライムはレベル四から六で分裂します。分裂は繁殖を目的とした行為である……のかもしれませんが、大きくなりすぎたスライムが己を一定の大きさに戻すことを望んで行うのかもしれません。ちなみに分裂するとレベルは半分、つまり二か三になりますね。特殊な理由でもない限りはスライムは増えるために分裂するので一定以上の大きさ、一定以上のレベルを超えません。なのでスライム穴に引っかかったのはその想定以上と言うことなのでしょう』


 つまりスライム穴はスライムの平均的な大きさを基準に設計されていると言うことである。

 迷宮に設置されているシステムであるのにどこか人工的な気配を感じる。


『スライムはレベルが上がると大きさが大きくなる……正確には食べれば食べるほど大きくなりますから、最後の進化まで育つくらいまで食べると、本来ならとてもとても大きなスライムになることになりますね』

『そうなのか……他のスライムは<圧縮>を覚えたりしないのか?』

『アズさんがスキルを獲得するときのことを他のスライムができるなら覚えられますよ? スライムに限らず魔物の知性や知能では、スキルはなかなか覚えることができません。何かの理由でよっぽどそのスキルを欲することでもない限りは。ですからスキルを持つ魔物は珍しく、そして危険です。アズさんも注意して下さいね』

『俺がその魔物なんだけどな……』


 アズラットはアノーゼの言った珍しく危険なな知能を持ったスキルを得た魔物である。

 もっとも、アズラットのスキル自体はそこまで危険でもない。むしろアズラットの知能の方が危険だろう。


『そうえいば、他に何か覚えるべきスキルって言うのはあるのか?』

『アズさん、確かに今のアズさんには獲得できるスキルに余裕があるでしょう』

『……はい』


 突然のアノーゼの真面目な空気を纏った雰囲気の言葉にアズラットも思わずぴんと体を伸ばす。

 スライムなのに体を伸ばすという表現はどこか変だが、とりあえず子供が叱られるときのような感じだ。


『しかし、本来なら今のアズさんが覚えたスキル、<圧縮>でスキルは覚えられなくなります。<アナウンス>や<ステータス>は私が干渉して覚えたので少々例外ですがスライムの得られるスキルで考えるのならば現状では一つが限度。アズさんは私の寵愛のおかげで獲得できるスキルは増えているのですが、だからといって無暗に獲得できるスキルを獲得しようというのは危険です。何故だかわかりますか?』

『…………必要な時に獲得したいスキルを獲得できなくなるから?』

『正解です。幾ら余裕があると言っても、できれば必要な時に必要なスキルを得るようにした方がいいでしょう』

『わかった…………』


 流石に真面目に言われたアノーゼの言葉にアズラットも素直にその内容を受け取るしかなかった。

 もとより、アズラット自身も何かいいスキルでもないかと聞いてみただけで特に何かを必要としていたわけでもない。


『それと』


 さらに、アノーゼは付け加えて言う。


『アズさんでは得られないスキルもあります。種族的に得ることのできないスキルなどもありますから』

『例えばどんなスキルがあるんだ?』

『スライムだと魔法系のスキルはほぼ得られません』

『えっ……マジで?』


 異世界と言うこともあり、記憶はないものの魔法などのスキルは知識として知っており、憧れている部分があった。

 そういうスキルを得ることができるかもしれない、と思うと少しわくわくする感じだったのだが。

 それは得られないとアノーゼにバッサリと斬り捨てられたアズラットは少々ショックを受けた様子で落ち込む。


『基本的に種族の特徴に関わる内容のスキルを得るのが普通です。実際得たスキルは体を縮めるための<圧縮>だったでしょう? これが巨人なら、<縮小>や<小人化>のスキル獲得になるでしょう。スライムは体が不定形だから<圧縮>で小さくなれるのでそのスキルになるわけですね』

『結構細かい設定があるんだな、そう言う所』


 割と色々と細かく決められていることにアズラットも感心するような、面倒くさいような気持ちで感想を漏らす。


『まあ、私なら無理を通せますけどね? アズさんのためならば多少の無理は通して見せますよ?』

『いや……流石にそこまでは頼まないよ』

『そうですか』


 アノーゼは軽く言っているが、実際スキル管理神としてスキルに関する役割を持つ彼女ならば無理を通すことはできるだろう。

 ただし、神格にとって自分の管轄でもあまりに無理なことをすれば、その弊害は大きい。

 流石にアノーゼに無理をさせればその皺寄せが彼女に行くのはわかっている。

 だからアズラットはアノーゼに無理をさせるつもりはない。


『ん、それじゃあ仕事頑張れよ』

『はい。そもそもアズさんと話している間も仕事をしていないわけではないんですけど……』


 その言葉を最後にアナウンスが途切れる。


(さて…………そろそろ外に行くか)


 新たなスキルを得たとはいえ、やることには変わらない。

 いつも通りのスライム生活をアズラットは開始する。

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