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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
二章 魔物と人の二人組
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066 防御力上昇の確認

 かくしてアズラットは<防御>のスキルを得て、ネーデに確認しネーデも<防御>を得た。

 これで安心して九階層を進んでいける…………というわけではない。

 今まででもそうだったがスキルは得たばかりでは大した効果があるわけではない。

 ネーデの<身体強化>もアズラットの<跳躍>も、得た直後はあまり意味がなかった。

 何度も使いそのスキルのレベルを上げることでようやくそれなりの効果を発揮したのである。


『(とりあえずどの程度スキルが有効なのか調べるぞ)』

「えっと、<防御>……だよね?」

『(ああ。九階層のでかい三体を相手する場合の対策で覚えたのはいいがどの程度<防御>が効果を発揮するかはわからないわけだ。そのまま九階層に行って<防御>で防げずにどかんぐちゃりってなるのは嫌だし)』

「…………た、確かに嫌かな。でも、どうやって調べるの?」


 単純にスキルを調べると言っても簡単な話ではない。

 アズラットの<隠蔽>が一例だが、スキルを使ってもそれが効果を発揮しているかわからない場合もある。

 ネーデもいるので<隠蔽>の効果の発揮に関してはわからないわけではないが、それでは<防御>はどうだろう。

 <防御>はその名の通り攻撃を防御するスキル。つまり攻撃を受けなければ判断できない。

 まあ、それはアズラットでもできなくはないのだが……問題があるとすればアズラットの攻撃能力。

 一つは物理的な攻撃手段、<圧縮>を解除しての勢い良く伸びた体での物理攻撃。

 一つは消化能力、スライムのあらゆるすべてを消化できる万能消化能力による消化攻撃。

 前者は攻撃能力としては比較的高い物の、威力が分かりづらく判別しづらい攻撃能力。

 後者は攻撃とはいいづらいものであり作用としては徐々に削るタイプで同じく威力が分かりづらい。

 そもそも二人とも忘れかけているが、ネーデとアズラットの間には契約があって攻撃できない。

 もしくは攻撃してもそれによるダメージを受けないということになるのでそもそも意味がない。

 なのでスキルの検証は別の手段……つまりは魔物からの攻撃を受けて調べることになる。


『(とりあえず……八階層、つまりはここで敵を探さないとな。枝のやつ)』

「ここで?」


 今ネーデとアズラットがいる階層は八階層である。

 彼らは九階層に出ているが、基本的に八階層が拠点である。

 理由としては<隠蔽>で隠れやすく安全な場所を確保しやすいこと、魔物の強さが弱いことがある。

 流石に九階層で安全な場所を探して休むのは難しい。

 なので八階層で休んでいるわけだ。


『(ここで)』

「コボルトじゃだめなの?」

『(コボルトは数の問題があるからな。四体相手に試すのは面倒だし、コボルトの攻撃は剣と槍。<防御>のスキルを抜かれた場合ネーデが怪我をする可能性がある。もちろんあの枝のやつも直撃を受ければ危ないが、<身体強化>を使った状態でしっかりと受けるのであれば、まだ十分今のネーデの肉体でも耐えられると思う。流石に剣とか槍の刃物だとそうはいかないからな)』


 相手に枝男を選ぶ理由はその攻撃手段、および相手の攻撃頻度の問題。

 コボルトの場合四体セットで数を減らしてからになるし、攻撃手段が武器によるものである。

 ゆえにコボルトは調査のための相手に選ばず枝男を選んでいる。

 ちなみにこの階層には虫の魔物もいるが相手としては扱いづらく不適格と判断された。


『(まずはあの枝のやつを探そう。<振動感知>はどのくらい使える?)』

「ちょっと待って…………だめ、あまりそこまで使えないみたい」

『(そうか。もっとスキルのレベルがあがれば天道虫の羽音とかが聞こえてもおかしくないんだが。ま、そういうことならこっちで調べるとしよう)』


 ネーデの<振動感知>はアズラットに言われて幾らか成長させている。

 そのためある程度成長し、広い空間であれば幾らかの範囲まで届き戦闘中も有用に使うことができる。

 しかしアズラット程の極めて高精度広範囲の情報を集められるほどではない。

 そうしてアズラットは枝男を探す。

 一緒に大天道も見つかるわけだが、そちらはアズラットが処理する。


「…………」

「ん! 痛く……ない?」


 枝男と大天道、二種のうち周りに飛んでいる虫を排除し枝男のみにしてネーデはその攻撃を受ける。

 基本的に枝男の攻撃はその腕を叩きつける物理攻撃のみ。香りはネーデの害にならない。

 枝男の防御力が高いくらいで実質的に倒すのに苦戦しない相手、スキルの確認の相手には悪くない。

 さて、そうしてネーデはこの魔物と相対し<防御>のスキルを発動させ攻撃を受ける。

 <防御>のスキル自体は発動している場合、自分自身はそれが発動しているのが理解できる。

 しかしその姿は見た目ではわからない。

 だが攻撃を受けるとはっきりと傍目から見てもスキルの影響が分かる。


(……防壁? 体に沿ってバリアが張っているような感じか。薄皮一枚の)


 アズラットが見ている限りではそう表現できるような状況である。

 枝男の攻撃はネーデの体に当たる直前に何かに阻まれるように止まっている。


『(ネーデ、どう感じた?)』

「えっと、攻撃が当たったんだけど、痛くない。何か、こう、当たったんだけど当たっていないと言うか……」

(感覚的に攻撃を受けた、というのはわかる。痛みも衝撃もない、カットされた? いや、そう考えるのは早いか? 自分でも経験するのが一番だが……俺の場合は衝撃はともかく痛みは感じないんだよな)『(ひとまず何度か受けてみよう。スキルによる防御が抜かれてもこいつ相手なら大丈夫だし)』

「わかった」


 アズラットの提案を受けネーデは枝男の攻撃を受け続ける。

 いくらか攻撃を受け<防御>が抜かれる。

 攻撃はネーデへと当たるが思ったよりも痛打ではなかった。

 そのことをアズラットへと伝えると、今度はスキルを使わない場合で受けた場合を試してみろと言われる。

 流石にまともに受けるのは望むところではないが、実際に<防御>がどの程度効果を発揮するのかは知りたい。

 そういうことであるのでネーデは攻撃を受ける。結構な一撃であったが今のネーデなら肉体で受け止められる。

 もっとも何度も当たりたいものではなく、一度攻撃を受け一撃の威力を調べた後は倒していいと言われたので倒す。


「……痛い」

『(悪い……だが<防御>でどの程度緩和されていたかはわかったと思う。スキルを抜かれた場合と直接受けた場合の差はどんな感じだった?)』

「…………えっと、全然違うかな? <防御>が無くなった時は当たっても痛くはなかったし……でも結構腕に衝撃は来たかな」

『(ふむ……)』


 <防御>は仮にその許容できる量を超えてもそれを超えた時点の一撃は幾ら緩和されると言うことであるようだ。

 しかし当然ながらその後の攻撃は別。

 もっとも<防御>がいくらか攻撃の威力を吸収してくれる事実はありがたい。

 なぜならあの三体の攻撃はどれも強力なものである。

 零か一か、防げるか防げないかだと防げない時点で終わる。

 だが緩和して受けられるなら、生存の可能性も上がる。

 気づかぬうちに近づかれてもまだ生きられるかもしれない。

 もしかしたら突発的に遭遇し襲われる危険性もあるのだから。


(……あとは)『(じゃあ幾らか防御能力はわかったわけだし、持続時間や使用可能の回数、<防御>自体の耐久力なども調べておくか。使ってたらいきなり切れた、攻撃を受けてたらいつの間にか無くなる、弱い攻撃でも石礫を幾らか防いだら消えてしまうとかじゃ危なっかしいし。スキルが切れた後、次に使えるまでどれくらいか、連続使用はできるのかとかも調べたい)』

「うう、多いなあ……アズラットさんじゃだめなの?」

『(一応俺の分も調べる。だがネーデ自身も調べて、ネーデ自身が実感するのが一番だ。数字で分かっても感覚でわからないとネーデ自身使いづらいだろ)』

「……そうなのかなあ?」


 ネーデにそういった実感はない。ネーデ自身不都合を感じていないのでそうなってしまう。

 だがスキルの有用性自体はネーデも感じている。

 アズラットの言う通り、途中でスキルの効果が切れるのは厄介だろう。

 そしてネーデはその具体的数値を実感できない。

 また、仮に数値的にわかってもいつでも数字で把握できるわけではない。

 ゆえに体に叩き込む、感覚に叩き込むのが必須である。

 アズラットはそれを指摘しているわけだ。


『(死んでもいいならやらなくてもいいぞ)』

「う。や、やるよ……もー」


 アズラットの辛辣な言葉、容赦のない言葉にネーデもしぶしぶではあるが感覚的な把握を行う。

 しばらく二人は八階層で枝男を相手にスキルの把握をしながらスキルを鍛える。

 そうしてある程度<防御>のレベル上げと概要を把握したのち、九階層に再挑戦を始める。

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