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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
二章 魔物と人の二人組
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060 迷路の冒険者

 ネーデに影響を与える大樹を危険に思いアズラットは道を戻る。

 <危機感知>があるのになぜネーデは大樹に操られることになったのか?

 これに関しては<危機感知>は直接的な危機を感知する能力だからというのがある。

 五階層でもそうだが、精神的な影響や幻惑などは<危機感知>には引っかからない。

 スキルも万能ではなく、またその範疇に含まれないものもある。

 常々言われていることだが、スキルがあるとしても過信は禁物である。


(……精神影響をカットする手段か。まあ、やっぱりこれもスキルになるのか? 花粉とかなら身体能力の強化……<身体強化>でもカバーできそうな気はする。精神的な影響、幻惑は? 五階層のあの蝶による影響とか。そういった色々なものを考えると、精神的な影響を受けないようにすること……無効耐性とか状態固定のようなスキルを覚えたほうがいいんじゃないだろうか。まあ、今はいいか。多少の影響ならなんとかなると思うし)


 ここまでのネーデが受けた影響は二つ。五階層の蝶と八階層の大樹。

 そもそもそういった精神影響を与えてくるような魔物自体そこまで極端に多くはない。

 スキルの危険はあるかもしれないが人間相手の危険を考慮しても仕方がない。

 まあ、魔物もスキルを使ってくる場合もあるかもしれないし、そもそも今までのがスキルの可能性もある。

 あれこれ考えすぎても仕方がないのでとりあえず現状危急の事態にならない限りは無視するようだ。

 そんな話はさておき。ネーデとアズラットは迷路の道のりを戻り別の道を進む。

 彼らの目的地は迷宮の先。いつの間にか、いやそれとも元々か、迷宮の奥を目指しているわけである。


『(次はあっち)』

「……ねえ、アズラットさん。本当に道合ってるの?」

『(全部が分かるわけじゃないから不安は大きいんだが……一応行き止まりに到達しないルートを進んでいる。だが、確実に奥に進めるかどうかはわからない。ネーデも<振動感知>を持っている以上俺と似たような感じで構造の把握くらいはできると思うが?)』

「うっ……その、そこまで私にはわからなくて……」


 アズラットの持つ種族としてのスキルである振動感知とネーデの持つスキルの<振動感知>は微妙に違う。

 前者はレベルというものが存在しないものであり、最初から極めて高性能。

 後者はレベルというものが存在するうえに本人の情報整理能力も影響する。

 そういうこともあってアズラットが感知できてもネーデは感知できないものが多い。

 まあそもそもアズラットの持つ振動感知に関してはほぼマスクデータなので本人はどういうものかもわからない。

 そもそもスキルも詳しい説明はなく、半ば本能的にスキルの使い方を理解するくらい。

 実にスキルとは不可思議なものであると言えるだろう。


(……ん?)


 道の先は広間となっている。しかし遠目に見ても先の広間に存在していた巨大な樹は見えない。

 しかし、代わりにそこにいる無数の気配をアズラットは感知した。


『(ネーデ。先に進むと少し前に見た大樹のあったような広間みたいな場所に出る)』

「え? またなの……?」

『(まあ、あの大きな樹はこの先にない。見ればわかるが)』

「……うん」

『(代わりに人がいる。それも一人二人じゃなく……多分複数の冒険者グループだと思う)』

「え? そうなんだ……どうしよう……?」


 ネーデは他の冒険者とのやりとりにはなれていない。

 そもそもからして他の冒険者相手の不信感がネーデに根付いている。

 しかもそれが複数のグループでいるとなるとネーデとしては警戒心でいっぱいになる。


『(……別にそこで休むわけじゃない。通り抜けるだけだ。恐らく幾らか道が分かれてると思う。どの道を進むかはこちらで指示を出すから、返事をしないで言われた方に進んでくれ。基本的に他の冒険者といっしょに、というわけにもいかないんだろ?)』

「うん……」

『(じゃあ何か聞かれたりすれば受け答えするくらいで基本的には無視でいいだろう)』

「そうだね」


 そもそも迷宮内の冒険者は他の冒険者に積極的に関わろうとはしない。

 迷宮内は仮に死んでも死体が残らず、魔物が殺したか人間が殺したかもわかりづらい。

 相手がもしかしたら盗賊の類なのではないか、殺人鬼の類なのではないか?

 そういう危険がないとも限らないので基本的に冒険者同士の接触はしないのが一般的な方針である。

 とはいえ、元から仲のいいパーティー同士であったり、一部の信頼のある冒険者であったりは話が違う。

 またネーデのような幼いソロの冒険者となると多少の危険はあっても対処できそうだと近づいてくる者もいるだろう。

 そこで善意で好意的な対応を取るか、悪意を持って敵対的に対応するかはまた別だが。

 まあ、そういった事情もあって基本的に迷宮内では冒険者は他の冒険者と積極的に関わろうとしない。

 なのでネーデの行動もアズラットの指示したような対応で恐らくは大丈夫……だろう。

 ネーデが広間へと到達する。広間はなにやら簡素な休憩所のようなものをそれぞれのパーティーが設置している。

 簡単な寝具に簡単な調理場、彼等はどうやらこの広場で休んでいるようだ。


「おい止まれ」

「……!」


 ネーデに向けて冒険者のうちの一人が声をかけてくる。敵対心……というよりは警戒心の強い声。


「冒険者か?」

「……そう」

「へえ……」


 じろじろと冒険者がネーデの姿を上から下へと見回す。別にいやらしい意味合いではない。

 彼らにとってネーデのような幼い冒険者は珍しい。それも一人で探索しているとなると余計に。

 さらに言えば彼女のような年齢で四階層を突破し八階層まで到達する冒険者となるとそれは稀少……どころか奇異と言ってもいい。

 それゆえにネーデが脅威になるかどうか、本当に冒険者かどうか、実力はいかほどか。そんな視線で見ているのである。


「……通ってもいい?」

「ん? ああ……休みに来たんじゃないのか?」

「そういうわけじゃない。先に進むことを目的としているから通りたいんだけど……」

「そういうことなら別にいい。道はあっちとそっち、あとこっちにあるが……」

「…………」

『(一応あっち……かな? 確実とは言えないが、恐らくは先に進む道だと思う。まあ、間違いなら戻ってくるしかないが)』

「じゃあ、先に行かせてもらいます」

「ああ……」


 どこかつっけんどんな対応をするネーデに冒険者の男も少し戸惑う。

 いくら冒険者同士の接触が積極的に行われれないとしても普通は少しくらい愛想よく対応する。

 いざという時他の冒険者に頼らなければならない時もある。

 そういう時に相手の自分への印象は重要なものだ。


「………………」

(……嫌な視線だな)


 ネーデが広間を進んでいる中、冒険者達の視線がネーデに突き刺さる。

 最初に出会った冒険者の男のようにネーデのことを見定めるかのようなじろじろとした視線。

 それがこの場所にいる冒険者達全員から向けられている。気分の良い物ではない。

 とはいえネーデもずっとその場に滞在するわけではない。広間を抜ければ視線もなくなる。

 アズラットに言われた道に入り、そのまま先に進み、ようやく視線を感じなくなった。


「……ふう」

『(面倒だったな)』

「本当にね……」


 ネーデとしてもやはり他の冒険者相手はまだ慣れない所が大きいようだ。

 すれ違うくらいならばともかく、今回みたいなことになるのはなかなかつらい。


『(まあ、この先が次の階層に通じるならもう通らないだろうし、通るならいないときを見計らってというのもありだろう)』

「うん……」


 先へ先へ、道の先へ。広間を抜けてネーデとアズラットは次の階層に行くため先へと向かう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 延々と同じような話が続くので飽きました。サヨナラ頑張ってください
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