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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
二章 魔物と人の二人組
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057 水流を越えて

『(さて……休息もとったし、川を越えていくわけだが)』

「うう……」


 流石に川の中に身を沈め中州を経由し行くとなるとネーデとしても不安は大きい。

 アズラットとしてもそうであるため、川を渡る提案そのものはするつもりだが少し方向性を変える。


『(流石に水の中を行くのは不安だろ?)』

「うん」

『(だからまあ、そのまま行くのではなく、スキルを覚えていくことを考えたらどうかなと思っている)』

「スキル……」


 新しくスキルを覚える。それ自体はネーデとしては特に問題ではない。

 ただ少し気になるところとしては以前無駄に覚えるのは控えるべき、と言っていたことがある。


「川を渡るためだけに覚えるの?」

『(厳密には川を渡るためだけに使うようなスキルではなく、別の用途にも使えるようなスキルがいいと思ってる。例を挙げるなら氷の魔法で水を凍らせるとか、土の魔法で水をせき止めるか地面を作るかなど。まあ、そこはネーデがやりたいようにやるといいと思う。本来なら魔法とかのスキルよりは身体能力に関するスキルの方がいいんだが……どうするかはネーデが決めるといい。スキル自体は一つ二つ覚えてもまだ余裕はあるはずだ)』

「えっと……」



『ネーデ Lv23

 称号

  契約・アズラット

 スキル

  <剣術>

  <危機感知>

  <身体強化>


 実績

  竜生迷宮三階層突破』



 ネーデが冒険者カードを見ると既にネーデのレベルは二十三。

 少々上昇が早すぎるような気がする。

 これに関しては理由はいくつか考えられる。

 一つはネーデ以外の冒険者、人間が存在しないことで経験値が総取りになること。

 一つはアズラットが倒した魔物の経験値がネーデに回ってくる可能性があること。

 一つは人間自体がレベルが比較的上がりやすいということ。

 考えられることはあるが結局厳密な理由は不明である。

 ただ、ネーデのレベルが二十三であると言う事実に変わりはない。

 そしてレベル二十三ということは覚えられるスキルは七つ。

 それだけの数のスキルを覚えられるのであれば、今覚えている三つに一つ二つ増えてもまだ余裕はある。


『(……それだけのレベルがあれば一つくらいスキルを覚えても問題はないだろう。まあ、川を渡るためだけに覚えると言うのもったいないような気はするけど)』

「そうだね」

(しかし、レベルが上がるのが早いな。まあ損にはならないから良いとは思うが)『(それで、何のスキルを覚える?)』

「…………」


 問題となるのは覚えるスキルである。ネーデの能力として向き不向きは結構あるはずだ。

 少なくとも魔法のスキルに関してはネーデは慣れておらず、まともに使えるとは思っていない。

 そもそも、スキルというものは覚えた時点ではそこまで強力に扱えるものではない。

 完全に別種、今まで使ったことのない物ではなく、今まで使用したものに準ずるものが好ましい。


「(どうしよう……)」


 ネーデは考える。今までネーデはアズラットに頼るところが強かった。

 そこでいきなり自分だけで考えて行動しろと言われても困る話である。

 たとえこの先アズラットがいなくなる可能性があるのかもしれないとしても。

 そもそもネーデはアズラットがいなくなると言うことを考慮していない可能性もある。

 他に頼るものがなく、それゆえに頼らざるを得ず、そのまま手放せないものとなってしまって。

 まあ、今はそこまで考える必要もないだろう。問題となるのは何のスキルを覚えるか。


「……………………」


 ネーデはアズラットに視線を向ける。休憩中だったと言うこともあって頭の上から降りている。


「(覚えるべきスキル……アズラットさんみたいに?)」


 ネーデとして色々と参考になるのはアズラットの存在だ。

 アズラットも別に無敵の強力無比な存在であるわけではないが、これまで見せてきた実力をネーデは知っている。

 アズラットの覚えているスキルは戦闘向けではなくアズラットが上手く行動できるようにするためのスキル。

 しかし、その中の一つはかなり使い勝手の良いスキルであるだろう。


「………………」


 思い描いたスキルを一つ、そのスキルを得られるように思考し、そのスキルを得る。

 しかしネーデはなにかそれだけでは物足りないような感じがしている。

 得られる最大のスキルは七つ。現在得ているスキルは四つ。三つも覚えられるスキルに空きがある。

 もう一つくらい覚えてもいいのでは? 覚えても前の時のようにいざという時用の空きがある。

 ならば何か、これからの役に立ちそうなスキルを……そうネーデは考える。


「………………」


 そうして、ネーデはまたスキルを得ることを思考する。

 今のネーデにとって最大最強の存在、アズラットの持ち得るスキルを。


『(……覚えたか?)』

「……うん、覚えたよ!」


 そう言ってネーデは冒険者カードを確認し、アズラットに見せた。



『ネーデ Lv23

 称号

  契約・アズラット

 スキル

  <剣術>

  <危機感知>

  <身体強化>

  <跳躍>

  <振動感知>


 実績

  竜生迷宮三階層突破』


『(…………いや、ちょっと、え、あー……)』

「……ダメだった?」

『(そういうわけじゃない。いや、ネーデがいいならいいんだ。ただ、後悔はするなよ?)』

「しないよ」



 ネーデが新しく覚えたスキルは<跳躍>と<振動感知>。

 前者はアズラットの覚えたスキルであり、後者はアズラットが種族として有するスキル。

 どちらも特定の状況でしか使用できないということのない、それなりの利便性があるスキル。

 特に<振動感知>は<危機感知>と合わせて敵の行動を探知するのに有用なスキルである。

 <跳躍>は目立った特性はないものの、回避から移動、攻撃にと多岐にわたって利用できるものである。


『(じゃあスキルも覚えたことだし、先に進もう。っと、その前に幾らかスキルを鍛えたほうがいいな。その場で何度か跳躍してスキルを鍛えるといい)』

「え? スキルってそうやって鍛えるの?」

『(基本的にはスキルは使えば使うほど強くなるぞ)』


 ネーデの持つ冒険者カードではわからないが、スキルにはレベルが存在する。

 そしてそのレベルはスキルを使えば使うほど上昇する。

 なので鍛えるにはスキルを使う事が必要である。


「じゃ、じゃあ、少しだけ……」


 ネーデとしてはその場で飛び跳ねるのを繰り返すと言うのは少々恥ずかしい。

 しかし、それがスキルを使う上で有効な方法であるというのならばやらないわけにもいかない。

 そうしてネーデは少し飛び跳ねて<跳躍>のスキルを鍛えた。

 少しスキルを鍛えた後、手前に戻り中州へと<跳躍>で移る。

 ちょっと鍛えたくらいで飛び移れるほど甘くはないが、<身体強化>を使っている状態ならば話は違う。

 高くなった<身体能力>とそれに合わせた<跳躍>。

 スキルの融合というわけではないが同時に併用するとまた効果は高くなる。

 中州に渡り、その中州を経由地として向こう岸へ。


「ふう……」

『(特に何も出てこないか。まあ、出てこられるよりはいいんだが)』

「そうだね」


 そのまま二人は道なりに進む。敵自体の出現頻度はこれまでと変わりがない。

 しかし、<振動感知>を得たこともありその出現もすぐに把握できる。


「っ……」

『(……大丈夫か?)』

「う、うん……ちょっとスキルに慣れていないだけだから」


 とはいえ、<振動感知>は少々情報量が多い。

 スキル側でいくらか処理はしてくれるのだがスキルから送られてくる情報の整理はなかなか厳しいものがある。

 ネーデはまだ幼く、その能力ではまだまだ完璧に全てを把握できるわけではない。

 スキルも覚えたばかりでまだまだ成長の余地がある。これから先に期待するところだろう。


「…………あ。次の階層かな?」

『(恐らくはな……なんだ? んー…………迷路? 一階層から三階層に構造が近い……ような、近くないような)』

「なにそれ?」


 アズラットの持つ種族としての性質の振動感知。それで把握できる先の構造。

 少し遠めだが、階層の境界の先に存在する入り口付近くらいは感じ取ることができる。

 そうしてでてきたアズラットの感想がこれである。

 何が何だかよくわからない所ではあるが、行ってみればわかることだろう。

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