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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
二章 魔物と人の二人組
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046 ネーデの強化

 アノーゼに相談し、ネーデを休ませた翌日。アズラットはネーデに話しかける。


『(ネーデ。少しいいか?)』

「はい……なに、アズラットさん?」


 少し硬めのアズラットの念話に少し緊張した感じでネーデはアズラットに応える。


『(戦ってわかってると思うが、ネーデは弱い)』

「っ…………はい」


 アズラットの言葉に身を硬直させるネーデ。理解しているがはっきりと言われるとつらい。

 そして、それをアズラットの方から言ってくるとなるとネーデとしても怖い。

 ここまで一緒にいてくれて助けてくれて育ててくれる、そんな相手がそういうことを言ってくる。

 もしかしたら捨てられるのではないか、ここで置いていかれるのではないか。

 そういう心配をする。ネーデにとってアズラットしか頼る相手はいない。

 信用、信頼はまだどうしても相手が魔物であると言う点から難しいが自分を助けてくれた事実がある。

 それゆえに頼れる相手として頼っている。いや、頼るしかない状況である。


「……弱いから、もう一緒に行ったらダメですか?」

『(いや、そういう意味合いで言ってるわけじゃない。ただ、ネーデの戦闘能力は低い。三階層ではもうそれなりに戦えるが四階層ではまだどうにもならないくらいの強さである、それを自覚して欲しいってことだ)』

「それ、初めからわかってたことだと思うけど……」

『(……まあ、四階層に戻ると言い出したのはこっちだからな。だけどやっぱり四階層に戻るのは休む場所の確保という意味合いもあって必要だった。三階層で休むことはできたか? 俺がいるとはいえ、迷宮で一人で休むことができるか?)』

「…………無理」


 ネーデは今までは日帰りで迷宮の外に戻っていた。それゆえに迷宮で休む必要はなかった。

 迷宮の外は宿屋とまではいかないが、仮設の休憩所のようなものが存在する。

 全ての冒険者を泊められると言うわけではないがそこで休むこともできるし、最悪周辺で野宿をしてもいい。

 しかしこれからはアズラットを頼りに迷宮の四階層での生活となる。

 そしてその更に奥まで進むことすらも考慮する状態である。

 アズラットに頼らず自分のみで迷宮攻略に臨んでもいいがそれでは強くなるのは難しい。

 冒険者として仲間も作れない頼る相手もいないネーデはアズラットのようなな存在に頼らざるを得ない状態である。


『(一応俺がずっと見守って守る、ということもできなくはないが……それじゃあネーデの強さにはならないだろう? ずっと俺が側にいればいいっていうのならばそれでもいいかもしれないが、そういうわけにもいかないはずだ)』

「はい」

『(だからネーデを鍛える……とはいっても、普通に鍛えるとすぐに強くなれるってことはない。まあ、レベルが上がったりスキルが強くなれば相応に強くなるけどな? だが、今のネーデではあまり強さがない。確かスキルは<剣術>と<危機感知>だったよな?)』

「えっと…………うん、その二つ」


 冒険者カードを取り出しネーデは自分のスキルを確認する。

 そのカードに表示されていたスキルは確かにその二つだった。


『(スキルは単純にその技術を得られるものだ。<剣術>ならその名の通り剣の扱い方、剣を使った技術の力。<危機感知>なら自分を襲う危険、危機の感知。俺も<圧縮>で体を縮める力、物を縮める力がある。他にも<跳躍>で高く跳んだり、<隠蔽>で他者から見えないようにしたりとかな)』

「あれ!? アズラットさん? どこ行ったの?」

『(目の前にいるぞ。同じ場所だ)』

「あっ、見えた」


 <隠蔽>のスキルでネーデから姿を隠したようだ。

 見つからない、意識されない限りはネーデには見つからないようである。


『(スキルはすぐに覚えることができる。そして、即席の力になる。例えば魔法のスキルなんかを覚えれば魔法を使えるようになり遠距離攻撃をできる。<危機感知>みたいに感知系のスキルを得れば色々と気配や攻撃、動きの感知ができるようになったりとかな?)』

「それ、凄いね。ならスキルを覚えたほうがいいの?」

『(まあ、俺が今回ネーデに提案するのはそういうこと、スキルを新たに覚えることだ)』

「なら覚え」

『(話は最後まで聞け)』

「あ……はい」


 自分が強くなるための手段を得ることができる、とアズラットの提案に乗り気なネーデ。

 しかし、アズラットはそんなネーデを止める。


『(確かにスキルを覚えるのは強くなるのに手っ取り早いものだ。そしてネーデは今のところ全部で五つのスキルを覚えられる。既に二つ覚えているから後三つを覚えられるわけだ。だが、スキルは一生物だ。覚えたら一生忘れることなく自分の物となり続ける。つまり一度覚えたら別のスキルを覚えたくなっても取り返しがつかないということだ)』

「……そうなの?」

『(スキルの枠があれば覚えられるが、スキルの枠がなければ覚えられない。スキルの枠は生まれつきとレベルで決まるらしい。人間であるネーデは最初に三枠、レベルが五、十、十五と五の倍数ごとに一枠増える)』

「……?」

『(……レベルが高くなれば高くなるほどスキルを覚えられる。まあ、今新しく覚えられるのは三つということだ。レベル十五になれば一つ増える、二十になれば更にもう一つ増える。だが、数には限度がある。ネーデがどこまでレベルを上げるつもりか知らないが、仮に四十レベルまで上げるなら覚えられるスキルは全部で十一しか覚えられないわけだ。だからこそ、覚えるスキルは慎重になるべきである)』

「…………よくわからない」


 ネーデはあまり頭のいい方ではない。

 これは生まれつき頭のいい悪いではなく教育の問題だろう。

 彼女の生まれはアズラットは詳しく知らないが、この幼い年齢で一人で冒険者をしなければならないあたり大変なものであるのだろう。

 まあ、そういう事情はさておき彼女はあまり頭が良くないのでアズラットの言っていることがわからない。


『(ネーデがこれから何をしたいのか、どうなりたいのか、自分に何が向いているのか何が得意なのか何ができるのか。そしてどうしたいかを突き詰めたスキルを覚えるのがいい。前にも魔法使いのスキル構成で教えたような気もするが、特化させるのが強い)』

「……私の場合、どうすればいいの?」

『(それはわからない。ただ、今のところネーデは剣を使った近接戦闘が主だから身体能力を向上させるのが一番いい。だから<身体強化>を覚えてほしいと考えている)』

「わかった、覚えるね」

『(ちょっ、だから話は最後まで聞けってー!)』


 時すでに遅し。アズラットの言った通り、ネーデは<身体強化>を覚えてしまった。


「……覚えたみたい」

『(……はあ。覚えたら取り返しがつかないんだって言ったのに)』

「でも、必要なんでしょ?」

『(まあ、覚えてもらうつもりではあったけどな)』

「他に何か必要?」

『(いや……今はまだスキルを覚えるのは控えてほしい)』

「……なんで?」 


 強くなるために色々とやるのはいいことなのではないか? そうネーデは考えている。


『(今スキルを突き詰めて覚えると、これから先詰まった時に困るからだ)』

「……?」

『(例えば剣を突き詰めて物理攻撃最強になった。だけど、剣の攻撃が通用しない相手が出てきたらどうする?)』

「困る、かな?」

『(倒せないからな。そういう時、スキルが全部埋まっているとどうしようもない。だがスキルの枠があれば必要なスキルを覚えられるかもしれない。だから覚えすぎず、少ないスキルをうまく活用して強くなるのがいいわけだ)』

「ふえー…………私そういうの苦手だと思うけど」

『(まあ、こっちから無理に覚えさせる、覚えろとは言わない。一応こういうスキルを覚えるのがいい、こういうスキルがあるがどう思うとか訊ねてそれでそちらに判断を任せるつもりだ。ネーデが強くなるのはこちらにとってもいい話だからな)』

「うん……お願いします」


 ネーデとしてもスキルに関しての話、そういった詳しい事情に関しては何もわからない。

 彼女に教えるような存在も、頼れるような存在もいない。彼女は一人でやらざるを得なかった。

 そこにアズラット、ひいてはその裏にいるアノーゼという教師が出来た。

 それゆえに彼女はスキルを得て新しい強さを得られる。そうして四階層を攻略していくのである。

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