表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
七章 スライムの神成活
348/356

315 懐かしい戦い方

「…………本当にアズラット? うん、確かになんとなくそんな感じはする。でも、アズラットはスライムだよね?」


 今のアズラットの姿を見てネーデが疑問に思うのはその点である。

 アズラットが<人化>を得て人の姿をとっていることをネーデは知らない。


「あー、確かに今の姿だと……」『(っと、これでいいか?)』

「っ!」


 アズラットがスライムの姿に戻る。その姿を見て、ネーデはようやく確信を得る。


「アズラット!!! やっと、やっと会えた! 探したよ!」

『(い、いや、ちょっと待て!? っていうかそもそもネーデはなんでここに!? そもそもネーデって人間だから流石に今まで生きていたなんてことは……)』

「私はずっと迷宮の合った場所にいたから。そこで眠っていたの。確か……アノーゼとかいう神様と話して」

『(まーたあいつかー……いや、まあ、世話にはなってるんだけど……クルシェもそうだけど、色々と動きが怪しいよなあ……今更か。前からだし)』


 この時代にまで残っていたネーデ、その事情に関わる内容に出てくる今までいろいろと関係のあった神の名前。

 クルシェに伝言を残している点に関してもあれだが、ネーデにまで関わってくるとなると正直アズラットとしてはいろいろな意味で怖い。

 懐疑的というか、謎が多すぎて怪しいと言うか怖いと言うか。

 以前から普通に何か裏でやっているみたいな雰囲気はあった。

 しかし、人を一人……それもアズラットに関わる人間を一人この世界に残すとなると怪しい以上に疑問、謎が大きすぎる。


『(一体何が……)』

「私はアズラットのパートナー。迷宮でずっと一緒で、私に力が足りないから私はアズラットと別れた。そこから鍛えて、力を得た。竜生迷宮にいた迷宮主を倒すくらいまで」

『(……竜生迷宮を攻略したのか)』

「うん。で、そこまでいって<神格者>? とかを得て、アノーゼとかいう神と話して……今、アズラットはいないって言われた。迷宮を作るために眠っているって。それだとアズラットに会えない。それじゃあ意味がないから」

『(……………………それで、どうやって?)』

「わからないけど、アノーゼの指示を聞いて。それで今まで、アズラットが起きるまで眠ってた。アズラットが起きた時に私も起きて、いた場所から出て、アズラットを探してたの。あちこち探したけど見つからなかったけど、ここまで来てようやくアズラットの気配を見つけてここまで追ってきたの」

『(あれはもしかしてネーデが出てきた跡だったのか……? っていうか気配とかでよく追ってこれたなあ……)』


 色々な意味で規格外というか常識外というか、奇抜な人生を送っているネーデである。

 ネーデが鍛えたのはアズラットのため。

 彼女は一緒に迷宮を攻略していたアズラットをパートナーとして慕っている。

 自分はアズラットに鍛えられ、教えられ、その力はアズラットと共に戦うために振るうものであると考えていた。

 しかし、それは叶わず。

 竜生迷宮でアズラットに守られる立場であると自覚し、彼女は己の実力を高めるために鍛える道を選ぶ。

 その結果アズラットと別れ、アズラットに匹敵するだろうくらいの力を得て竜生迷宮の攻略にてそれを確認した。

 そうしてようやくアズラットの下に、と思ったところでアズラットはその時迷宮を作るための眠りについていた。

 それゆえにネーデはアノーゼの提案を受け入れ、この時代まで眠りについたのである。

 アズラットが目を覚ますその時まで。

 ただ、その跡の行動がアノーゼですら驚くような突飛な行動ばかりしているせいで後を追えず、伝言の類もろくに届かない。

 ネーデはあきらめクルシェに伝言を、ということになったのが今回の流れの発端である。

 まあどちらにしてもクルシェとの合流は行われたと思われる。


「……主様、その人は?」

『(ネーデ。俺がスライムとして生まれた迷宮で一緒に攻略をしていた子だよ……まあ、もう子って言うほどの年齢じゃないか)』


 かつての幼さは失われ、相応に成長したネーデ。

 大人と言ってもいいが、年齢はそこまでではないだろう。まだ若い。


「……強いですね」

「もちろん。私はアズラットと一緒に戦うために鍛えたから……あなたも結構強いね」

「あなたよりは格下です……少し悔しいですね。レベルだけで見れば確実に負けていると言えます」


 ヴァンパイアは種族の強さゆえに、レベルが上がりにくい、必要経験値が多いと言う特徴がある。

 その分レベルが上がらずとも種族的な強さが破格であり年齢による弱体化もほとんどない。

 その代わり日光に弱いなどの特徴もあるし、色々な部分でそういった強さとその代償が釣り合っているのだろう。

 ネーデとクルシェでは確かに強さ的にはネーデの方が強い。

 これはあくまで総合的に見ての話になるが。

 単純に肉体的強さでいえばクルシェの方が強い。

 年数的な経験もまたクルシェの方が上だ。

 しかし、ネーデはスキルの強力さ、多様性、そして格上との戦闘経験の多さなどの特徴がある。

 またクルシェとは違い本当に戦闘に一心に打ち込んでいたというのもある。

 そこでも幾分かの差があるだろう。


『ねえ……強いとか弱いとか言ってる場合、かなあ? まだあの大きな虫、生きてるんじゃないの?』

『っ……そういえばそうか』『(ネーデ! あの迷宮主だろう虫の魔物は倒したか!?)』

「あんまり手ごたえはなかった。さっきので吹き飛びはしたけど倒せてはないよ?」

「わー! 強い! 強いよね!? 戦いたいなー!」

『(アクリエル、ちょっとお口閉じて)』

「むー……わかったー」


 この場には五人……四人の人物がいる。

 クルシェ、アクリエル、ネーデ、アズラット。

 シエラは会話に参加できないので数えない。

 四人で色々話し合う、と言っても現状アクリエルの自由奔放さの問題、それ以外にも各々の情報の統合、そして今もまだ生きている巨大魔虫がいる。

 話を進めるにしてもまず状況を整える必要がある、そう考えられる状態だ。


『(とりあえず、先にあの邪魔者を倒してからだ)』

「あの魔物? うん、確かに強くはあるし放置はできないかも。でも、私やアズラットならそこまで難しくないよね?」

『(……あんまり有効打はないんだけど?)』

「……? でもあれ、多分ヒュドラよりは強いけどあの竜王よりは弱いよ? アズラットなら勝てると思うけど……」

『(持ってる武器が通用しないんだが?)』

「え? なんでアズラット武器なんて使ってるの?」

『(え?)』

「いつも、そのスライムの体で倒してたよね?」

『(………………あー)』


 アズラットが今のスライムの姿に戻るというのはかなり久々になる。

 厳密にはスライムの体には必要に応じて戻ってはいた。

 しかし、アズラットはどちらかというと<人化>で人の姿をとっていることが多かった。

 これに関して言えば、日常的に過ごす場所が人間の街であったり、クルシェやアクリエルという存在が近くにいたからだろう。

 人と話す場合は人の姿をとっているほうが会話しやすいし、道具を使うにも移動を行うにも人間の手足があったほうが便利だ。

 スライムの体で移動できないわけではないがいちいちスキルを使っての移動は本人も面倒である。

 そういうこともあって今までは人の姿をとっていた。

 本来のアズラットの戦い方はスライムの姿でのものだ。

 決して人間の姿であるときの戦い方が弱いというわけではない。

 ただ、強くもないというのも事実である。

 今までは大した強さではない相手が多く、多少強くてもどうにかなる相手ばかりだったため問題にはならなかった。

 しかしここで迷宮主級の強さの魔物を相手にし、その強さではどうしても足りない状況になった。

 おそらく戦い方の問題は強さの問題だけではなく相性もあるだろう。

 <人化>した状態の方が安定、安全性は高い。

 スライムの体で戦う場その体の小ささの問題、<圧縮>を解除した場合の安全の問題が出てくる。

 核を破壊されればアズラットは死に至る、そんな生物的特徴を持つゆえに安全性の高い<人化>した状態を無意識に使っていたというのもあるかもしれない。

 だがここでネーデに過去のアズラットの戦い方を指摘される。

 仮に、今のアズラットが竜王に勝てるとして。

 <人化>した状態では竜王に勝てるだろうか?

 残念ながらスライムの状態で勝てるとしても<人化>した状態では勝てない。

 魔剣を持っていれば話は違ってくるかもしれないが、<人化>した状態はそこまでの強さがない。

 故に勝てないのである。


『(まさか……こっちで戦う方が強いのか、俺。ああ、多分慣れとかの問題もあるか? スキルの適用とか……)』

「主様、ともかくあれを倒すのが先決かと」

「私も一緒に戦うよ。前よりも強くなったから、見てほしいかな」

「やるのー? やるのー!? やるよー!!」

『(……全員乗り気か。ま、そういうことなら……やってみようか、スライムの姿で)』


 吹き飛んだ巨大魔虫も体を起こし、体制を戻し、己を害した者たちへと怒りの視線を向けている。

 そんな巨大魔虫へ向けて、この場にいる四人が戦いを再開した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ