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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
七章 スライムの神成活
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295 道行の話し合い

「話し終わったー?」

「ん? 終わってはないけど……ああ、一応アクリエルとも相談したほうがいいのか……っていうか、アクリエルはどこまでついてくるつもりだ?」

「んー? よくわかんないけど、一緒に行けば強いのと戦えるんでしょ? ならどこまでもついていくけどー」

「どうしてそういう話に……」


 アクリエルの興味に関しては戦闘の方面、戦うことに関してのみ……ではないが、そちらに強く傾いている。

 アズラットについてきている理由、切っ掛けに関してはアクリエルとその家系の問題、都合が根本だ。

 しかし、今のアクリエルにとってはアズラットと一緒の方が海の中で戦うよりも楽しめる、という感じである。

 ゆえに彼女はアズラットについていくこと自体は問題を感じていない。

 逆にアズラットの方が彼女の取り扱いに苦労することだろう。いろいろな意味で扱い難い。


「いいじゃないですか。主様に付き従う存在が多いのは良いことです」

「……そういう存在じゃないと思うんだけど」

「わかってます。アクリエル!」

「…………っ」

「どちらが強者かわかりますね? 実力で思い知らせてもいいですが、お互い傷つくのは得策じゃありません。戦うのは構いませんが、存分にお互い力を振るえ、後に響かない状況、舞台でするべきでしょう。まあ、それは置いておきます。あなたは私に従いなさい。わかりますね?」

「……はい」


 しゅん、と気落ちしながらアクリエルが答える。完全に気迫の時点で負けている。

 上位者が下位者に命令をし、過度な勝手な行動を許さない。

 クルシェがしたのはそういうことになる。


「えっと……」

「主様は優しいですので、あなたのことを気にしてくださるでしょう。ですが……それに甘えることは許しません。あなたの好きな戦いをするにしても、勝手に自分の好きなように突っ込まないこと。私か主様が許した場合はその限りではありません」

「……はい」

「とりあえずそういうことになりましたので」

「…………俺、いるのかなあ?」

『アズラットがいるからまとまってるんだよ?』

『……そんなものか』

『私もアズラットに憑いていくからね?』

『ああ。まあ、シエラは本当についてくるだけだけど』

『むー……』


 アクリエル、クルシェと違いシエラの場合は本当にアズラットについて来るだけになる。

 そもそも彼女はアズラットの持つ指輪に憑いている存在であるため物理的な干渉が基本的にできない。

 指輪が飛んでくる際や、指輪を元の位置に戻す際など、指輪自身の関係で動かすことはなかったわけではない。

 しかし、今アズラットの手元にある以上指輪はこれ以上の動きを必要としない。

 ゆえに彼女は指輪を動かすこともできず、何らかの力を発揮することもできない。

 かつて彼女自身が持っていた<従魔>などのスキルも基本的には使えない、本当にただ傍にいるだけの幽霊のようなものだ。

 まあ姿を変えることくらいはできるがそれが何か影響するようなことはないのでまり意味はない。


「神山へ行くのにクルシェとアクリエル、シエラがついてくる。まあシエラは見えないから省いても問題ないとして、同行者はそんな感じか」

「そこの彼女は何かできるのですか?」

「多分何もできない。まあ、基本的にはいない者として扱ってもらうといいと思う」

『うう……何もできないのは事実だけど、その扱いはひどいよー?』

「そうですか……少し不憫ですが、何もできないのであればしかたありませんね」

「それで、同行者は決まってるけど……神山への移動はどうする?」

「もちろん海を渡り向こうの大陸へ行くしかありません。そこからは陸路ですね。当然通常の登山道を進む方向で行くしかありません」

「………………まあ、やっぱり裏から登ったりはできないから」

「主様はそれでいいかもしれませんが、それでは私たちがついていけません……主様はそれでも自分だけで登りますか?」

「そのつもりはないけど……でも、クルシェは蝙蝠を従えているんだろう? それなら飛行手段として使えたりはしないか?」


 蝙蝠による移動。一匹二匹ではまず不可能だが、大集団となる蝙蝠ならばどうか。

 アズラットはそう提案する。しかしクルシェはそれに首を振る。


「流石に無理です。使い魔として力を与えている蝙蝠でも、それほど元の蝙蝠よりも大幅に変化して強くなることはありません。統率者としての役目を持たせ、多くの蝙蝠を従えるにしても、その全てを完全に支配しきるわけではありません。忌避、苦痛、消耗、そういった負荷がかかると統率できなくなります。移動手段としては、一時的ならばある程度はできますが、それでも山を登るのはつらいでしょう」

「……そんなものか」


 使い魔と言っても大量の蝙蝠を全て使い魔にすることはできず、クルシェが従えられる数はそこまで多くない。

 従えている使い魔の蝙蝠が多くの蝙蝠を統率することで蝙蝠の群れを操ることはできるが、蝙蝠自身に悪影響がある行動はとらせにくい。

 怪我をする、大幅に疲労する、蝙蝠が嫌うことをさせる、あるいは何らかの衝撃的な事象により統率の影響は途切れてしまう。

 人を運ぶにしても蝙蝠側への負担がそれなりに大きく、ある一定の距離を運ぶくらいなら可能だが上層へと持ち上げるのはとても厳しい。

 また、海を渡るのもまず不可能。休みなしで海上を渡りきれるほど蝙蝠は便利ではない。

 そもそも運ぶ際に蝙蝠の乗る、というのはまず厳しい。服などを噛んで掴んでもらうなど、元々負担の大きいやり方でなければできないだろう。

 ゆえに蝙蝠に運んでもらうということはかなり無茶のある夢物語に近い。

 形態や限度さえ考えれば不可能ではないが。


「っていうか、クルシェは海は……大丈夫か」

「今は日光が大丈夫ですからね。流石に日の光がダメだったなら無茶なやり方になりますが……」

「海行くのー? なら泳ぐよー?」

「……アクリエルは海に入ってついてきてもらうか?」

「やめておいた方がいいと思います。いつの間にかどこかに行っていそうですよ?」

「…………確かにあり得そうだ。というわけでアクリエルも船に一緒に乗るんだぞ?」

「えー…………んー、わかった」


 元々人魚として海に生きるアクリエルとしては海を渡るのならば海を進みたい。

 そうしたいという理由の一環にはあまり満足できていない戦いへの充実を満たしたい、という想いがないでもない。

 まあ、彼女の場合海であってもそこまで彼女戦える敵はいない。

 なのであまり変わらないと言えば変わらない。

 そしてそうやって海に彼女が戻った場合、彼女はアズラットのこととか気にせずに好き勝手して戻ってこれなくなる可能性が高い。

 アズラットも、クルシェも、渋々ながらも船に乗ることを納得したアクリエルもその想定ができているのだからおかしな話である。

 むしろわかっているならば自分で改善すればいいのだが、アクリエルは性格的にそれができない。どうしようもない話である。


「とりあえず……アルガンドを出て船のつく都市に行くのか。あれ? そういえば……行っても大丈夫かな?」

「何か問題がありましたか?」

「いや、俺船に乗って途中までこっちに向かってきてたんだけど……シーサーペントに襲われて、その対処の時に海に落ちたんだ。恐らくそれで死んだと思われているんだが……行って見つかっても大丈夫かな?」

「…………それはちょっと不安ですね。でも、それなら仮面か兜でもつけて顔を隠せばいいと思います。それくらいなら特に主様には問題ありませんよね?」

「……そうだな、そういう感じにするか」


 港でもしかしたら一緒に船に乗っていた相手に見つかるかも。

 その場合どうして生きているのかを疑問に思われる可能性が高い。

 と、そんなことを考えたのだが対処手段が簡単なので特にこれと言って問題はなさそうであった。

 兜などをつけたところでアズラットは視力だけで物を感知しているのではないので完全に隠したところで問題はない。

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