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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
七章 スライムの神成活
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294 神託の伝言

「<アナウンス>が使えなくなってるから直接連絡はできないってことか……でも、<神託>? それで連絡はクルシェとは取れているわけだし……」

「<神託>はスキルです。それに、主様はいろいろな条件が重なっていて<神託>を付与することはできないと……」

「スキルか……まあ、確かに空きはないしなあ……」


 アノーゼがアズラットに直接話すことができない要因は<アナウンス>が使えないことが理由だ。

 それ以外の手段ではなそうにも<神託>などの話すスキルを付与できない。

 そもそも、神は本来世界に関わることはできず、アズラットのような個人相手でも過度な干渉は禁止されている。

 アズラットの場合いろいろな特殊性、特別性があるゆえにアノーゼは<アナウンス>という形で好き勝手できた。

 それにアノーゼはアズラットに関する様々な要素に関わることができるというのもあった。

 だからこそできたわけであるが……本来は<神託>ですら限定的なものでなければならない。


「っていうか、今は会話できないの?」

「<神託>のスキルはこちらから使うことはできず、神からの言葉を受け取ることしかできないそうです。それにアノーゼ様は神であるゆえに、あまりにこちらの世界に干渉することは許されておらず、そもそもいろいろと仕事も忙しいらしく、こちらに言葉を届けることはできないと」

「……忙しい、ねえ」


 普段思いっきり会話していたアズラットには少しそれは本当かと思うような内容である。

 しかし、実際アノーゼが忙しいのは間違いない。

 仕事自体はアズラットと会話しているときもあった。

 そもそも神としてスキルの管理を行う彼女は相応に仕事が忙しい。


「主様の場合、その生まれが特殊である、と……」

「……ふむ。まあ、確かにな」

「あと、主様は特殊な業を持つゆえに干渉が許容されていると……」

「あの黒塗りにされていた<神格者>か……迷宮主になって表に出てきたけど、あれは前から意味があったのか」

「その他、色々と主様には会話が許される条件が整っていたので会話で来ていた、そうです……私の場合、<神託>のスキルを通してですから、こちらからまともに対話するのは厳しいですし、こちらからの連絡は不可能、情報の伝達もかなり制限が多く……」

「よくわからないけど、俺とは気軽に話せたけどクルシェだとそうではない、ということか……」


 <神格者>であり、<アナウンス>という特殊なスキルがあったからこそ、アノーゼとはあれだけ簡単に会話ができた。

 同じように<神格者>であればまだ<神託>でもある程度の対話はできたかもしれない。

 そもそも<アナウンス>自体アズラットが得ようとして得たスキルではない。

 そのあたりは付与される<神託>に近いだろう。

 これもまたアズラットが特殊故か、あるいはアノーゼが思いっきり話し合いたいからそれを付与したのか。


「……まあ、そのあたりの話は何でもいいや。今更だし」

「……神様のことなんですけど」

「半ばストーカーだしなあ……それで、伝言、だっけ? それがあるんじゃないのか?」

「あ、はい。主様に伝えてほしいこと……というか、導きとして必要なこと、だそうです」

「導きか……まあ、どうすればいいかなと考えて知り合いで生きていそうなクルシェを探していたわけだけど大当たりだったか」


 アズラットがクルシェを探していたのは唯一自分が知っている存在で生きていそうだったから。

 そういうことでクルシェを探していたわけだが……もしかしたらこの伝言の件もあっての流れだったのかもしれない。

 迷宮を作る際、迷宮主として生まれる際、全く干渉がなかったとは限らない。

 そのあたりアノーゼは神であるので必要なら幾らかの干渉、条件付けなどはできただろう。

 まあ、わからないことを考えたところで仕方がない。話は伝言の内容に関してに戻る。


「伝言ですが……内容自体は簡単で、神山へと向かいなさい、ということです」

「……神山か。理由は?」

「理由については語られませんでした……」

「…………行けばわかるってことかな」


 アノーゼからクルシェに伝えられたアズラットへの伝言は神山へ行け、という内容だった。

 その理由は詳しく語られていない……というか、全くクルシェには伝わっていない。


「教えてくれなかったのか」

「……………………」

「クルシェ?」

「いえ、実は、主様についてのいろいろを伝えられていたからでしょうか、ぷつっと何か切れるような感じに<神託>が終わって……」

「ちょっと!?」


 実際にはそこまで酷くはない。しかし、教えてくれなかったというのは事実である。

 必要な分は伝えたのでそれ以上を語る必要はない。そもそもクルシェには伝言だけ伝えればそれでいいくらいだった。

 むしろ余計な話をしていたのは話す時間を増やすためだった、のかもしれない。

 そもそも<神託>に時間制限を含む様々な制限があるかも疑問である。

 実際には神側がそういった関与に関して制御できるのではないだろうか。

 と、そんな話はさておき。


「ああ、そういえば……」

「そういえば?」

「話をされる前に別の方に繋ぎが取れなかったから私に連絡を、ということだったそうです」

「…………? 余計にわからん」

「まあ、私とは元々話すつもりはあったようですけどね。私としてもアノーゼ様にはいろいろとお世話になっていますから」

「スキル神の加護があったわけだしなあ……それが世話というべきか、余計なお世話というべきか」


 業である<スキル神の加護>いろいろな意味でクルシェを困らせ、また苦境を救った者。

 神からの加護はクルシェがヴァンパイアとなった後で意思を残すうえで重要だったものである。

 また、その加護はある種のアズラットとの繋がりでもある。

 同じ神を通じての、似通った業。

 類似性、共通性というのはとても重要なもの……主従性もある。

 まあ、そこはクルシェの感覚によるものだが。


「しかし、神山か……」

「…………あの山があるのは聖国のある大陸です。神山自体は聖国ではなくあの地に住まうエルフの管理下にあるようですが」

「そうなんだよな。どっちにしても色々と面倒な場所なんだよ……流石に裏から登るわけにもいかないしな」


 伝言として伝えられた神山。その神山がある地はここアルガンドのある大陸ではない。

 海を渡った先の大陸、聖国が存在しと花都が存在していた、エルフの住む村のある大陸。

 別に渡った先で聖国とかかわる必要性はないし、エルフたちも別に関わる意味はない。

 しかし、アズラットが以前通ったルートは今回は使えない。


「えっと、もちろんクルシェも来るんだよな?」

「聖国と関わると騒動になることは間違いないと思いますが、私が主様だけを行かせることは絶対にしません……他のお二人方もついていかれるのでしょう? ならば私がついていかないわけはありません」

「……ってことは、スライムの時のようにはいかないなあ」


 以前はスライムの姿で山登りをした。

 しかし、今回神山に行くならクルシェやアクリエルのことを考えなければならない。

 登山道はエルフの村のある側にしかないはず。開拓されていなければそうなっているはずだ。

 クルシェやアクリエルなら整備されていなくとも登れそうな気はするが、確実に行けるとは限らない。


(……そういえば、祭儀場があるんだったか。もしかしてあそこに行くべきなのか)


 神山へ行くのに想像でき理由、恐らく目的地とされる場所。それは一度見たことのある祭儀場。

 そこには道が通じていたわけであるが、やはりそれはエルフ側から登らなければならない。

 つまりそれはどうしても面倒事があるということ、である。

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