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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
七章 スライムの神成活
321/356

291 クルシェとの再会(?)

「……えっと、それで………………どうしよう?」

「"ひとまずここでずっと使い魔を介しての会話というのも面倒です。私のいるところに来るのはどうでしょうか?"」

「まあ、そうなるか……」


 現在彼らがいるのは迷宮のあった場所、建物の痕跡の残る跡地、蝙蝠の群れがいるだけの場所。

 周囲にゆっくり休めるような場所はなく、崩れた崖があるのみで過ごしやすい場所ではない。

 幸いまだ街に戻るだけの余裕はある。

 クルシェがフィフニルにいるのならばそちらで会えばいい。

 仮に別の場所にいるとしても一度フィフニルに戻って休んでから会いに行くのもいいだろう。

 もっともヴァンパイアに会いに行くのに昼間に行くというのもどうかとも思えるのだが。

 まあ、アクリエルは夜眠らずにいられるというわけではないため活動は昼間となるのだが。


「そういえばなぜここに蝙蝠を?」

「"理由としては単純に最近この場所に起きた異変が原因ですね。理由は今は一応わかっているのでその異変がまた起きるかも、と監視する必要はありません。しかし、その異変を起こした張本人は一応監視しておいた方がいいということなので、使い魔を配置し何か変なことが起きないか、誰か来ないかと監視させています。定期連絡制にしているのですが……主様が蝙蝠に訊ねられたので使い魔である蝙蝠が動いたわけですね"」

「蝙蝠……使い魔って、今こうやって会話しているように直接会話したりはできないのか? っていうか、ここにいる蝙蝠は全部使い魔なのか?」

「"指示と繋がりの状態次第、ですね。使い魔はこれ一匹ではなく複数います。それらとずっと相互に繋がって情報を連絡すると私の方が処理しきれなくなりますから。だから普段は蝙蝠側でのみ情報を処理し、必要があるときにこうして連絡を取れるのを送り出すことになりますね。そこにいる蝙蝠たちは私の統率下に入っていますが、支配下には入ってません。使い魔が群れのリーダー、統率者として他の蝙蝠を従えていると言った感じでしょうか?"」

「へえ…………」


 使い魔と言っても万能ではないし、色々な利用用途はあるがそれでも主側でも処理の問題はある。

 かつてアズラットが<知覚>のスキルで情報を処理できず一時的に機能停止を起こしたようなことになるだろう。

 もっとも、普通に使い魔を持ちそれらを使役し使っているだけならばたいしたものではない。

 今回のように情報の連絡のやり取りを行ったりして相互に関わる場合はその影響力が危険になる。

 まあ、使い魔を間に置いているので何かあっても使い魔側が壊れて情報遮断を行える。

 とはいえ、同時に複数使い魔を使うことで主側が情報処理しきれなくなるなどは使い魔側での対処は不可能だ。

 そういった使い魔の使い方一つでも色々と工夫がある。

 奥が深い……と、それは今回のことには関係のない話だろう。


「いろいろと聞きたいことはあるけど、まあとりあえずまずは再会が先か。どこにいるの?」

「"今現在私はフィフニルにいます。場所は……一度街に戻ってきたら、蝙蝠を通じて案内させましょう。あ、今私が会話に使っている蝙蝠を連れて街に戻ってください。そして街で放ってくださればその蝙蝠が主様を案内します。そういうことで、私はいろいろと主様を迎え入れる準備をしますので、連絡はこれで断たせていただきますね"」

「あ、まだ聞きたいことが…………行動が早いな、はあ」


 使い魔につながりを作っていたクルシェの気配は消え去り、蝙蝠は普通の蝙蝠になった。

 いや、一応使い魔であるため普通の蝙蝠よりは強そうな気配はあるがあくまで蝙蝠基準のものでしかない。

 なので先ほどのような、クルシェの意思が乗っかっている時ほどの気配はない。

 ゆえに普通の蝙蝠にしか見えない。


「とりあえず、こいつを連れて行かないとだめか」

「んー……よくわからないけど、街に戻るの?」

「ああ。ま、聞きたいことがあれば直接本人に聞くのが一番だな」

『……ええ、そうね。いろいろとアズラットのこと、聞いてみたいわ』

『お手柔らかに頼みたいんだけど』


 自分のことを根掘り葉掘り知り合いに聞こう、と積極的に言われると流石に止めたくなる。

 もっともクルシェはアズラットとそれほど長く一緒にいたわけではない。

 シエラとほぼ同程度だろう。

 そういう意味ではもっともアズラットを知っているのはストーカじみた監視を行っているアノーゼを除けばネーデとなる。

 そもそもアズラットと関わっている人物が少ない。

 元々スライムだったのだから当然なのだが。






 と、クルシェの使い魔に会ったことでフィフニルへと戻ることになった。

 まあ会わずとも戻ることには違いないが今戻ることになったのは出会ったことが理由になる。。


「蝙蝠を放して、っと……」


 フィフニルの街で蝙蝠を手放すと蝙蝠はアズラットの頭上を飛び回り、そのまま街の道の上の方を進む。

 ある程度離れてアズラットが動かない様子である場合、蝙蝠はそこで立ち止まりアズラットが近くに来るまで待つ。

 どうやら言われた通りしっかりと案内をするつもりであるようだ。

 まあ、使い魔なので命令には従順なのは当然と言える。


「こっちだな」

「ついてくの?」

「ああ。別に相手の正体は解ってるし、問題はない」


 流石にクルシェがアズラットを害するために誘導している、ということはないだろう。

 そもそもそれならわざわざ本拠地に案内するのも昼間の状態である今案内する理由もない。

 それこそ夜に案内する方が彼女にとっては安全だ。最大限力を発揮できる状況であるわけだし。


(……歓迎が文字通り歓迎ではない別の意味だったりしないよな? いや、さすがにそれは変に考えすぎか。そもそも業の欄を見ればわかるが、未だに従者契約になってるし……それを解消するために、という理由でという可能性もあるかもしれないが、あまり心配しすぎもな。そもそもヴァンパイアで俺をどうこうできるとは思えない。アクリエルは流石に危ないだろうが……まあ、アクリエルなら、大丈夫、かも?)


 少々難しく考えすぎのアズラットであるが、当初の目的は変わらず、蝙蝠の案内についていく。

 結果的に敵対するのか、それとも元々の関係通り、主従としてアズラットに従うのか、現状ではわからない。

 結局のところそれを判明させるうえでも会わなければいけないことには変わりないのだから。


「ここ?」

「蝙蝠の案内ではここだな」

『……ちょっと大きいけど普通の家ね。こんなところにヴァンパイアが住んでるの?」

『もともとは都市庁舎に住まいを持ってたから変な話ではないと思うが……』


 案内された先は別段周りと変わらない家だ。ただ、少し大きめであるという特徴はある。

 しかしその特徴も別に他と大きく変わるほどのものではなく、採光の窓がないということもない。

 扉も普通で、日光が大敵のヴァンパイアが住んでいる場所とは到底思えないような場所だ。


(まあ、さすがに何百年もあれば対策くらいは既にとってるんだろう。さすがに日焼け止めでどうにかできるものとも思えないが、手段はいろいろと講じれるだろうし……スキルに特殊な道具、可能性はいろいろとあるだろうな)


 そんな風に家の前で色々考えているアズラット。

 アクリエルは特に普段通り。別にスキルに引っかかるような何かはないようだ。

 シエラは種族の特長に見合わない作りだと少し気にしているが別段それほど重要なことでもない。

 アズラットはひとまず入ってクルシェに会おう、と思ったところで誰かがだっ、と走ってくるのを感じる。


「っ?」


 ばんっ! と扉が開き、その扉の先から現れた人影がアズラットに抱き着いた。


「主様! お久しぶりです!」

「ちょっ、おま、ぎ、ぎぶ……」

「さあ、家の中へ! これまでのこと、今までのこと、これからのこと、何でも話したりないことをいくらでも、お話しますよ!」

「…………あ、待ってー」

『……はっ! ちょ、ちょっと!? ヴァンパイアじゃなかったの!? え、いや、本人じゃない可能性も? いえ、それだと主様って言うのは……?』


 アズラットが家の中に引き込まれ、アクリエルとシエラがその突然の行動に出遅れる。

 仮に今出てきたのがクルシェだとするのならば日の光の下何の影響もなく行動していたが、ヴァンパイアではないのだろうか?

 そんなふうに疑問に思うが、その疑問も中に入り話をすれば解決するだろう……恐らく。

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