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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
七章 スライムの神成活
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288 周囲の状況

 気落ちしてしばらくその場にいたアズラット。

 しかし、ずっとそのままでいくわけにもいかない。

 そういうことで沈んだ雰囲気から復活する。

 まあ、未だに気落ちしている部分は残っているわけだが。


「……しかし、この場所、少し妙だな」

「なにがー?」

『何が?』

「……いや、あの崖がな」

「んー…………何が?」

『…………確かに……少し変、かも? 何が変かはわからないけど……』


 アズラットはこの場所、迷宮のあった場所、その崖に対して少し違和感を持つ。

 アクリエルはそちらの方面で思考することがなく、もともと考えて動く性質なのでわからない様子だ。

 しかしシエラは言われてみれば、とアズラットの言う妙な感じを崖を見て感じる。


『……何かしら? あまり昔じゃない、感じかしら?』

『確かに崖が破壊されているのはそれほど昔ではなさそうだな。そもそも迷宮が崩壊する場合、どうやって崩壊するとかそういった部分もわからないわけだし。仮に迷宮が崩れて崩壊するって言うのなら、迷宮のある場所に崖とかが流れ込む感じになるのかな?』


 迷宮は洞窟のように存在していた。中は広く、かなりの大きさがあった。

 仮にそのすべてが崩壊したというのであれば、そこに流れ込む土砂、崩壊の影響により崩れた崖はかなりの量となる。

 だが少しそれには違和感を持つべきだろう。

 なぜなら迷宮は通常の空間に存在するものではないからだ。

 まあ、迷宮という者に関してシエラもアクリエルも詳しくなく、アズラットもそれほど大きな知識を持つわけではない。

 一応アズラットは迷宮主という存在であるが、その迷宮主でも知識で言えばそれほどのものではない。

 迷宮主は迷宮に関わる者ではあるが迷宮の知識を持つ存在ではない。

 核を通じてある程度迷宮に関与できるがそれくらいだろう。

 つまりアズラットもあくまで迷宮に関しては攻略する中で得た以上の知識はそれほどないと言える。

 迷宮はそもそも空間的には異空間に近い。

 ゆえに迷宮が崩壊してもそこが空いた空間になるわけではない。

 空間の維持がされず、それによる空間的な消失、その影響はないとは言わないが、それはそこまで大きな被害にはならない。

 そんな被害を巻き起こすのであれば迷宮攻略は推奨されない。

 まあ、資源の確保の目的もあって元々特別推奨されていないが。

 そもそも魔物が生まれたり砂漠や凍土があったりする場所がまともな空間と思うほうがおかしいのであるが。


『いや……そもそも、崖がどうのって言うのは崩壊した時期に関して、じゃないな。崩壊した時期も気にかかる点はないわけではないけど』

『……どういうこと?』

『崖の崩壊が開くような崩壊であることが気にかかるかな。迷宮のあったところにずれ込む、とかではなくて……こう、内側から吹き飛ばされたような感じの?』

『…………言われてみればそんな感じもするけど、そうかも、と言えるくらいにしか思えないわ。まあ、私は崖とかそういう岩とか地質とかに詳しいわけじゃないからあまりあてにはならないと思うけど』

『……スキルでちょっと調べる』


 <知覚>のスキルを使い、アズラットは崖の崩れ方、その状態に関しての情報を収集する。

 なぜ崖が崩れたか、どういう原因があったか、それに関しては<知覚>を使ってもわからない。

 しかし、現在の崖の状態に関してならば<知覚>のスキルを用いれば容易に知ることができる。


(ん……?)


 その<知覚>の際に入ってきた崖以外の情報。

 それに関して少し引っかかるものを感じるアズラット。

 しかし今は崖の方が気になるのでそちらに意識を向ける。


『……やっぱり崖は外から壊されて崩れた、というよりは内側から破壊されて今の状態になった、っていう感じだな。あと、年代的にも……大昔に破壊されたとかじゃなくて、結構最近破壊されたってことみたいな感じだな』

『それはいったいどういうことなのかしら……?』

『わからないけど、でもここに来るまでの道のりが使われていたというのはこの崖崩れがその一因なんじゃないかな? 何か理由はわからないけど、内側から破壊された崖があった。その理由を調べるために調べに来た。でも何もなかったから放置されている……というのが現状じゃないかな?』

『なるほど……確かにそういう理由なら理解はできるかも? でも、その考え自体がちょっと普通は考えないことじゃない?』

『……まあ、何か起きたから調べに来た、という事実以外はこちらの想像だし。単に本当に崖崩れとかもあるかもな。でも<知覚>のスキルで得た情報だから情報そのものは間違いじゃないと思うんだけど……』


 崖が崩れた原因までは不明だが、崖が崩れたためそれを調べに来た。それは事実だろう。

 だが結局スキルの関係か、あまり調べることそのものを重要視しなかったか、特に何か得られることはなく終わったと予想される。

 そもそもそういったことを調べに学者が来たわけではないだろう。

 迷宮があった場所であるため冒険者は来たかもしれない。

 しかし冒険者がそういった事象に関して詳しく調べるようなことをわざわざするとは思えない。

 ゆえに単純に簡単な調査だけされ、特にこれと言って魔物がいるわけでも迷宮があるわけでもないと判断される。


『スキルってそこまで正確なの?』

『まあ、情報に関しては。欲しい情報を正しく教えてくれるわけではないけど、その分得る情報自体は正確だな。取捨選択をしないと情報の整理が厳しくなるけど』

『ふーん……なら内側から破壊されたのは事実かもしれない。でも、その原因は不明なんでしょう? 別に……例えば内部に何か生物の卵があったとか?』

『それならそれで何かわかると思うが。卵の殻とかそういうのがあって』

『そうね……なら何なのかしら?』

『それがわかれば楽なんだけど……』


 うんうんと二人で色々と意見を出しながら崖崩れについて考える。

 そもそも崖崩れは別に二人にとって重要なことではない。そこまで深く考える必要はない。

 シエラはアズラットに付き合い何か意味があるかもと考えているが、アズラットはどちらかというと思考の逃避に近いだろう。

 まあ、気にかかったから調査している、という点もある。

 故郷の合った場所での出来事なのだから気にするのもおかしな話ではない。

 しかし、それを考えたところで問題の解決、目的の達成にはつながらないのではないかと思えるだろう。

 そんなふうに考えているわけだが、ふと、アズラットは別のことに意識が向く。


『……そういえば、アクリエルは大人しいな』

『あら? 確かに……」


 アクリエルの方にアズラットは視線を向けた。


「………………」


 いつものどこか軽い雰囲気ではなく、周囲に対して警戒するような様子を見せている。


「アクリエル? どうした?」

「んー…………視線が気になるかな?」

「視線?」


 アズラットがわかる範囲で、周囲に視線を向けてくるような存在はいない。

 別に生物がいないわけではない。

 だが、そう視線を気にするほどの相手というのはいないように感じている。


「うん。だってほら、周り、囲まれてるよね? 別に危なくないしいいんだけど、視られてるのは気にしちゃうよ」

「……確かに周辺には生物は多いけど。いや、蝙蝠ばっかりいるけどさ…………ん?」


 周囲には蝙蝠がいる。結構な集団であり、確かにアクリエルの言う通りその多数に視られれば視線を気にするのであれば気にかかるだろう。

 だが、アズラットはその蝙蝠の存在……その数、集団がここにいることに違和感を持つ。


「……蝙蝠がいる理由か」


 なぜ、この場にそれだけの蝙蝠が存在しているのか。それが気にかかった点になる。

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