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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
六章 神と人と魔物
310/356

280.5 そのころ天使は

「あああああああああああああ!! もう! なんで彼女は見つからないんですか!? 本当に!? もう!? よくわからない子ですねあの子もおおおおおおおおおお!!」


 ある種のキャラ崩壊を起こしかねないくらいにアノーゼは怒声をあげながら困惑している。

 アノーゼが追っている彼女、女性はネーデのことである。

 ネーデはアズラットが眠りについた後、迷宮にて己も眠りにつき、アズラットの復活とともにこの世界に戻ってきた。

 その都合上ネーデはかなり特殊な立ち位置、扱いになっている。

 そもそもアズラット同じ神格者、そこで疑似的な迷宮主に近い存在となり、その影響か神側からの干渉がしづらい。

 できないわけではないが、どうにも扱いづらい。

 そしてそういった影響はアノーゼ側からの捜索もやりづらいということになっている。

 これもやはりできないわけではないのだが扱いづらいわけである。

 根本的にアノーゼの捜索能力はその神の力に寄るもの、例えば自身の関係者ならば極めて発見しやすい。

 寵愛持ち、加護持ちのような存在であれば。

 またスキルに関する役割もあるためそちらからの発見もしやすいだろう。

 だが、神格者などの神格と同等の立場、扱いを受ける位置付けの存在であり、己の干渉のない存在は扱いづらい。

 どれもこれもできないわけではない。ただ、その難易度面倒くささが違うだけだ。

 簡単に言えば、数万冊の本をリスト化した機械から名前を探すのと、数万冊の本を直で確認して名前を探すくらいの違いだろう。

 どちらも面倒だが機械の方なら捜索はしやすい。整理整頓され、名前も確認しやすいからだ。

 しかし直で確認する場合、どこにどれがどのように存在するかもわからず、探す時点で面倒くさい。


「はあ……しかし、アズさんも何やってるんでしょう? まあ今回が前回と違うのは理解していますから、ええ、いいんですけど、いいんですけどね? なんですかあの子。前回は出てこなかったのに。いえ、出てきてましたけど、ええ、何か立場変わってますね。指輪までもらってますし。呪い殺したくなりますね。アズさん、私にも指輪ください」


 シエラ。前回……この世界が再構築される前、アズラットの前世とも言える存在がいた時代からいた少女。

 運命自体は今回も同じであり、アズラットと出会いアズラットと別れを果たした、旅商人の娘。

 ただ今回に限って言えば、その年齢が違っていた。

 その影響……というよりはアズラットが指輪を渡したことが大きい。

 アズラットの渡した指輪は神意の指環。

 心遺の指輪とも言える、想いの残滓を遺すことのできる指輪である。

 シエラという少女自体はアズラットの想いを抱えたまま生き、それを指輪に全て譲り渡し、死んで次へと向かった。

 しかし、アズラットへの想いは指輪に残り、それが今こうして生き残っている。

 本人そのものではないが、本人と言っても差し支えはない。

 それが今アズラットと一緒にいる。これはアノーゼにとっては由々しき事態だ。

 しかも彼女は指輪をもらっている。

 いや、現在では指輪そのものなのだが、それが逆にいろいろな意味で厄介とも言えるのだ。

 彼女はその想いの独特な特徴ゆえに、アズラットが生きている限り消えることはなく、指輪に宿るゆえに離れることもない。

 神意の指環はアズラットの所有物という扱いになっており、本人に戻ってきた以上二度と離されることはないと思われる。

 ましてや物だけではなくシエラも宿っている指輪だ。

 アズラットならば本人の意思を尊重して離すことを選択しないだろう。


「……あの子は確実にこちらに来ます。いえ、アズさんが己の内に有している以上来ないということがあり得ない……アズさんがこちらに来た時、神格として昇華する際一緒に格上げされますね。そのあたりはあの子も一緒ですからいいんですけど。はあ……まあ、増える分にはいいですよもう別に。今更ですし。アズさんの味方が増えるのも決して悪いことではありません、ええ、悪いことではありません……まあ戦闘力が皆無に等しいのは困りものですが。あれだとこちらに来ても特別力を持ち得ない立ち位置になるのでは? その場合こちらの業務の手伝いくらいしかできませんね……しかし、精神的肉体的な可変をもたらすのは独特な立ち位置です。子供から大人まで自由自在というのは……また厄介ですね」


 何が厄介なのか……とは問わないでおこう。

 幸いなことにアズラットはよっぽどあれでなければ年齢にこだわるものではない。

 いや、そもそも年齢じゃなくて見た目だろう。

 神の域にいる存在に年齢がどれほどの意味を持つのか。


「しかし……この子も奇妙な運命ですね。前回はいませんでしたよね……いえ、いたんでしょうか? 人魚とはアズさんは出会ってます。ですが……こんな子でしたっけ? 少なくとも、人魚の親子としては共通点がある。運命の流れとして、出会うことはおかしな話ではないですが……運命を踏襲するにしても、少しこの子は変わりすぎというか、ぶっ飛びすぎではありません? この子このままいけばそのまま神格者になってもおかしくありませんよ?」


 アクリエル。ある種の特殊な立場になっている独特な立ち位置にある人魚。

 何が特殊かというと、その強さ。

 幼い、少女ともいえる年齢ながら、彼女の強さは他から隔絶した強さになっている。

 海の中を自由に行動できる生物なのに、単独でシーサーペントを圧倒できるという時点でかなりおかしい。

 それがアズラットの渡した、神の力を持つ魔剣を使っているからと言っても、明らかにおかしい。


「どれだけ戦闘狂なんですか……あの年齢であれだけの強さを得るのは普通ありえませんよ……あれで特にそういう加護や寵愛を受けているわけではないですし、前世も戦いに因縁があるとかそういうわけじゃありませんよね? いっそのこと彼女の師匠だった人が転生してあの人魚の子になったと言われた方がまだ納得がいくくらいですからね? はあ……あの剣の影響で眠っていた才が開花した、とかなんでしょうか……それにしてもどう考えても異常なんですが。まあ、いいです。あの子に関してはそこまで気にしなくてもいいでしょう。現状こちらに引き上げる可能性があるのは……アズさん経由では二人、彼女に関しては自分でこちらまで向かってくるでしょうからいいです。うーん、でもこの子も……ちょっとこちらに来るかもしれませんね。戦い好き、となるとあの子と相性が悪くはないでしょう。鍛える相手として、戦う相手として、お互いが求めあうかもしれません……幸いなことにアズさんへの好意はないですし、こちらに引き上げる分には問題ありませんか……ああ、そうですね、魔剣持ちで手放す気がない以上、アズさんに勝手に引っ張られる可能性はあるかもしれません。いえ、彼女が死ぬまで放置でもいいですか? いや、無理ですね。現時点ではともかく、このままあの戦いへの意思を持ち続けるなら神格者への到達は確定です。迷宮主で終わるとは思えません……あの性格ならアズさんと同じで外に出るでしょう。そもそも高い意識と理性を持つなら神格者側です。そのままこちらに来ることは間違いありません……変に高位に上がる可能性を残すよりは、アズさんに紐づけしたほうが扱いやすいでしょうか? まあ、私は直に干渉はできませんから、そのあたりのことはこの先アズさんが経過する運命次第、といったところでしょうか……とりあえずアルガンドのある大陸には渡れたみたいですし、あの子と合流するのは時間の問題。まあ、そちらはかまわないのですが。問題があるとすれば、神山に来るまでどれくらい時間がかかるか、でしょうか。いえ、来ること自体はともかく……今聖国も含めてちょっとした問題が起きてますからね……あ、あの子ネクロノシアに行ってますね。アズさんに出会わなかったことを考えると聖国側を経由でしょうか? まあ、アズさんの存在を探すのであれば聖国みたいな魔物、迷宮の情報を集める方に行くのは間違いではないかもしれません。しかしそっちからでなければアズさんに出会ったかもしれないのに、少し間が悪いですね。聖国の問題と関わることがなかったのも間が悪いというか……まあ、あれと戦うことになったかは怪しいですが。どちらにせよ、アズさんが聖国、神山にくることは変わりありません。あれ相手に簡単に突破できるとは思えませんし、その間に合流できますかね? アズさん、あの子に、あの人魚……三者ではつらいかもしれません。アズさんなら負けることはありませんが、勝つには決定打が足りない……少々癪な話になりますけど、彼女の手は借りたいですね。ああ、でも彼女私から伝えても基本無視ですからね……はあ。まあ、ちょっと頑張ってみましょう。すぐに渡れるとは思えませんが、今から伝えておいた方が後々楽になるでしょう……聞いてくれますかねー」


 色々な意味で扱いに困るネーデ、そちらに連絡を入れてアズラットと合流させたいアノーゼ。

 彼女としてはネーデに頼るのは自分の感情的な部分で受け入れづらいのだが、この先起こることを考えると頼りたい。


「……まあ、今は調整を優先しましょう。あの子には<神託>で連絡を入れて……あまりこの手も過剰に使いたくはないですね。一応神は下のことには干渉しないのが普通ですから。まあ、さすがにこちらに来るまででは今回が最後。あの子もアズさんのことは気にしていましたし、近くにいることさえ伝えて知っていれば、後は自分で探すでしょう。今も調査の手は回していますが、知っている状態とそうでない状態では話が違いますし」


 とりあえず現時点では彼女がやることやるくらいしかできることはない。

 一応クルシェへの連絡は入れるが、そもそもアノーゼは少々過剰にやりすぎているというところもある。

 ある程度は控えておかなければいけない。一応彼女は神の立場にあるのだから。

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