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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
六章 神と人と魔物
306/356

277.5 適性者

私の家……家? 家族とか、お母さんとかおばあちゃんとか、そういった人から聞いた話だけど、私の家は凄いらしい。

詳しくはよく知らないしわからないけど、お母さんたちが言うには、私の家の最初の人はとても凄いスライムに会ったらしい。

会って、いろいろと手を貸してもらって今の生活を作ったんだって、そういうお話らしい。

私はそれほんと? って思う。だってスライムってたまに陸の方で見かけるあれでしょ?

海に落ちていることもあるけど、それだってつんつん魚につつかれて死んでる弱っちいのだよ?

そんなスライムに会って今の私たちの生活のもとになった、って言われても……信じられないよね。


でも、実際にそんなスライムがいるかどうかは知らないけど、私の家には伝わっている物がある。

剣。剣らしい。たぶん剣。お話にもあったけど、スライムからもらった剣らしい。

でも実際に使っていたのは家の最初の人……おばあちゃんよりももっとおばあちゃん?

とっても昔の話だから全然分からないけど、ともかく今は使われてなくて家の倉庫にある。

本当に使われていたのかなって思うくらいだけど。でもその剣はお返しする、らしい。

私もよく知らないんだけど使っていた人がもらった人に返すんだって。

それで家にはスライムを見つけて返して、っていうことでお話が伝わっているらしい。

なんでもらったのに返すんだろう、って思わなくもないけど。

まあ、私にはどうでもいいかな。関係ないし。


って、そう思ってたんだけど。なんとなく、私は家にいると何か感じるようになったの。

わかんないけど、感じるの。こう、きてー、って感じの何か?

よくわからないけど、呼びかけてくるような、誘ってるような、招いてるような。

んー、ってそういうのがあるからこっちも気になってそこに行くの。

倉庫だよ? 剣があるところだよ? 呼びかけてるのって剣だったの。

剣って話すんだー、って思うんだけど、そんなわけないよね? 実際話したことはないし。

私たちは海の中では<念話>で話してるし、陸地でも普通に話せるし、<人化>して人間の人とも話す。

っていうか、なんで剣が海の中にあるの? 錆びないの? 大丈夫……なんだよね?

まあ剣のことを心配しても昔からあるからダメになるんだったらもうダメだよね。終わってるよね。

そう考えたらちょっと剣に怒られちゃった。私の考えてることわかるのかな?

ううん、そもそもわかるとかわからないとかそういう問題でもないような?

剣だよね? 剣って生きてるの? 生きてないと思うんだけど、どういうことなの?


色々と剣に触れあってみたけど、どうやら剣は生きてないけど生きているらしい。

よくわからないけど、私たちみたいに生きてるわけじゃなくて、剣として生きている感じ?

剣には想いがあるらしいの。

返りたい、戻りたいっていう想いと、使われたい、振るわれたいって想い。

前の帰りたいとか戻りたいって言うのはお話にあった剣を返すってことに繋がるのかな?

もしかしたらそうなのかも? 最初の人も剣のそういう気持ちが分かったのかも。

でもなー。私そう言うの面倒くさいしー。それにスライム探すって簡単じゃないと思うんだよ?

どこにいるかもわからないし、私達人魚は海に住んでるからスライムなんてめったに見ないもん。

でも、返すことはできないけど、剣のもう一つの想いくらいは叶えられるかも。

だって、私が見つけて、私が答えるくらいならできるよね? 剣を振るくらいなら。


そうやって、私は剣を持った。よくわからないけどこの剣ってとってもすごいと思う。

力を感じる。持って、剣から響く声と力、意思を感じる。

うん、こうすればいいんだってのがわかるよ。

最初は村の近くに、勝てそうな弱い相手を見つけて倒すくらいだった。

剣は凄くて、とても力があって、私だけじゃ勝てそうにない相手にも勝てた。

振るって、振るって、何度も振るって、そうやっていろいろと倒して、もっと先に進めるようになった。

私も最初倒してた弱いのじゃ満足できないし、剣も不満そうだったから、もっと強いのを倒しに行くことにした。

うん、私も強くなるのを実感したからね。剣も強い相手と戦いたい感じだし、倒しに行くべきだよ。

ずっと、出かけて倒してを繰り返して、やってきた。いつの間にか私はとても強くなっていた。

うーん、ちょっと村で私くらい強い人いないよね? まあ、元々私は一人で行動してたけど?

まあ私は剣を振るってるだけでいいから気にならない。むしろ、弱い人とかどうでもいいし。

強い相手と、ひたすら強い相手と戦う。それだけだから。


いつの間にか村の周り、近くには魔物がいなくなってきてた。

だから遠くまで行かなきゃいけない。それに強い魔物ってあまり浅い所には居なくて、深くまで行かなきゃいけない。

まあよっぽどの深くまで行くならともかく、少し遠出でも多少深い所なら問題ないかな。

近くの魔物が減ってある程度遠くまで出ても強いのがいないとあまりおもしろくないんだよねー。

もっと強いの、もっと強いの! あの大きなのとかいいよね! 強いもん!

でも残念。ちょっと強い? むしろ弱い? だったからかな。

倒しきれなくて? 逃げられちゃった。

倒しきれないって言うのもちょっと違うのかなあ? 倒してる途中で逃げられたというか。

ま、別に逃げるような相手ならそれはそれで倒す必要もない相手かも?

あ、でも倒しきれなかったのはよくなかったかも。

倒すことで私が強くなるんだし。倒せなかったらその分私が強くなるのが遅くなるよね。

はあ、それはちょっと残念。ま、代わりに他のを倒せばいいんだよね。


あの大きなの逃がしちゃったから他のをいろいろとやってたけど、そうしてると何か海の中に白いのが見えた気がする。

んー? あの白いのは何か違うような?

白っぽいあれは、別に敵でもないというか倒せない存在というか。

なんとなく、そんな感じ? そんな予感? んー、剣があれは違うって言っている感じだった。

ううん、もう一つもそうかも? あれは違う、倒さなくていい、みたいな?

よくわからないけど、でも海にいるし魔物は魔物でしょ、って思った。

剣もよくわからないというか。

私がやるべきことは剣を振るって敵を倒して私が強くなることだもん!

剣の考えてることは解らないけど、私は私のやりたいようにやるからね?

と、そう思ってそれに思いっきり剣を振るった。でも、剣は嫌がったみたい。

ばーん! って斬れたんだけど、斬れなかった。最初は確かに斬った感じはあったんだけど……

魚とかで鱗は斬れたんだけど肉は斬れなかった、みたいな感じかなあ?

よくわからないけど、剣はあれを斬るつもりはなかったみたい? うーん、なんで?

剣に問いかけてみる。でもそもそも私も剣の考えていることがわかるわけじゃないしな―。

なんとなーく、こんな感じだよーってのわかるくらい。

ただ、それで感じる限りだと、あれとは戦いたくないって。

んー? なんだろう? 戻る、返る、そんな答えが……んんー?

よくわからないけど、斬れないんじゃ、倒せないんじゃ意味はないかなあ?

んー、しかたないかあ。あれ? 今……ええ? 何か話しかけてきた? あれ? 魔物じゃないの?

んんん? そもそもここって海の底だよ? 人とか居れないよね? ええっと、誰? 誰ー!?

よくわからないけど、よくわからないけど、とりあえず話し合わないとダメそう?

ダメ? 斬っちゃダメ? ううー、斬れないから斬って終わりってのもできないかー。

うーん、とりあえず村に連れてく? じゃないとダメかなー。

剣も、なんで斬れなかったかってあるし、とりあえず誰なのか聞いてみようかなあ……

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