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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
六章 神と人と魔物
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273 海上の戦い

 人間が海の上で行動をする能力というのはスキルなどの特殊な事例を除けば基本的に存在しない。

 スキルでも海上行動を可能にするスキルというのはかなり得意で高レベルでなければいけないだろう。

 この船に乗っていた船員たち……魔物に対抗するための漁師としての活動をするような船員たちもそのようなスキルは持たない。

 彼らが持つべきスキルは海中に存在する魚や魔物の存在を把握したりそれらの察知をできるもの。

 また、それらに対応するための攻撃手段の方が重要視される。

 そもそも海上で行動できたところでそれほど大きな意味はない。

 スキルを少しでも解けば海に落ちる。

 そんな常にスキルの使用を維持しなければいけない状況で敵と戦うのは中々面倒に過ぎる。

 それならば船の上から海にいる魔物に対して攻撃できる手段を鍛えたほうがいい。

 船は当然魔物の攻撃に耐える物でなければいけないし、スキルや武器も海の魔物に有効な物を用いなければいけないが。


「いくぞ! お前ら! 投げるぞ!」

「おーっ!!」

「うりゃあああああっ!!」

「でりゃあああああっ!!」

「ごらああああああっ!!」


 船員たちが一斉に持ってきた槍を用いて投槍を始める。

 海中にいる相手にも投槍は比較的有効だ。

 まあ、今回は相手が海上に出てきているためそこまででもない。

 しかし、相手との距離はそれなりにある。

 シーサーペントが近づいてきたところを狙うのも決して悪いものではないが、近づかれるとそれだけ脅威は増える。

 その巨体での体当たりは人間ならひとたまりもないものであるし、何より彼らが乗っている船が危険だ。

 もちろん船が狙われるとは限らないがこんな普通の客船ではシーサーペントの攻撃をどれだけ耐えられるか。

 彼らのような戦える船員が普段乗るような魔物戦うことを前提としたものならばまだ比較的耐えられるだろう。

 しかし、普通の船はそこまで魔物と戦うことを想定していない。

 もちろん魔物が襲ってくることは承知しているだろう。

 だがそれでもある程度までは考慮してもシーサーペントのような大物までは考慮しない。

 そもそもそんなものと出会うこと自体が極めて稀だ。遭遇することを考えることは少ない。

 まあ、ともかく、相手に対する攻撃手段として投槍を用いている。


「刺さった奴は引っ張るなよ! むしろ紐は切れ!」

「引きずり込まれると流石にこの船も沈む!」

「海に落ちたやつは回収してもう一度だ! 倒しきるまで何度でも使いまくるぞ!」


 槍の数にも限度はある。そもそもシーサーペントは巨体であるが細身で遠い。

 ゆえに攻撃はそのすべてが当たるわけではなく、当たっても滑り攻撃がそれることも多い。

 そんな相手に想定される必要な槍の数はここにある槍の数よりはるかに多いだろう。

 しかし、そんな槍も元々の使用目的から作られている構造のおかげで再利用ができる。

 海にいる魔物に槍を使いそれで撃ち抜いたとして、槍の回収は普通ならできない。

 魔物が浮いてくるのならば楽だが槍が刺さっている以上重みもあり沈むことだろう。

 槍自体にある程度の浮力があればいいが、それでも沈むときは沈む。

 ゆえに回収用に紐をつけている。

 そして魔物を突き刺した槍を紐を引っ張り回収する。それが基本的な使い方だ。

 もっとも今回は同じことはできない。何故なら相手が巨体にすぎるからだ。

 紐は船の一部に結ばれているため、シーサーペントの巨体に引っ張られれば船がそのまま海中に沈む。

 そうでなくとも揺らされるし傾けられるし方向を変えられるなど様々な危険がある。

 そのままにしておはおけないため、シーサーペントに突き刺さった槍は紐を切り離すことが求められる。

 つまり相手に刺さった槍は再利用もできないわけである。まあ回収のしようがないのは仕方がないことだろう。


「くそっ! なかなか刺さらねえな!」

「頭狙え! 体に刺さったところで大して意味はねえ!」

「血を流すにも抜かなきゃあまり効果ねえしな! 目を狙うか!?」

「暴れさせすぎるとそっちの方がやべえ! 脳だ、脳をねらえ!」

「無茶言うな! あの巨体だ! 硬いに決まってんだろ!」

「でもやるしかねえっての! 胴に少し突き刺さっただけで怒ることにゃ変わんねえしな!」

「魔法使いに助け求めろよ! いるか知らねえけど!」

「ちっ! やっぱり俺たちだけじゃきついか!?」


 いくら船員たちが魔物との戦闘経験があると言っても、やはりできることに限度がある。

 そもそも彼らもシーサーペントのような特大の大物を考慮してはいないだろう。

 しかし、仮に冒険者の力を借りるにしてもやはり問題はある。

 彼らの問題とその問題は同質であり、攻撃手段の問題となる。

 要は遠距離にいる相手に攻撃できるかだ。

 まあ、場合によっては彼らでは足りない部分を補うため投槍をしてもいいかもしれない。


「よし! とりあえず頼んで来い! 客に迷惑をかけるのは仕方ねえが、船が沈められれば厄介だあっ?!」

「うおおおっ!?」


 船が揺れる。シーサーペントもただ攻撃を受けているというだけではない。

 理由はわからないが攻撃に対し警戒を見せていたシーサーペントであるが、攻撃が効かないためかその巨体で体当たりを敢行してきた。

 それだけでは船は沈まないものの船の破損、耐久力の減少は大きく、何度も受ければいずれは沈むだろう。

 そうなっては遅い。


「すぐに行動しろっ! 幸いにも外に出てきてるお客様は多い!」

「それって幸いじゃねえよな! 絶対何か予感してたよなっ!」

「うるせえっ! そんなこといってる場合じゃねえっ! とっととやれっ!」

「おうっ!」


 そうして船員たちが冒険者……あるいは冒険者に限らずその力を借り受けるため船を回る。

 冒険者側にとって船を守るための戦い参加するのは本来彼らの仕事ではない。

 しかし、船を沈められるのも困る。

 船がなければ彼らは海を渡れないから船を乗っているのであり、船がなくなれば海に沈み死んでしまう。

 必然的に彼らは守るための行動をしなければならない。

 まあ、後で文句というか相応の報酬をもらうことを約束したが。






「くっ! 流石にあれは中々倒せないな!」

「っていうか、どうやって攻撃するんだよ! 槍投げてりゃどうにかなる相手かっ!」


 冒険者も加わり、幾らか魔法系の遠距離攻撃スキルを持つ冒険者もいて戦いはできる。

 しかし、根本的に相手の強さ、耐久能力、戦闘能力が違う。

 やはり普段深い海にいる魔物はかなり強力だ。


「また来るぞっ!!」


 シーサーペントが突進をして来る。船に当たれば壊されるような危険がある。

 まだ突進だけだからいいが、シーサーペントが遠距離の水系の攻撃スキルを持っていたら厄介だっただろう。

 その点に関しては幸いだが、やはり攻撃されてしまうのはなかなか厳しい。


「俺が防ぐからそこに攻撃を頼む!」

「おう! 冒険者じゃないのに頼ることになるのは少し悔しいが頼む!」


 冒険者たちの中、アズラットも戦闘に参加している。

 アズラットは冒険者ではないがその実力を見込まれている。

 戦闘能力という点においてアズラットは近接的なそれはまあ問題はないのだが、そもそも攻撃手段はない。

 ゆえに一番アズラットにとって求められるのはその防御能力、<防御>のスキル。

 なぜならその<防御>はシーサーペントの攻撃すら防ぐことができる。

 まあ、本人はめったに使っていないのだが。


『凄いね! あのおっきいの防げるなんて!』

『あれよりもっとでかいのと戦ったことがあるからな……しかし、傷がついてるな。槍とかじゃなくて剣、か? いったいどこで……?』


 色々と疑問の多いシーサーペントの出現。

 それについてアズラットは考えている。一体何が起きたのか。

 まあ、それはこの戦いが終わってからでもいいし、考えても仕方のないことであるかもしれない。

 ともかく、今はシーサーペントをどうにかするしかないだろう。

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