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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
六章 神と人と魔物
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269 シエラとの旅

 指輪とシエラについての確認も終わり、アズラットは元々の予定通りの行動を続ける。

 まあ、つまりは旅を続けるという話だ。

 シエラがいようといまいとアズラットがやることが変わるわけではない。

 ただその旅にシエラがくっついてくるというだけの話である。


「……なんかすごく気になるな」

『何が?』

「いや、シエラが」

『え? 私気になるの? えへへ…………』

「いや、気になるってそういう意味というか、そういう返事をするような内容じゃないから…………シエラが俺についてくるやり方が気になるってだけだからな?」


 シエラは実体のない存在であり、指輪の能力により残滓としてこの世界に残っている存在である。

 つまりその存在は指輪に縛られており、指輪を装備してる、所有者であるアズラットに縛られているということになる。

 なのでシエラはアズラットについていく……まあ、そこは本人の望み、願い、想いも要因になるのだが。

 しかし、実体のないシエラがアズラットについていくのは構わない話だが、ここで気にかかるのはどうやってついていくか。

 別に実体がないため歩いたりする必要性はないし、そもそもシエラはふわりと浮いている。

 なので空中を体を動かさずに移動してついてくる、いわゆる幽霊のような感じでついてくるものと思うかもしれない。

 まあ、そうやってついてくることもできるのだが、シエラはそういったやり方はしていない。


『えっと、これってダメなの?』

「……ダメ、とは言わないけど、何というか凄く気になるというか……」

『私はアズラットと一緒にいたいよ? だからずーっとアズラットと一緒にいられるように、ってこうやってるんだけど……ダメ?』

「………………あまりダメとは言いたくないけど、やっぱりすごく気になるというか、何というか」

『でも、感触はないよね? 私はアズラットに触ることができるけど、アズラットは触られても特に感じないでしょ?』

「体を透けずに触ることができるってのはいろいろな意味で疑問だけど、確かに触られている感触はない。でも、こうやって自分の体に女の子が抱き着いているっていうのは、感触がなくてもすごく気になるんだけど? 見えるせいで余計に」


 現在のシエラはアズラットの体、背中からおぶさるようにしてアズラットに抱き着いている状態である。

 そういう状態でも特にシエラの肉体の感触はなく、見える状態でなければそこにいることすらわからないだろう。

 アズラットが見えるのはシエラが肩のあたりから回す腕や髪の毛、あとは横を向いたときに視界の端に映るくらい。

 背中の方にいるのではっきりと見えるわけではないのだが、やはりちらちらとその存在を感じる見え方をするのは気になる話であるだろう。


『大丈夫だよ。私の姿は他の人には見えない。アズラットだけにしか見えないから』

「……そもそもなんで他の人には見えないのか」


 その点も疑問点はある。

 幽霊だから見えない、ということになるとなぜアズラットは見えるのかも謎だ。

 魔物だから見える、あるいは特殊な精神性だから見える、神格者であるから見えるなど理由はいろいろとあるのかもしれない。

 しかし、厳密にその点に関しての解答は出てこないだろう。

 そもそもわからないことの方が多い。


「まあ、見えていたらそれこそ問題だけどさ。他人に女の子が抱き着かれているのを見られるとか気になりすぎる……この状態を気にするのはそっちもあると思うんだけど」

『どういうこと?』

「別に誰かに今の姿が見えるわけじゃないとわかっていても、俺が見られているという時点でその姿を見られているんじゃないかと邪推してしまう、って感じかな。実際には違うんだとわかってても、やっぱり気にかかるってところだ。それに……本当に全く誰にも見えないとは限らないし」

『……そうだね。私のこと見える人がいないとは限らないもんね』


 今まで誰かにシエラの姿が見られたことはない。

 これに関してはそもそもシエラが姿を現していないというのもある。

 もっとも、基本的に見えないというのはなんとなくシエラ自身に確信のあることだ。

 ゆえにどういう形で現れても見られることはないはず。

 ただ、絶対に見えないとは限らない。

 あくまで基本的には見えることがないと言うだけの話。

 例えばスキルで霊視などの霊能系のスキルが存在するのであれば、シエラの姿を見ることは不可能ではないかもしれない。

 あるいはレベルが極めて高ければその存在を見ることができるかもしれない。

 または感知することができるかもしれない。

 人型の魔物、エルフなどならばどうだろう。

 魔物ならば見えるというのならば見える可能性はある。

 そういった感じで本当に見えないとは限らない。

 見えずとも感知でその存在を把握される可能性だってある。

 まあ、見られるよりは比較的まし、かもしれないが。


「……そういえば」


 ふと、アズラットは思い立って<人化>を解除してスライムの姿に戻る。


『あっ! もう、いきなり元に戻らないで……スライムの姿もやっぱりアズラットはアズラットだね』

『いや、そういうのはいいから……まあ、少し気にかかったからこの姿に戻ったけど。スライムの時はシエラはどうするつもりだ?』

『…………上にいる感じかな?』

『それだと見える相手がいるとここに何かいます、と言っているような感じになってしまうな』

『…………それは問題かなあ。だったら私はアズラットの中に隠れていた方がいいかも』

『……そんなことできるのか?』

『指輪がアズラットの中にあるからね。指輪に戻るだけだよ』

『ああ、なるほど』


 シエラの存在はアズラットの持つ指輪に縛られている。

 なので別に常にその姿を表に出している必要性はない。

 シエラがその姿を表に出しているのはアズラットと触れ合いたいという想いがあるからだ。

 もっとも、現在の実態のない状態では触れてもシエラの一方通行、それもお互い接触していることを感じれない状態だ。

 シエラの方は一応体を透けずに障ることはできるものの、それ以上行けないというくらいでその感触を感じているわけではない。

 そういう点ではシエラの方も実体がないため不便な所はあるのだろう。


『…………ああああー!!』

(うおっ!?)『……シエラ、いきなり叫んでどうした?』

『ねえ、今の状態だと、私アズラットをぎゅーってできないよね!?』

『…………そりゃあ、できないんじゃないか? シエラは実体がないわけだし。触るような感じで体に触れることはできるけど、別に俺がシエラに干渉できるってわけでも、シエラが俺に干渉できるってわけでもないみたいだし?』

『ううううううう! それはとても悔しいよっ!!』


 かつてシエラがアズラットに出会った当時のように、アズラットを抱きしめたり、膝の上に置いたりとかそういうことはできない。

 仮にアズラットをシエラの上に置こうとした場合、シエラの体の方が沈む。

 アズラットの体を透けないようにはできても地面は透けてしまう。

 そのあたりシエラの透けずに触れるという事柄は融通の利かない能力である。

 まあ、干渉できるというのは干渉される可能性もあるのでできないほうがいいのだろう。


『まあ、なんとか実体を手に入れることができればいいんじゃないか?』

『どうやって?』

『流石に俺もそういうところまではわからないな……神様辺りに聞く機会でもくれば、その時に聞いてみればいいと思う』

『そんな機会が来るの? 来ないよー、絶対ー』


 アズラットが神様と知り合いである、ということはシエラも知らないのでそのような反応になるだろう。

 もっとも今のアズラットはその連絡手段が使えないためあまりその事実には意味がないと言えるのだが。

 しかしこれからアズラットと一緒にいる限りは、いつか知り合う機会はあるかもしれない。

 その時はシエラの実体の確保について質問をしてみてもいいだろう。

 もっとも、方法があるとも限らないわけであるが。

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