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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
六章 神と人と魔物
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265 魔物を売る店

 魔物屋。この世界でもかなり特殊な魔物を捕まえて売る店、である。

 いわゆるペットショップのようなものに近いものだが、この世界において魔物はいろいろな意味で特殊である。

 例えばもっとも特殊な事例はスライムがわかりやすいが、スライムはあらゆるものを食らう危険な生き物である。

 そのうえ、進化というものでいきなりスライムからビッグスライムになる。

 そうするとその危険性は跳ねあがり下手をすれば死ぬ危険性がある……というよりは高い。

 そもそも魔物に自分の言うことを聞かせること自体かなり難しい。

 魔物も獣と大差ないと考えれば不可能ではないだろう。

 しかしやはり家畜として飼えるようなペットとして持ち得るような獣と違い飼いづらいのも事実。

 彼らの住まう場所もそうであるし、その強さ、危険性の問題もある。

 また、懐きやすさの問題もあるだろう。

 魔物は基本的に懐きにくい。

 懐かせる必要性はないが、そうなると飼うにもどうにか面倒が大きい。

 そして何よりもスキルに引っかかる。

 冒険者が街を守るうえで飼っている魔物は障害になり得るだろう。

 魔物が近くにいれば魔物が寄ってくる気配もわかり辛くなる。

 いろいろと魔物を飼うという点には問題が多い。


 しかし、魔物屋はそれに関してある程度解決している……というほど解決はしていないが、対策はしている。

 魔物を一か所に集めその影響を少なくする、場所も街の中心ではなく外れの方にするなど。

 また、魔物を飼うことに関しての手法も独特のものだ。

 彼らは魔物を飼うのに<従魔>のスキルを使っている。

 その<従魔>のスキルを手に入れた経緯、魔物を売る店を作った経緯はいろいろと言われているが、そのスキルを得る手法は今も残っている。

 そもそもそのスキルを得るための魔物屋でもある。

 <従魔>のスキルは魔物と仲良くなることで得るものだからだ。

 魔物屋はそもそもそのスキルを得るための場所であり、そしてそのスキルで運用するための魔物を得る場所だ。

 <従魔>のスキルを持っている相手に魔物を売るための店、魔物屋はそういうところである。

 まあ、つまりは複数の役割を魔物屋は果たしている。

 もっとも、今ではお隣の大陸にいる聖国の人員の影響で活動しづらいが。


「…………魔物を売ってるのか。まあ、犬とか猫とかをペットにして売ることもできるならこういう商売もありなんだろうけど……………………でも、こういうのはできるのか?」


 アズラットは魔物である。ゆえにアズラット自身魔物のことは身近に知り得ている物でもある。

 まあ、アズラットは魔物でも特殊であるし、そもそも魔物はその個の性質が強い。

 他の魔物の情報などアズラットも詳しくは知り得ないだろう。

 ある程度は<知覚>生体情報を知り得るがそれくらいだ。

 しかし、それでもやはり魔物は魔物。同じ性質の存在であるがゆえにわかることもある。

 先ほども言ったが魔物は個の性質が強い。群れる魔物もいるがそれはまた別の話だろう。

 基本的に魔物は同種、同系統ならばともかく、それ以外とはあまり関わらないことがほとんど。

 そしてそもそも人間に対して、人間に限らず多くの生物に敵対的というものは多い。

 そして同種でもまた特別仲がいいというわけでもないし、下の生き物ならば襲うこともある。

 そもそも仲間を作るような魔物は仲間を作るような性質のある見た目にも性質的にも近しい生物がいる存在の場合が多い。

 魔物の大半は独特なもの、特殊な物でそれゆえに個で生きる者が多い。

 そもそも、獣や生物としての魔物ならばともかくガーゴイルのような生物でない存在もいる。

 そんな魔物を従えるのはいろいろな意味で難しいし、管理もし辛いだろう。

 まあ、そういったことを魔物と直接やりとりできる<従魔>によって解決しているわけだが。


「しかし、スライムばかりだな。まあ、利用するのであれば扱いやすいし始末しやすいからしかたないのか?」


 魔物屋に売られている魔物は大半がスライム。

 いくらか魔狼のような種もいるが、ほとんどがスライムである。

 アズラットは一応元々がスライムであるためか、その状態に少し思う所はある。

 まあ、どういった用途で使うかは推測ができる。

 そもそもスライムの利用は以前から行われていることである。

 ただ、放ってゴミを食わせるという使い方だけでなく、<従魔>で従え扱うことで色々な形で使えるようになっている。

 制御ができるというだけでもかなり大きい。


「お客さん? 魔物を買いに来たんですか?」

「ん? ああ、ちょっと見たことのないお店だから見に来ただけだ」

「あー、そうですね。この店は余所にはほとんど展開してないですからね……」

「魔物を取り扱うという時点でかなりやりづらいだろうし、仕方ないと思うな。それに……隣の大陸には聖国の手も入っているみたいだし」

「はは……」


 魔物を売る、なんていう商売を聖国の手が入っている場所では無理だろう。

 間近にある時点で面倒くさい。


「スライムばかりいるようだけど」

「他の魔物いますよ。まあ、ここにおいてある魔物以外はいませんからここでほしい魔物がいなければ余所の店で買うしかないですが」

「他の店……どこに店をだしてるんだ?」

「まあ、この大陸ならそこそこ、余所には出していない……というよりは出せないですね」

「まあ、そうだろうね」


 アズラットはスライムを見る。

 スライムは隙間のない大きな箱に入れられている。材料としては石材だと思われるもの。

 木材と石材ならば石材の方がスライムは食べないからだろう。

 生命由来の物でないものならば食べられにくい。

 箱はそうしておき、中に何でもいいので生物由来の物を置いておくことで箱を食べられないようにできる。

 そんな箱の中のスライムだが、アズラットから離れるように箱の端に寄っている。

 以前からそうだが同種のスライムは最上位であるアズラットのことを恐れる。

 従えることもできるがアズラットがそうするつもりが全くなく、そういった力も使っていないので従うことはない。


「嫌われてるみたいだな」

「嫌われてる、ですか。それはまた……何かスライムに対する称号でもお持ちですか?」

「まあ、そんな感じかな。そもそもここには気になって見に来ただけだから」

「そうですか……あ、<従魔>のスキルを覚えることもできますけど、どうします?」

「いや、これ以上スキルは覚えられないから」

「え? そうなんですか……残念です」


 この世界においてスキルのことはそこまで詳しく知られているわけではない。

 しかし、一般人の覚えられるスキルが少ない、冒険者の覚えられるスキルが多いなど簡単には知られている。

 なのでアズラットの言うことに疑問を持つことはない。

 まあ、正確なスキル上限などを知っているのは不思議かもしれないが。

 と、アズラットはそんな感じで少し話して中を見つつ、結局何も買わずに外を出た。

 まあ、普通の店でもそういうことはあるが魔物屋はより特殊だ。

 購入自体スキルの<従魔>なしでは難しい。

 当然ながら魔物を買って街に放つような危険なこともできてしまう。

 スキル無しでの取り扱いは基本的に禁止である。

 なのでこの店では何も買わないか、<従魔>のスキルを得るか、スキルを得て魔物を買うか、といった具合である。


"…………見つけた"


 ところで、この魔物屋は本店というか、最初に作られた魔物屋である。

 その魔物屋には一つの指輪が受け継がれ置かれていた。

 その日、指輪はその場所から消失した。

 その指輪の由来はいろいろと言われているが、呪いの指輪として扱われていたりもして、むしろ失われたのはいいことなのでは、と思われたりもしている。

 もっともずっと継がれ残されていた者ゆえにいろいろと捜索はされた。

 結局見つからなかったが。


 その指輪が特殊なもので、またその指輪に宿る意思があり、それが特異な移動手段にて移動したなどとは誰も考えつくものではないだろう。

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