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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
一章 スライムの迷宮生活
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029 洞窟を探索する

 四階層に来たばかりのアズラットを多様な魔物が襲う。

 その多くはアズラットにとっては危機ではない。

 しかし、ずっとその状態というのはアズラットにとっては望ましい物ではない。


(どこか安全なところを……上か?)


 迷宮において安全な所と言うものは少ない。

 少なくともこれまではそうだった。

 一階層から三階層では遺跡のような構造で安全に休めるような場所はない。

 スライムは少々例外だが。

 四階層では洞窟のような構造をしており、休もうと思えば休めるようなところは見つかるだろう。

 しかしそれは決してスライムにとって安全な場所とは言いづらい。

 休める場所と言うのは他の多くの魔物も訪れるような場所なのである。

 ではスライムにとって安全な場所とはいったいどこであるのか?

 それはスライム穴のようなスライムの安全のために作られたような場所である。

 それに関しては四階層でも一応存在するが、数は少ない。

 しかし、それ以外にも一応存在する。

 アズラットが目をつけた上層部、洞窟の上の方。

 そこには突き出た小さな岩場ようなものがある。

 四階層で存在する大蝙蝠らが休む場所、もしくは迷彩能力を持った大蜥蜴が休む場所である。

 しかし別にそれら以外の魔物が休んではいけないというわけでもない。

 安全性の問題があるが、アズラットの場合はそれに関しての問題はないだろう。

 どちらの魔物にも無傷で対処でき、スライムは睡眠を必要としない魔物。

 常に眠ることなく起きているアズラットは何時魔物に教われようとも問題はない。

 もっとも常に襲われる危険と言うのは精神を削るものであるが。


(うっしょっと)


 <跳躍>を使いながら壁に取り付き、その壁からさらに<跳躍>を使い上に登る。

 それまでの構造では垂直な壁だったのでやりにくかったが、洞窟の構造では壁から壁への跳躍ができる。

 そのおかげで結構簡単に登ることができていた。

 もちろん他のスライムでは同じ方法では不可能である。

 そもそも、迷宮の構造的に普通のスライムが壁を登るということはあり得ない。

 不可能ではないがそのようなことを考える、もしくは行動するスライムが存在しない。

 なのでそもそもスライムが上に登ってくることは想定されていないだろう。

 スライム穴も四階層の下側に存在している。


(……下が見えるな。しばらくここから魔物を観察するか)


 四階層に来たばかりでアズラットは色々な魔物に出会っている。

 三階層から見ていた限りでもわかった話だが四階層は魔物の数が多い。

 魔物に関して調べるだけでも結構な時間を使う。


(しばらくはゆっくりしてるか。今までなんか急ぎ足でここまで来た感じだし)


 アズラットはこれまでの自分の行動を思いながら、しばらく四階層の上の方でのんびりとする。






 四階層の魔物は見る限りでは四種類に分かれている。

 基本的に群れを成している大鼠と大蝙蝠。

 その群れを成す魔物を隙を見て襲う大蜥蜴やゴブリン。

 それらの魔物を気にすることなく喰らう熊と河馬と虎。

 そしてそれらの生態の外にいるスライムとゾンビ。

 群れをつくっていたり、武器を持っていたり、迷彩柄をしていたり、人や狼のゾンビ、赤いスライムであったり。

 四階層にいるそれまでの階層と同じ魔物はそれぞれ特殊な特徴を兼ね備えている。

 そして自然界に存在する熊や河馬の類はそれ自体が強力なものだ。

 そしてまた彼らも特殊な特徴を持つ。


(なんというか、大変な階層だな)


 アズラットは三階層にゴブリンたちが流入している理由が予想できてしまう。

 ゴブリンにとって食料となるのは恐らく大鼠と大蝙蝠と大蜥蜴。

 大蜥蜴は迷彩で隠れ、大鼠と大蝙蝠は群れをつくる。

 いくら武器を持ち群れを作れるゴブリンとはいえ、それらを餌として確保するのは難易度が高い。

 狼五匹の群れと大鼠や大蝙蝠の集団、どちらが楽かと言えば確実に前者だ。


(生存競争が激しい。俺もどれだけうまくやれるか……)


 幸いないことにアズラットの場合大蜥蜴も大鼠も大蝙蝠も問題なく相手できる。

 あまり食事したくない相手だが二種のゾンビも問題がない。スライムには逃げられるだけ。

 問題となるのは自然界の獣に近い魔物の三種、巨大な熊と角の生えた河馬と硬質な毛皮の虎。

 そして武器を持つゴブリンの集団である。

 特に現在のゴブリンの集団は知能のあるリーダーを持つ。


(ひとまず、各地を見回ってみよう。魔物の様子を見ただけだと何とも言えないな。<隠蔽>もあるし、進むだけならなんとでもなるか……?)


 <隠蔽>のスキルも万能ではない。他の全ての相手に有効とは限らないゆえに不安はある。

 しかしアズラットとしても階層の上部でゆっくりとし続けても意味はない。


(構造の確認、魔物との戦闘の確認、怖いのは虎が一番怖いか。大蜥蜴も不意打ちはビビるけど、危険はないからな)


 迷宮の中で最も速いのが虎。それゆえに虎が近づくのを見逃すと危ない。攻撃能力も高い。

 大蜥蜴は不意打ち気味に舌を伸ばしアズラットを食べようとしてくる。

 びっくりはするものの、危険度は低い。

 一番はそれだが、二番目は何かというとゴブリンか熊か河馬で迷う所である。


(蜥蜴とかでもやったけど、<圧縮>とその解除によるコンボみたいな攻撃はでかいよな。膨れ上がる体積に勝ち目がないから)


 外から魔物を食らう、というのもアズラットの攻撃手段であるが、それ以上に内部からの攻撃の方が強い。

 特に自分の体を口に突っ込ませ、その状態から<圧縮>している体を解放する。そうすることで膨れがあることができる。

 体の中でアズラットが膨れ上がり、その膨張力のまま口や胃が広がればアズラットを抑えこむことができずにパンクする。

 そうして弾け飛べばまともな状況を維持できない。

 頭ならば確実に死に向かうし、胃ならば体内にアズラットが広がり消化される。

 いろいろとえぐいやり方ではあるものの、これに関しては生存競争だ。

 食うか食われるかの戦いである。

 そもそもそれをできないようにアズラットを殺しておけばいいのだからそれをできなかった方が悪い。

 それにより今のアズラットでも巨大熊や角河馬を倒すことができると言うことだ。

 それらは今のところ内からの攻撃しか対処手段はない。

 ゴブリンたちはまだ外から攻撃して倒せるので比較的楽かもしれない。


(ただし虎には注意だな……)


 その中でも石の毛皮をした虎に関しては危険である。

 何かあった時的確に脅威に対処しているさまをアズラットは確認している。

 なので虎に関しては一番注意しつつ、アズラットは四階層を探索する。


(……やっぱりゴブリンたちはここでもグループなんだよな。確かアノーゼの話だとここに何か頭がいい奴がいるみたいだけど)


 アノーゼが小さく呟いた四階層に存在するらしいゴブリンたちの頭脳となっているゴブリン。

 それがアズラットにとっては少し気になる存在であった。


(倒した方がいいのか? いや、一応同じ迷宮の魔物だし……でも、倒した方が安全なんだよな)


 今のゴブリンたちがグループを組んでいる状態はアズラットにとっては危険な状態である。

 武器を持っているゴブリンはアズラットにとっては脅威だが数さえ少なければ対処は難しくない。

 今のようなグループを作るのは頭のいいゴブリンによってゴブリンたちがまとめられているからだ。


(……まあ、それを決めるのは見つけてからでもいいか)


 アズラットはそれに関してどうするかの選択を先送りにする。

 確かにアズラットにとっては脅威であるがゴブリンたちにとってはありがたい存在である。

 別にゴブリンたちを応援するわけでもないが、無意味に今の環境を壊す意味もない。

 ゆえにアズラットにとって本当に危険な状況にならない限りは何もしないつもりである。


(そんなことよりも……五階層への道を見つけるのと、迷宮の構造把握が先だな)


 アズラットは四階層を探索しいつでも五階層へと行けるように準備をする。

 先へと進むのはまだ先ではあるが。

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