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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
六章 神と人と魔物
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254 時が変わりて

 それなりに時間をかけてアズラットは街道を進み、大陸間をつなぐ石柱の橋に到達する。

 その移動の間、色々な魔物に襲われたり、人と出会い少し奇妙に思われたり、<人化>を解除してスライムで移動したり。

 アズラットは人の姿でいる場合どうしても旅人としては少し怪しまれるような見た目である。

 それに人の姿をしている場合、魔物もそれなりに襲ってくる。

 そもそも、見た目だけで言えばアズラットはそう強くは見えない。

 人の姿の時もスライムの姿の時も、見ただけでその強さはわからないのである。

 ゆえに脅威ではない、手ごろな相手、獲物だと魔物が襲ってくるわけだ。

 まあ、スライムの時は別に手を出すような相手ではないと見て無視されることの方が多いわけであるが。

 もちろん一部の魔物は気配の察知など何かの方法でレベルを感知してか、警戒したり逃走したりもしているが。

 もっともそういった能力を持つ魔物は少ない。

 基本的にアズラットはそういった気配を見せないため、わかりづらいのである。

 魔物の中にはもちろん高い感知能力を持つ者もいるのだが、アズラットは大本がスライムであるためか、進化しても強さがわかりにくい。

 そういうことで、いろいろと襲われることも多いのである……まあ、大した話でもないが。

 人に関しては、やはり<人化>したアズラットの見た目の問題があるだろう。

 一般人に近く、旅をするような恰好をしていないアズラットはやはり怪しまれるのは仕方がない。

 それこそ近くの街に行く程度ならばともかく、街道を旅するとなるとそれはやはり妙だ。

 ゆえにアズラットは<人化>を解除して元のスライムの姿に戻り移動することにした。

 スライムの状態ならば基本的に無視され怪しまれることがない。

 <人化>を活用できていない点は本人にとって悔しいようだが。


(……ここまで来たはいいが、ここって前からあんな風に石柱の周りに見張りいたっけ?)


 大陸間を繋ぐ石柱の橋にたどり着いたアズラットが見たのは、橋の周りが整備されそこに見張りとして兵が経っている光景である。

 もっとも、それは石柱の橋の入口……端の部分くらいであり、石柱の橋自体がきちんとした橋になっているわけではないが。

 少なくとも以前からそうであったかはあまり覚えていないが、少なくとも見張りに引っかかった覚えはない。

 そもそも警備がしっかりしている状態の橋を渡ったような記憶はアズラットにはないはずである。

 仮にあったとしても、今ほど厳重ではない。


(いったい何があったのか……さて、<人化>をして渡るか? いや、さすがにこの橋を渡るのは人の姿でも怪しまれる可能性は高そうだな……まあ、旅人ならこの橋の距離くらい歩いて渡れるだろうけど、それでも一人で旅を、ここまでってのはやっぱり変だよな)


 やはりここでも問題になってくるのは<人化>してのアズラットの見た目。

 冒険者カードもなく、装備も碌なものではなく、見た目からしてそこまで強そうには見えず旅にも向かないような見た目。

 そんな人間が大陸の間にある橋を渡り向こう側に移動するつもりだ、と言うと一体何を目的にしてのものかと思うだろう。

 見張りとして立っている人間は基本的に個人の事情に立ち入るようなことはしない。

 しかし、怪しい人間を調査もせずに素通りさせるかというとそういうわけではない。

 もし見張りをしている人物が善人なら、はた迷惑な善意で関わってくることもあり得るだろう。

 そんなことになればアズラットとしては実に面倒な話になってくるわけである。


(……<人化>して、そこにある馬車っぽいのを使うか? 人がいくらか集まれば渡してくれるみたいだが。いや、そもそもお金がないんだけど。っていうか、見張りに関しても……もしかして通行料とかとるのか? いや、そういう様子はない、か。見張りは単に見張りか……なんで見張りが着くようになったんだろう。いつから? まあ、いつ彼らが見張りをするようになったかは知らないし、重要ではないけど……とりあえず、どうやって渡るかだな。少なくともこのまま入るって言うのは……得策ではないな。仮に入るならば夜に侵入するべきだろうけど、それでもまだ見張りがいる可能性はあるし……)


 ネクロノシアは向こう側の大陸であるため橋を渡る必要性がある。

 この場所は向こう岸と近い場所であるが、それでも結構な距離がある。

 この橋以外にも移動手段がないわけではないものの、アズラットは海の中に入るつもりはない。

 もしかしたらと周囲を見渡してみるものの、渡し船の類があるわけでもなく。

 橋以外の移動手段が今のところ見当たらない。

 ゆえに橋を渡る手段を考えるべきである。

 ただ、手段自体は思いついてもその手段を実行するのに問題はいろいろとある。


(………………夜だな。うん、夜まで待とう。夜の方が動きやすい)


 そうして夜まで待つ。もっとも夜になっても入口には見張りがいる。

 夜だろうと、むしろ夜だからこそ侵入する者がいるわけである。

 その存在を危険視し、よりしっかりと見張りが存在する。

 夜に橋の中に侵入することは無理である。

 明かりもあり、比較的明るく、入り込もうとしたところでアズラットのような存在でも見つかる可能性は高い。

 <変化>を使えばかなりその存在を抑えることはできるが、もしスキルによる探知能力があれば見つかる可能性は高い。

 むしろそういったスキルによる侵入者の探知をしていないと考える方がよくないだろう。

 アズラットには<隠蔽>のスキルがあるが、それはアズラットが動かないことが前提にある。

 ゆえに<変化>しか有効に使えず、それゆえに隠れて入り込むことはできない。


(流石に夜も橋の方は見張りがいるか……ま、それくらいなら)


 翌日。人が集まり、橋の側にある馬車が人を渡すために動き出す。


(……よし)


 その馬車に伴い、アズラットは橋へと入り込んだ。

 馬車が向こう側を渡りきるまでアズラットは共に移動する。

 お金もなく、見た目も怪しいアズラットだが……馬車の中にアズラットの姿はない。

 ではどこにいるかというと、馬車の下、床の裏側にアズラットは引っ付いていた。

 もちろん<隠蔽>を使い、その気配を探られても大丈夫なようにしている。

 それでもなんとなく察知する者はいるようだが。

 しかし、馬車の裏にいるアズラットの存在を認識できるものはおらず、そわそわする者がいながらも特に問題なく馬車は移動している。

 アズラットが夜まで待った理由は馬車の裏側に引っ付くため、馬車の近くに姿を隠しながら近づくためである。

 橋と違い、馬車の方はそれほど大きな警備はされていない。

 馬車の車体自体は人を移動させるものでしかない。

 馬は流石に警戒されているものの、馬車の車体は重要な物を載せているわけでもなく、見張りもなく置かれていたのである。

 ゆえに、アズラットはその馬車に近づき車体の裏に引っ付きながら<隠蔽>で隠れた。

 そして翌日……厳密には馬車が動き向こう側に進むまでいつまでも待つつもりであったが、翌日に馬車は動き、アズラットはそれに伴い移動した。


(向こう側に着いたら、下りてしばらく隠れつつ、警戒の薄い夜になったところで移動するか。流石に昼間っからこのあたりを歩くのはな……)


 スライムという無視されやすい存在であり、<変化>で比較的隠れやすい能力はある物の、結局は魔物である。

 堂々と移動すればその気配や行動に気づき始末しようと攻撃される可能性はある。

 まあ、攻撃されたところで死ぬような危険はないのだが、妙なスライムが見つかったと噂になれば困る。

 ゆえに隠れできれば見つからないようにしながら行動するべきであると考えそのように行動する。

 そういったことを考えているが、まずは橋を渡らなければ意味はない。

 橋を渡るのも、それなりに時間がかかる。

 馬車が移動するのを、アズラットはじっくりと待ち、そして向こう側にアズラットはたどり着く。

 そこで降り、隠れ、夜になってアズラットは端付近から離れる。

 そしてネクロノシアを目指し街道を進んだ。

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