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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
一章 スライムの迷宮生活
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028 構造の変化と多彩な危険

『四階層ですか。進むのは別に構いませんが……先の話をすると少し狡いですからあまり言いません』

『教えてくれないのか』

『……別に教えてもいいんです。ただ、それだとアズさんは面白くないのでは、と思うので。もちろんアズさんの安全優先ではありますよ? ですから危険なのだけ、熊と河馬と虎は絶対に近寄らないで下さい、とだけ教えておきます。他は……まだ何とかなると思いますので』

『そうか』


 そんな感じであっさりとアノーゼから四階層への進出の許可をもらう。

 アノーゼがアズラットに物を教えないのはそれがアズラットにとって面白くないだろうからということらしい。

 実際アノーゼはアズラットに忠告はするが、絶対に行ってはいけないと止めることは出来ていないわけである。

 アノーゼにできることは文句を言ったり忠告したりと口を出す事だけだ。

 つまり元々アノーゼに階層の移動を話す必要性は本来ないわけである。

 もっとも、先の情報などアズラットにとって重要だったり必要なことを教えてくれるので無駄と言うわけではないが。

 そうしてアズラットは四階層へと入り込む。


(わっ!?)


 四階層に入ったアズラットに上空から無数の大蝙蝠が襲い来る。

 もっともアズラットは大蝙蝠の攻撃手段では傷つかないので安全だが。


(このっ!)


 圧縮を解除し少し膨れ上がり、その体の内に大蝙蝠を飲み込む。

 大蝙蝠たちは何体か仲間を飲み込まれたのを見てすぐにアズラットから離れ、少し離れた所で飛んでいた。

 しかしアズラットに対し有効な攻撃手段がないだろうと判断したためかすぐにアズラットから離れ遠くへと飛んでいく。


(まさかいきなり襲われることになるとか……まあ、大丈夫だったけど)


 階層を移動してすぐに襲われることになるとはアズラットも思わなかった。

 完全な不意打ちだったわけである。

 他の階層でも次の階層へ移動してすぐに魔物に会うことはあっても、ここまで本当に入ってすぐと言うことではなかった。


(さて、まずはスライム穴を探そう。しかし、本当に構造が変わったな)


 迷宮の構造はそれまでの遺跡のような構造とは大きく変わっていた。

 洞窟のような構造をしている。それも人為的なものではない自然発生したような洞窟の構造を。

 天井は高く、道も作ったような道ではなくただ開けているだけのような構造をしている。

 稀に草が生えている所もある。遺跡の構造のこれまでの階層では見られない物だ。

 石や岩が落ちていたり、また虫も多くみられる。

 迷宮内部にこれだけの物が見られるとはアズラットは思わなかった。

 今までは妙に整理されたような構造が多く、落ちている物もほとんどなかった。


(……スライムがあまりいないっぽいのか?)


 全くいないと言うわけではない。

 スライム穴も普通に存在するし、スライムも普通に存在する。

 しかし、スライム穴と呼ばれるような穴はかなり少ない。

 今までは遺跡の壁にそういう穴が用意されていたが、四階層では洞窟の構造でそういう人為的な穴が存在しない。

 自然にできたうまく隠れられるような位置か、自分で掘り出すしかない。


(<隠蔽>を得たのはかなりの幸運かな? いや、天井付近に張り付くなり回避手段はありそうだ。そういえば光はこれまでとは違って結構暗いな)


 それまでの遺跡の構造とは違い、四階層の洞窟構造では発光量が違っている。

 遺跡では壁や天井が光っており、全体の光量がそれなりにあり、松明なんかもあったりしたが、四階層ではそれらがない。

 所々で強い光を放つ部分があり、ヒカリゴケのようなものもあるが、かなり光量が少なく暗くなっている場所もある。

 そういうこともあってアズラットにとっても<隠蔽>の効果を発揮しやすい場所でもある。


(っと!? 何だあれ!?)


 ざざざっと床を動く影。無数の黒い影がアズラットへと向かってくる。


(ぬわーっ!?)


 その影の目的はアズラットではないようだ。

 むしろアズラットは道すがら存在しているだけのものでしかない。

 とは言っても、それらにとってはアズラットですら食料扱いである。

 その影たちは大鼠、その集団で群れともいえる存在であった。


(噛みつかれる噛みつかれる! まあ、痛くはないしダメージもないけども! 囲まれると怖いなこれ!?)


 大鼠たちに襲われてもアズラットにはダメージがない。

 これは大蝙蝠も同じだが、単純に相手の戦闘能力が低いせいだ。

 しかし、いくら危険がないとは言っても周りが大鼠に囲まれそれが自分に向かって襲ってくるのである。

 ダメージがなくとも怖いものは怖い。恐ろしいものは恐ろしい。

 実際の危険と感情は別物である。


(<圧縮>解除っ!)


 先ほどの大蝙蝠の時と同じ、大鼠にも圧縮を解除してそれらを飲み込む。

 流石に全部が全部捕まると言うわけではなくアズラットから逃れるものも多いが、それなりの数を捕まえる。

 そして反撃して来たアズラットを避けるようにして移動していき、大鼠の群れはアズラットを無視し先へと向かっていった。


(ふう……さっきもそうだけど、群ればかりか? 大蝙蝠も大鼠も群れるのか。まあ、俺だからそれほど危険ではなかったけど普通ならあれに襲われたら結構やばそうだな。生身の人間なら俺みたいにダメージないとかそういうことはないだろうし。っていうかあの小さい集団に対抗する手ってあるのか?)


 先ほど襲われた経験からアズラットはそう言ったことを考える。

 それくらいに大きな動物のような魔物の群れは驚異的である。そしてそれが普通に存在するのだ。

 それだけでも四階層の危険が分かると言うものだ。

 そもそも、アノーゼはそれらに注意しろと言うことはなかった。

 つまりアノーゼにとってはアズラットにとってそれらが危険であるということはないと思っているのである。

 実際に危険がなかったのだからそれは正しいと言えるのだが。


(……熊に河馬に虎? それが危険なんだっけ? あれよりも危険なのか。まあ、確かにそうかもしれないが……なんか納得いかない)


 生物の強さと言うのは多種多様である。

 個の強さが大きい物もいれば、群れの強さが大きい物もいる。


(おおっ? ちょ、人!? いや、なんだこれ? 地面を這って……腐ってやがる。遅いけど。ゾンビ? 元人なのかなこれ……)


 アズラットに向かってくる人の影。ただしそれは地面を這って動いている。

 俗にいう動く屍、ゾンビである。人のゾンビ。


(いろいろいるな、ここ……鼠、蝙蝠、ゾンビに……アノーゼから言われていた熊に河馬に虎? とりあえずゾンビから逃げよう)


 流石にゾンビを食べる気にはならない。

 アズラットが腐っているもので害を受けないにしても。


(どおっ!?)


 ゾンビから逃げていると、突然アズラットを掴む何かがいた。

 そしてそれはアズラットを壁へと引っ張っていく。

 そしてアズラットはその引っ張っていく状況のまま、何かに食われてしまう。


(口の中っ!? こなくそっ!)


 <圧縮>の解除。それにより自分を食べた存在の口の中を広げ弾けさせる。

 そしてその存在を見ることができた。


(蜥蜴……? 壁の色に近い体の色、迷彩色かこれ。っていうか、蜥蜴と言うよりはカメレオンなのかこれ?)


 さらに追加された四階層の魔物。

 三階層まで五種類にも満たない数しかいなかったのに、四階層はその倍近くいる。

 これでまだ遭っていない魔物、スライム、ゴブリンといるのだからこの階層にいる魔物の種類は結構な数になる。


(……ちょっと来るの早かったかな?)


 そうアズラットが思うくらいに四階層は多種多様の存在が住む大変な環境であった。

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