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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
六章 神と人と魔物
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249 とりあえず歩を進める

 山の頂上からの光景は中々に綺麗な物。

 しかし、風景を見ること自体はそれほど重要ではない。

 アズラットにとって重要なことは現状の把握……つまり迷宮を作る前とどれほどの違いがあるか。

 そもそもアズラットのいた迷宮は表に出始めてまだあまり時間が経っていない。

 アズラットが起きる時期は迷宮が外に露出した時期であり、アズラットはすぐに目覚めたわけではない。

 それゆえにアズラットが迷宮から出てきた時期はそれなりに後であるが、それでもあまり時が過ぎたわけではない。

 なので近隣にここの迷宮からの資源を目当てにするような街、中継地のようなものは存在しない。

 まあ、そもそもここはスライムしか出てこない迷宮なわけであるため、人が来れるようにはしなければならない。

 そういう点では道はあるし冒険者ギルドの出張所に近い簡易的な施設はある。

 とはいえ、本当に簡易的でここに来るような冒険者が期待できないためまともな施設はほとんどない。

 当然誰も来ないような場所に行くための馬車なども少なく、道の整備はほぼなされず。

 一応兵士が来るということで最低限はされているが、

 それでもやはり来にくいし周辺の整理が成されていない。

 そういう点ではアズラットの作った迷宮のあるこの山は未だに自然でいっぱい、と言えるだろう。

 光景として、アズラットがかつてこの地に来た時の光景とはそれほど大きくは変わらないだろうという状態だ。

 いや、厳密にアズラットがその時のことを覚えているわけではないし、上から見た光景を知っているわけではない。

 当時アズラットはここまで登ってきていなかったのだからしかたがない。

 とはいえ、おおまかにならばわかる。

 人の手があまり入っておらず、特に変わりのない光景である。

 まあ、自然の成長などで変化はあるわけだが。

 そもそも人の来やすい場所ではないから仕方がない。

 ともかく特に変わりのない光景である……周囲の状況が変わっていない、というのはありがたい話である。


(まあ、どれだけの年月が経ったかなんてのはわからないけどな……さて、どうする? 今後……ネクロノシアに直で向かってもいいが、その前にどう行動するべきか……<人化>も使えるわけだし)


 現在のアズラットはスキルに<人化>というものが存在する。

 それゆえに人里、村や街などに入ることができる。

 もちろんそのすべてが安全というわけではない。

 冒険者の中には魔物を探知するスキルを持っている者がおり、それらに見つかれば攻撃される危険はある。

 聖国など、魔物に対する対応をとっている国や都市、街などがあってもおかしくはない。

 すべての国で魔物に対する適切な対処がされているわけではないが、個人やその所属コミュニティの範囲でなされていることはある。

 まあ、そもそもスライムや大鼠、大蝙蝠など各地で脅威になり得ないような弱い魔物は何処にでも存在する。

 それに一部の空を飛ぶ魔物などは街に近づくこともある。

 エルフなども扱いとしては魔物に近しいもので、それに引っかかる可能性もある。

 そういうこともあり、どこでも完璧な対応が成されているとは限らない。

 例えばアルガンドならば亜人や人型の魔物はそれなりに存在し、その関係でそういった対応はされていないところが多い。

 とはいえ、やはり冒険者などが存在すればその存在を感知される危険はある。

 そういう意味では<人化>は危険もある。

 しかし、今まではただスライムの時に隠れて侵入するだけだった人里の中に入ることができるのは魅力である。

 アズラット自身は今まで興味のあった武器や防具、様々な書物などを街中で購入することができればかなりありがたい。

 それに敵地ではあるが、冒険者ギルドで冒険者という存在がどういう物なのかを知りたいという欲求もある。

 これは別に敵情視察というわけではなく、単純に興味の問題である。

 人の姿をとることができ、外面だけならばスキルなどでの感知や探知以外では魔物であることがばれない。

 であれば、アズラットにとってはとても都合がいいわけである。

 まあ、そこまでして人里に入る必要性があるかはわからないが。


(ネクロノシアに入るには……一応人里に入って人間の生活の観察はしておいた方がいいか。できれば冒険者カードのような身分証明書が欲しいし、武器や防具……うん、冒険者の振りをするためのものはあった方がいいかな? 他にも食料とか……いや、必要ではないかもしれないけど。ん? いや、クルシェは別に要らないか。まあ、色々とみて回って、それからネクロノシアに行ってもいいよな……いや、やっぱりすぐに会いに行った方がいいか? っていうか、向こうはこちらのことをはわかってるのか? 一応こちらも向こうが生きてるかな、程度の感じは受けているし、向こうもこちらの存在は気づいていると思うが……まあ、そこは探して見つけるまではわからないか。でもいなかったらみつからないしなあ……何か連絡を取れた方がいいか? やっぱり冒険者カードとかあった方が都合がいい? 依頼とかを利用するとか……うーん……クルシェが人里にいる可能性。ありえなくはない。ヴァンパイアだってバレる危険もある、バレていないなら人里の方が活動しやすい……うーん、まあいろいろと探してやってみるまではわからないかなあ……)


 色々な事情を考慮すると、やはり面倒な話になってくる。

 ある程度人里に入り情報収集をした方がいいのではないか?

 例えばクルシェが今まで生きているのならば、その行動が何か伝聞で伝わっているかもしれない。

 ネクロノシアのヴァンパイアの事件はどれほどまで広まり、どういう話になっているのか。

 また、クルシェ自身がその後起こした出来事が伝わっている可能性。

 その名前がどこかに残っているかもしれない。

 そしてその噂を総合すればどこにクルシェがいるか、それがわかるかもしれない。

 あるいは今も生きているかもしれないネーデの情報もあるかもしれない。

 まあ、こちらはあまり期待はしていないのだが。

 それに他にも、自分の正体を隠す、人間に見せかけ他にばれにくくする、様々な形で人里での情報収集や買い物は重要になるだろう。

 もし冒険者として登録できれば、場合によっては迷宮などでもある程度自由に行動できるかもしれない。

 もっともそこはあまり期待していないともいえる。そういった点においてはアズラットの扱いが面倒な形になるからだ。

 とはいえ、冒険者登録をしてみたいという気持ちもあるので人里で冒険者ギルドに入る気は満々なわけだが。

 問題はその知の住人でもないのにその場所で冒険者登録する理由、見かけ、場合によってはレベルやスキル、強さの問題もある。

 業……称号の点でもアズラットは異常である。

 スキルも数が多く、それがバレればどう見られるかもわからない。

 特にレベルはアズラットのレベルは世界最高峰と言ってもいいくらいであり、人間にほぼ同じレベル帯の存在はいない。

 色々と異常と言ってもいいアズラットがまともに登録できるかと言われると少し怪しい所である。

 換金でもいきなり財宝の類を持ってきた場合どうなるか、と思うところである。

 まあ、どう考えたところでやらない理由はないのであるが。


(とりあえず…………あの遠くに見えている街に行ってみるか。山を下りなきゃいけないなあ……)


 山の頂上から見る光景は変わりないが、それでも遠方に見える街の存在はわかる。

 かつてあんな所に街はあっただろうか、街ではなく村か何かはあったかもしれない。

 そんなあまり記憶にない光景。

 そもそもアズラットは迷宮を探している間、周囲のことはあまり気にしていない。

 自分が迷宮を作る場所周辺は多少気にしたが、道中に何があったかはどうでもいいことで気にしていなかったかもしれない。

 そんな物覚えの悪さ、長い間眠っていたところから起きた寝起きともいえる状況からか、考えが割と適当である。

 まあ、今までもそんな感じであったし、と特に気にする様子もなく、アズラットは山を下りて目的地へと向かうのであった。

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