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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
六章 神と人と魔物
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248 時は流れても世界は変わらず

(…………あれ、いいのか? いやまああこちらも<変化>も使って隠れて外に出てきたからわからなかったと言われればそれまで何だけどな? 見張りなんだからもう少ししっかりと見張りをしてもらいたいものだ……この迷宮がスライムばかりしか存在せず、何かあっても罠程度で特に他の魔物が出てこない、そんな迷宮だとしても……場合によってはビッグスライムとか進化したスライムが出てくる可能性もあるんじゃないか? まあ、ヒュージはともかくビッグならまだそれ相応に対処できるのかもしれないけど……他にもいろいろと危険はありそうな気もするんだけどな)


 厳密にはこの迷宮には本当にスライムしか存在しない、というわけではない。

 一部の階層の一部の場所、特定の空間域においてわずかながら他の魔物が出るところがないわけではない。

 ただ、この迷宮のスライムはただでさえ食べるものに飢えているため、同種でない魔物を見つければそれに一気に殺到する。

 そのため現れた瞬間にその魔物が消える、という事態になるためなかなかその魔物を見ることができない。

 それゆえにここに挑む冒険者も進んできたアズラットもスライムしか出ないと勘違いしている。

 まあ、この迷宮のスライムを完全駆逐でもしない限り魔物と出会うようなこともないだろう。

 それに出てくる魔物は餌になるくらい程度で強さとしては大したものではなく、素材に関しても特に価値はない。

 見つけたところでその後見つけられるようなこともないのだから情報自体に大したことがないともいえる。


(とりあえず…………外に出たけどどうしようか? このままここの迷宮につながる道を進むか? いや、さすがにな……<変化>で見た目を変える、<隠蔽>で隠れる、<人化>を使う……まあ、どれであっても道を通れば人に出会う可能性はある。一応少ないとはいえここの迷宮に攻略しにくる冒険者もいるわけだし。できれば道は通らずに整備されていない箇所から山を下りるのが一番か)


 基本的にアズラットがこの場所にいる理由はない。

 迷宮主なのだから迷宮にいる方がむしろ正しいくらいだろう。

 まあ、外に出てきた以上迷宮にいるつもりはないということだからさっさと迷宮から離れるべきなのだが。

 問題は離れるにしても、どこに行くか。離れること自体に異論はないわけである。

 現在アズラットは今から何をしよう、と明確には決まっていない状況にある。

 色々とやるべきこと、やりたいこと、どうするか考えていることはないわけではないが、具体的にこれをするとは決まっていない。

 なのですぐに適当に行動すると、何かしようとしたこととは別方向のことをやっている危険性がある。

 まあ、そのやっていることを放り出してその目的のことをすればいいわけだが、それは流石に無責任。

 アズラットがするようなこと、というのは特にないかもしれないが、それでもそういったことは考えておくべきである。

 だから今すぐ思いついたままに行動するのはどうか、と思っている。

 いつもは大体適当に行動しているような気もするが。


(アノーゼに相談できればよかったんだが……今はできないしな)


 アズラットは今後のこと、己の行動を決める際にはそれなりにアノーゼに相談して決めていた。

 しかし今は彼女との会話ができない状況にあり、アズラットだけで決めなければいけない。

 それゆえに考える必要がある。

 まあ、アノーゼがいなくともアズラットは自分で行動できないわけではないだろう。

 だがやはり相談しいろいろな意見を聞けること、自分一人では思いつかないが話し合いをしているときに思いつくこともある。

 そういう点ではやはり色々と利点があったわけだが、まあ使えないのでは仕方がない。

 なのでアズラットは今後どうするかを考えている。


(……とりあえず、まず確実にするべきことと言えば、あいつ……クルシェと合流することか? まあ、クルシェ自身は生きている……んだよな? ヴァンパイアだから寿命は恐らくないとは思うが……光で死んでしまっている可能性もあるし、冒険者とかに狩られているとかもある。多分生きているとは思うんだけど、あまり<ステータス>の表記はあてにならない可能性もあるし)


 アズラットはクルシェとの間に契約を持ち、そのつながりを持っている。

 クルシェ側はそのつながりが明確だが、アズラット側は微妙な感じだ。

 まあ、意識すればその存在はなんとなく感じられるだろう。

 それがある以上一応はクルシェの生存は信頼できるもの、なのだが……<ステータス>に残っていたもう一つの表記が疑惑を招いている。

 それはネーデとの契約である。ネーデは人間である以上既に死んでいる。

 ならば契約が残っているのはおかしい。

 まあ、これに関しては契約を解除せずに来てしまったことや、契約したまま迷宮主となったことなどが影響している可能性もある。

 そもそもステータスにおいて称号……業の欄に載っている契約が契約を解除したから消えるとも限らない。

 これに関してはいろいろな意味で試していないアズラットの検証不足だが、必要もなかったし試す相手もいなかったせいであるともいえるだろう。

 仮にネーデが生きていたとしても、そもそもどこにいるかもわからない。

 クルシェも同様でどこにいるかわからない。

 結局二人が生きている可能性がある、というのがわかったくらいであり、会いに行くにしてもまずどこにいるかを探さなければいけない。

 ただ、クルシェに関しては一応可能性の候補となる場所がある。

 アズラットとしてはそちらに向かうつもりではあった。


(………………ふむ、クルシェのいたネクロノシアに向かうのはとりあえず確定として。まあ、クルシェが今もいるかもわからないか。そもそも都市自体が大きく変わっている可能性も……っていうか、そもそも今はいつだ? 何年何月何時何分? いや、そこまで正確な情報は求めないけど、せめて……俺が迷宮を作ることになってから何年たっているかは知りたいところだな。もっとも、この世界の年月がはっきりわかるかと言えば怪しいが……)


 アズラットがいつ眠りについたのか、そもそもアズラットがいつ生きていたのか、というのはわからない。

 クルシェと一緒に活動している間に調べればよかったのだが、クルシェと一緒にいるときはそんな余裕もなかった。

 そもそも常にどたばたとしていた感じでいろいろと調べる余裕がなかったともいえる。

 仮に調べたところでどれほどの情報を調べられたかも不明。

 まあ、どれくらい寝ていたかは重要ではない。

 変化がどの程度か、くらいわかればアズラットにはそれでいいだろう。

 そもそもアズラットは何年も生きていたわけではないのだから。


(とりあえず、周囲の様子を見るために……上に登るか。なんか山登りとかしてばっかりだな……って言うかここもけっこうな高さなんだけど)


 結構な高さ、といっても山の頂上ではなく、周囲の環境のため遠くまで見渡すのは難しい。

 そういうことでアズラットは山の頂上へと登る。ここまでくる冒険者は少なく、登山者はいない。

 そもそもこの世界において魔物の危険があるため登山ということ自体がほとんど行われないので仕方がない話である。

 そういう意味ではアズラットはまともに登山をしたことのある珍しい存在であると言えるかもしれない。まあ、方法がまともではないが。


(っと…………ふう。なんというか、時間は経ったと思うけど、世界の様子は特に変わらないな……)


 頂上まで来てみる光景。それは特にこれと言って大きく変わらない。

 世界は大きく変化はしていない。道ができたり、周囲の様子が変わったりと変化がないわけではないだろう。

 だが、たとえどれだけ時間が変わっても、世界は大きく変わらない。

 そこにアズラットは少し安心していた。

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