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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
六章 神と人と魔物
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242 人化の検証

「さて…………とりあえずは現状確認、っていうか、今の俺の状態って人化を使っている状態なんだよな?」


 人間的でありながら、どこかスライムのような状態である人間形態をとっているアズラット。

 これはアズラットが寝ている状態にあるときからなっており、アズラットとしてはかなり戸惑いのある状態である。

 スキルである以上一生人間形態というわけではないかもしれないが、それでも不安はある。


「んー……とりあえず……<人化>解除、っと……おお?」(っと、これで元に戻るのか。任意での解除は可能、ってことか。そもそもどうやってあの姿になったかも不明だけど……)


 まず最初に自分が<人化>している状態を解除してみる。

 それはあっさりと成功し、スライムの姿に戻る。

 戻る際には人間の体がドロリと溶け、スライムに戻るかのような形での変化だった。


(これは……なんというか、魔法的な力で人間という形態をとるのではなく、スライムという存在が人間の姿を形作っているだけ……なのかな? なんというか、スライムがこうグネグネと体の形を変えて、人間の形を作り上げるような……でも形状の変化というには少々異質だな。そもそも<変化>のスキルを使ってもあそこまでの見た目の変化はできないはず……移動もやっぱり人間的だったような……とりあえず、もう一度スキルを使って人間の姿をとってみるか?)


 アズラットが<人化>を解除し元の形に戻ってみた感想は形を変えるようなタイプの変化に近いということである。

 それ自体はアズラットは以前からある程度はできていた。

 特に<圧縮>を解除し、大きくなった時に体の一部を伸ばすような変化など。

 しかし<人化>はそれらよりもより精密であり、指先のような細かい挙動、人間の目などの再現などただの形態変化では不可能な点もある。

 そういった点では明らかに<変化>や体を移動させての姿を形どる者とは違うため、<人化>特有の物なのでは、と思う。

 それを確かめるためアズラットは再び<人化>のスキルを使用する。


「……っと。なんというか、凄いなこれ。意識して人の形にしなくてもちゃんと人間の体になってる。目もあるし、鼻の中に穴、口の中もちゃんと再現はされてる……でも形だけかな? 目に触っても痛くはないし、口の中に唾液は出ない。指とかを動かす様は人間的だけど、感覚は人間的ではないな。触覚とか、味覚とか、嗅覚とか? 移動は……普通に可能、と。歩いたりすることには問題がない。だけど……なんだろう、感覚は人間じゃなくて完璧にスライムだな。やっぱり魔法的な感じでの人化ではなく、この形にしている感じだな。でも、ちゃんと表面上は人間に見える……そういう点は他にはまねできないか。それにこの形にほぼ固定されている感じだし」


 魔法的な変化、完璧に人間という存在に変わるような変化ではなく、形態として完璧に人の形をとるというのが確認した限りの結果。

 重要なのは人間という形でありながら、人間としての機能は持たず元のスライムとほとんど変わらない機能であるということ。


「例えば……っと、やっぱり体を伸ばすことはできる、と。っていうかこれ<圧縮>状態はどうなってるんだ……? いや、待て、他のスキルは? 自然に振動感知能力が使えるし空間的な認識もできるけど……スキルの使い勝手はどうなってる?」


 <跳躍>を使い試すアズラット。スキルの使い勝手は元々の時、スライムであった頃と変わらない。

 まあ、人間の形での行動であるため、スライムであったときの挙動とは違うものの、基本的には問題ない。


「っと。人間の体は問題なく使える、と。スキルも……<跳躍>は問題ない。動かし方はやっぱり人間の記憶……はないけど、人間であった頃の知識があるからか大丈夫な感じ? いや、そこはなんか少し違うかも? 本能的に動ける感じかな? まあスライムだから呼吸はいらないか……触れている感覚的に、触角はある。人間ではなくスライムだけど。じゃあ、穴を開けてみるとか……いや、ちょっと怖いなー。切断、斬り落とし……体の分離とか延長は? <同化>のスキル、<加速>のスキル、<変化>のスキル…………やっぱりスキルの使用に関わる問題は今のところなし……とはいえ、スライムの時ほどの自由はない、か? 特に<同化>や<変化>は少し影響力が変わってくる感じか? <穿孔>……は、指先や足先、身体のとがった部分が影響範囲っぽい? ここ迷宮だからそのあたり試せないな……まあ、後で何かで試してみるとして……」


 基本的に人の形をしているときでもスキルは使える様子である。

 <人化>のスキルを使っている間は他のスキルが使えないということもない。

 ただ、スライムであったときは使いやすい体の性質を変化させる<変化>のスキルは体内の状態は変化するがその影響が表面に現れない。

 硬くするなどの変化はある程度は現れるのだが、酸性性質や粘性性質の付与や強化などは表面上にはでない。

 そこは<人化>により人間になっている影響だろう。

 同様に<同化>も作用が変化している。物に触れていない場合に<同化>できない。

 逆に先ほど試した<跳躍>は明らかにスライム時よりなめらかで高高度への<跳躍>が可能。<穿孔>は体の先でないとできないらしく自由性が低い。

 <知覚>や<隠蔽>などのスキルは変化がない。

 まあ、後者はアズラットの存在を発見する者がいなければわからないのだが。


「全部のスキルの確認はちょっと無理か……まあ、相手がいないとできないスキルもあるし、確認できるものだけしておけばいい。まあ、スキルに関してはこんなところか……おおよその確認はできたか」


 まとめると<人化>のスキルは特にこれと言って問題なく使用と解除が可能。

 性質的には形態の変化に近いが表面的にはほぼ人間に見える。

 移動などの行動的な性能は人間に近いが、身体感覚などの感覚器の部分はほぼスライムであり、肉体器官は疑似的なものに過ぎない。

 そして表面はほぼ人間だが内側はほぼスライムと言っていい状態である。

 完璧な人間への変化とは違うものである。

 スキルを使用している間は他のスキルが使えないということはないが、スライムであったときとは違う性質を持つスキルもある。

 効果はそれぞれのスキルによって変化。

 人間とスライムでは人間の姿の時により高い効果を発揮スキルもある。

 一方でスライムの性質的に特有な物や、スライムでは自由性の効くスキルであるが人の姿では自由が利かないスキルもある。

 と、おおよそはこんな感じであるとまとめられる。

 基本的に<人化>のスキル自体には損がないと言える。


「……なによりも人間社会に入り込みやすいのはありがたいかな?」


 今までアズラットはスライムの姿で街の中に入り込んだりしていたが、それでは見つかった時が危険だ。

 まあ、襲われても危険はないが、逃げるのに手間がかかるし情報収集も聞き耳を立てるくらいしかできない。

 今のアズラットの姿であれば、他の人間に紛れ話を聞くくらいは余裕で出来るだろう。


「でもこれってなんで服まで人化で作られてるんだろう……いや、便利と言えば便利なんだけど……まあ、この体はスライムの体を変化させたものだから服装も自由自在ってのはわかるけどさ……」


 <人化>の謎の一つは最初から服まで完璧に作られている点。

 しかもアズラットの知識にはない何かの服装。

 服装は自由自在に決められないのか、と思い<人化>のスキルを解除、そしてイメージを固め服装を決めて再使用。


「……服は一応自由自在か? でも問題はこれを脱げるかどうかかな……まあ、そこは着替えとかせず服のイメージだけ持っていればいいとか、あるいは服なしで<人化>して服は別に用意するとか……<同化>を使うならある程度着やすいかな?」


 将来的に人間社会に溶け込む際、服はどうするかとこの時点でアズラットはいろいろと考えている。

 まあ、アズラットとしては人間寄りの部分があり、いろいろな意味で彼らの社会に入り込みたいところがあるのだろう。

 もっともそれがうまくいくかは現状では不明である。

 そもそも今彼は迷宮にいるのでそこからまずどうにかしないといけないだろう。

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