表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
五章 奇縁の道程
237/356

229 決行日

 都市庁舎の中を捜索し、ヴァンパイアの寝所を探り当てる。

 事前にある程度見当はつけていたので難しくはない。

 問題はその後。場所を把握しその後どうするか。


(まあ、さすがに外に出よう……夜に戦うことになるのはちょっと。まあ隠れて昼間に挑みかかるのもありだが。それでも完璧にうまくいくとは思えないし……できれば弱体化を図りたいところであはある。うまくいくかわからないが太陽が昇った時に日の光が入るようにしたいところだな)


 ヴァンパイアは日光に弱い。

 もっともそういった細かい事情に関してアズラットは己の知識でしか把握できない。

 まあ、この知識に関しては恐らく生態的に間違っていないだろう。

 アズラットが森で出会ったヴァンパイアは日の光を避けるように黒いローブを纏っていたのだから。

 単にその正体がばれないように、というのもあるかもしれないがヴァンパイアは見た目だけなら人間的。

 ちょっと見たくらいではヴァンパイアであることはばれない。

 まあ、多少怪しまれる可能性はある。

 それを危惧した、と考えるよりはやはり日の光に弱いゆえにそうしたと考えるのがいいだろう。

 そもそもヴァンパイアの行動を見れば明らかに夜に活動し日光を避けている。

 まあ、そういった内容に関して改めて言う必然性もないだろう。細かい話は置いておく。

 アズラットの考えていることは建物を破損させ日の光を入れ、それによるヴァンパイアの弱体化。

 いくらヴァンパイアでも日光を浴びたら一瞬で灰になるわけではない。

 しかし、あまり長い時間日の下にいれるわけでもない。

 つまり太陽の光を取り入れたところからは逃げねばならず、また日の光によりダメージを受ける。

 そして日の光の下には入りづらい。多少ダメージを受けてもいいならば問題ない所であるが。


(場所はわかったし……問題は建物を破壊して侵入する手段、タイミング、時期、まあいろいろあるけど……そもそもこの都市庁舎自体結構作りは頑丈だからなあ。まあ、破壊すること自体は難しくない。できれば先にある程度弱くして一気に、というのがいいかな?)


 アズラットはスライムなのであらゆる物を食することができる。

 まあ、迷宮のような例外はあるが。

 なので建物の一部分を食することでその部分の厚みを変化させ、ある程度簡単に破壊できるようにすることが可能である。

 まあ、多少時間はかかるしやり方を考えてやらないといけないわけであるが。

 ともかく、アズラットは外に出たヴァンパイアが戻ってくる前に外に出る……正面じゃなく、良さげな場所から。


(地下の隠し通路は……いや、さすがに使うとバレるか? <知覚>でとりあえずまだヴァンパイアは帰ってきてないようだし……天井付近から這って外に出るか? っていうかこれ、外から入るときも同じようにできたんじゃ……いや、まあいいか。とりあえず何でもいいから外に出れれば)


 と、割と雑に考えつつ外に出る。結果としてバレずに外に出ることができればそれでいい。

 そうして外に出たアズラットは<知覚>でさらなる情報収集をしつつ、決定的な戦いの日に向けて行動を開始する。






 そういった感じでアズラットはいろいろと準備をした。

 基本的には建物の状態確認、ヴァンパイアの行動の確認など。

 また兵士たちの行動スケジュールや、監視の状況に関しても。

 存在がばれていると面倒だし、行動がばれているともっと面倒だからだ。

 もっともそういった心配は少々心配しすぎ、といったところである。

 アズラット自体見た目はスライムであるため例え発見されたとしても警戒されることはない。

 そもそもアズラットは見つからないように行動することを心がけているので発見されることはほとんどない。

 今の所アズラットは時折上空にいる蝙蝠に見つかるくらい。

 それもできれば見つからないように心掛けているのでほとんど見つからない。

 見つかったところで蝙蝠からすれば単なるスライムでしかない。なので基本的には無視される。

 仮にこれが人間並みの知能があったところでアズラットの存在をどれだけ警戒するかと言われればほぼ警戒しない。

 それくらいにアズラット……スライムという存在は様々な相手に侮られる立場なのである。

 まあ、そのおかげでほぼ無視され己の行動が邪魔されることなく楽に情報収集できるのはありがたいことだろう。


(っと、やっぱり高いな……蝙蝠とかはいないようで安心だ。っていうか、あの蝙蝠たち普段何処にいるんだ? まあ真昼間から飛び回っている様子だし、案外ほとんど休むことなくブラック的なやり方で働かされているんだろうか……単にここじゃなくてもっといいところにいるとか、かな? まあここだと住み心地がいいとは言えないだろうし。ここから見る景色はそれなりに良い感じかな。ネクロノシアの景色が見渡せる。都市庁舎もしっかりと見える)


 アズラットは現在高所にいる。

 とは言ってもネクロノシアから離れた場所ではない。

 ネクロノシア内の最も高い所である。

 時計塔の街、観光目的でも時計塔という他に類を見ない巨大建築、そこに登ることが可能である。

 まあ、現在では観光名所としての機能がネクロノシアにはなく、その時計塔も閑古鳥が鳴いているわけであるが。

 それゆえに誰もいないところを登れたので実に平和的だったともいえる。

 そもそもアズラットの場合普通に上らずとも、<変化>を使いながら外壁を登ってもいいわけであるが。


(さて……<跳躍>の感じも確認しておくとして、<空中跳躍>があるからそこまで心配しなくてもいいか? <同化>……は、もう少し待つ。出来れば<同化>の速度も確認したほうがいいか。最悪<同化>はせずに何とか抱えて跳ぶしかないか……)


 なぜアズラットがそんな時計塔の頂上という場所に登ったのか。当然観光目的ではない。

 アズラットの目的はその場所から一直線に都市庁舎に落ちること。

 それによるヴァンパイアの寝室上部の破壊である。

 この日は夜は新月になるだろう日であり、満月と違い最も月の力が弱まる日である。

 ヴァンパイアに月がどのような影響をもたらすかは不明だが、満月に外に出ることから何か意味があるのは確実。

 ゆえにその逆の新月は最も力が弱まるのではと考えている。

 そのうえで昼間に襲撃をかける。

 昼間であれば外に出ることはできない。

 建物内でならばある程度自由に行動できるだろうが、逃げを封じられるのは大きい。

 単純に攻め込むだけならばいくらでもやり様があるが、できれば不意打ち気味に。

 そしてある程度、魔物同士の戦いが起こったとは思わせない雰囲気にしたい。

 そう考え、この時計塔に上っている。

 時計塔は時計塔という時間を知らせるわかりやすいものであるが、時計というもの以外にも音で時間を知らせる鐘もある。

 当然その鐘は街に音を響かせるために大きく作られている。

 それが都市庁舎に落ちてきたならば、天井を突き破るくらいできる。

 一種の天罰じみた雰囲気を作る、そして単純に天井の被害を大きくし入る日の光を多くする。

 それが目的である。まあ、うまくいくかは一発勝負なのでうまくいかなくとも仕方がない。

 その時は<穿孔>などを使い無理やり破壊するしかない。

 別にうまくいかずとも、ある程度成功すればそれでいい程度の考えである。


(よっと……<同化>で取り込んで……やっぱり取り込む速度、外に出す速度は大きさが大きいときついか。っていうか、そもそも俺の大きさから考えれば何かおかしい感じだもんな。どこに取り込んでいるのか……スキルは謎だな)


 アズラットの大きさを考えると結構な大きさの鐘を取り込めるのはおかしい。

 まあ、元の大きさならばできるのであるが。

 それにしてもあまりにも奇妙に過ぎる、傍から見れば異常な光景にしか見えないわけである。

 まあ、それは別段重要なことでもない。重要なのはこれからの行動が成功するかどうか。


(さあて……準備もしっかりしたし、あとは……あの糞野郎をぶっ潰すのみか。この鐘で潰れてくれれば手っ取り早いけど、ヴァンパイアだしそう都合よくはいかないかな? まあ、とりあえず、やってみようか!)


 ある程度大きくなり、鐘をとりこんだままアズラットは都市庁舎へと跳び立つ。

 跳んだ後は鐘を下に出し、その重さにつられてついていくようにし、時計塔にあった大きな鐘が、都市庁舎の屋根にぶつかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ