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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
五章 奇縁の道程
231/356

223 山登りの先に

 次なる旅の目的はスキルの神、天使でもあるアノーゼからの頼み事を受け、ネクロノシアへ。

 まあ、それに関しては別にアズラットとしては構わないところであった。

 アノーゼからの頼み事、本気でアノーゼとして頼みたいことであるならば別にその話を受けるのに躊躇はない。

 ただ、ネクロノシアは結構遠い。

 旅商人との移動はそもそもネクロノシアとは別方面のルートを進んでいた。

 つまり今アズラットのいる場所からネクロノシアに行くとなると結構面倒な道のりになる。

 特に今はアズラットにとってはいろいろと厄介なことが起きる可能性もある。

 旅商人に己の正体がばれた。

 もしかしたら危険なスライムとして指名手配のようなことがされているかもしれない。

 そう考えると夜とはいえ街道は通りづらい。そもそも今あまり人と遭遇したくはない。

 そういうことで、アズラットは山越えを行うこととなった。


『なんでこう、山を登らなければならないんだ……』

『別にいいじゃないですか。<知覚>でここに幾らかアンデッドがいるのは解っているでしょう?』

『……まあな』

『ヴァンパイアさえ倒せば恐らくほとんどのアンデッドは脅威になり得ません。従属ヴァンパイアに関してはいろいろと不安は残りますが、彼ら彼女らは無理やりヴァンパイアにされた存在です。生き延びるためならば食事目的に血を吸う可能性はありますが、その多くはそれほどの強さはありません。まあ、あまり暴れられると困るのでできれば対処しておいた方がいいわけですが、必須ではないでしょう。ネクロノシアにいるあれと比べると冒険者でも問題なく対処できるでしょうし』


 アズラットは<知覚>のスキルでアズラットが入り込んだ森の先にある山にアンデッドがいるのを把握している。

 というのも、そもそもアズラットと旅商人たちが出会ったアンデッドたちがどこから来たのか、という話になる。

 ネクロノシアにヴァンパイアがいるという話だが今いる場所はアンデッドたちの場所から遠い。

 一応来ようと思えばいくらでも来れる。

 アンデッドもヴァンパイアも体力的にはかなりのもの……というか、疲れないと疲れにくい。

 なのでここまで来ることは変な話ではない……がそれをした場合ばれる可能性は低くないだろう。

 アンデッドやヴァンパイアとばれたりはしないが、いろいろと怪しい存在が街道を進むということになる。

 それはあまりネクロノシアにいるヴァンパイアとしてはよろしくない話になる。

 ゆえに、彼らは多くの人間にばれないように移動させる必要性がある。

 だから山にアンデッドがいるということになる。


『なんでアンデッドたちはここに?』

『山を越えてきたからです。アンデッドたちは体力的には問題ありませんし、戦闘に関しても痛みを感じないわけですし。ヴァンパイアも戦闘に関しては一応かなりの物です。アズさんはあっさり倒していますが、普通はあんなに簡単には倒せません。獣たちが襲う可能性に関しては、アンデッドだからというのがあるでしょう。腐った肉を食らおうとする獣はそういないですからね。ですから山を越える分には彼らはほとんど苦労はしないんです』

『なんで山を越えてこっちに来たんだ? ネクロノシアは……こっちの方向じゃないだろう? 迂遠というか、遠回りというか……わざわざこんな離れたところに』

『離れたところだからですよ。あまり近くで暴れていたら街の雰囲気と相まってアンデッドとネクロノシアを繋げられますから。異変の起きた時期が結構近いせいで結局その二つを繋げて考えている人もいますから然程意味はなかった気もしますが』


 ネクロノシアにいるヴァンパイアは頭が悪いわけではないので当然自分に危険が降りかかることはなるべく排除する。

 アズラット達が出会った場所はネクロノシアよりも道のり的には遠い。

 であればそれはネクロノシアからきた可能性は低く考えられる。

 もっともよく考えて判断すれば話としては繋げられるが。

 そもそも道のり的には遠くとも距離的には近い。

 だからこそ山越えするとはいえアンデッドたちが来ているわけである。


『そうか……まあ、確かに街の近くでアンデッドが出てきたら怪しいか。っていうか、なんでアンデッドが商人とか襲うわけ? 別に食事が必要なわけじゃないだろ? ヴァンパイアの食事用……とか?』

『街を支配しているヴァンパイアがわざわざ街道で襲うわけないですよ。いえ、街に住み着いて隠れて過ごすなら違いますけど。あのヴァンパイアはその限りではなく、街を支配して外に情報を漏らさないようにして街の人を食事にしていますからその点では問題ありません』

『じゃあなんで?』

『兵士的な役割でしょう。アズさんが全滅させたわけですが、別にアズさんに限らず冒険者と戦えばアンデッドは消耗します。当然死んでいるアンデッドが自然回復するわけでもないですから兵士の補充のためにヴァンパイアに襲わせていたわけですね』

『…………それ意味あるのか?』

『さあ。私としてもそのすべてを見通せるわけではありませんからわかりません。あくまでおおよその内容は推測に近いです。もちろん私もわかる範囲で得られる情報はありますけど。一応アズさんに情報提供していますが、言えない情報もあるのでそこは何も言えませんが……』


 色々と話しているアノーゼであるが、そのすべてを語れるわけではない。

 ある程度隠されている情報も少なくはない。

 もちろん、できればアズラットにヴァンパイアを適切に始末し、自分の望む結末を、と思っているため話せることは可能な限り話す。

 彼女としても己の目的のためであればある程度ギリギリまで己のできることをするつもりではある。


『恐らくはある程度はアンデッドを使っている従属ヴァンパイアの食事にしているのでしょう』

『確かにあっちも食わなきゃやれないか』

『はい……そういう話は別に今はいいでしょう。山にいるアンデッドはできるだけ始末をお願いします』

『了解。ま、放っておいて被害出るとこっちも気になるし、ある程度見つけられる範囲で見つけたのは始末するよ』

『お願いします』


 そのままアノーゼの頼みを受け、アズラットは山を登る。

 その最中に出会うアンデッドを始末する。

 ほとんどはただのヴァンパイア・ゾンビだが、中には当然従えるヴァンパイアもいる。

 とはいえ、その数はさほど多くない。

 これに関しては従属ヴァンパイアを作った主の意思があるだろう。

 そもそも、わざわざゾンビとヴァンパイアを分ける意味はないはずだ。

 まあ、昼でも行動来るという利点はあるだろうが。

 何らかの意図があるのか……それともヴァンパイアになれなかった者がヴァンパイアゾンビになるのか。

 そこは不明だが、ヴァンパイアの数は少なく、見つけた限りのヴァンパイアはすべてアズラットが喰らい潰した。

 他の見つけた限りのアンデッドも、すべてを喰らい潰した。






『山を登るの結構大変なんだけど?』

『疲れないでしょう……そもそも、<跳躍>で跳んでスライムの吸着力でくっついているわけですし、別に崖でも問題ないですよね? そのまま崖登りとかもできますし。そもそも道なりに進んで人と出会うのも嫌だからこっちを進んでいるんじゃないんですか?』

『いや、まあそうだけどさ……なんというか、もうしばらく山登りはしたくないかなって気分……』


 今までいろいろと山は結構上った感じのあるアズラット。

 神山、竜生迷宮のある山、海底の山。そして今回はアンデッドがいる山。

 もうこれ以上山登りとかする必要はありません、というのがアズラットの山への感想である。


『……で、あれがネクロノシアでいいのか?』

『はい。あそこです。時計塔がよく目立ちますでしょう?』

『そうだな。ああいうのはやっぱり、観光的な意味合いで見るのは好きだな』

『景色には興味ない割に、文化的な物には興味があるんですよね、アズさんは……』


 人間の文化ということでアズラットはそういった建築物や街並みを見るのは好きである。

 その反面、自然の雄大な景色を見るのはあまり好みではない。

 まあ、海底とかには面白みはあったようだが。


『まあ、それはいいだろ。あそこに行って、ヴァンパイアを倒せ、って話なんだよな?』

『はい。お願いします』


 そういったアズラットに関わる話はともかく、今回の問題はネクロノシアに起きた出来事。

 ヴァンパイアが支配する街を見据え、アズラットはそちらへと向かう。

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