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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
五章 奇縁の道程
210/356

206 殲滅

 魔物の巣。そこにいる魔物は迷宮から現れた存在である。

 迷宮の浅い階層からではなく深い階層から。

 それらの魔物は中々に強力であるが、それ以上に複数体で手を組む群体としての性質がより強力な要因である。

 また知性も理由にある。武器を持つこともでき、迷宮から現れた時から武器を持っていた。

 そしてそれらの魔物は共同で狩りを行い獲物を狩ることとしている。

 それを行うための拠点が彼らの巣、魔物の巣である。

 彼ら自体はそこまで多くはない。しかし、彼らよりも強い魔物はこの近辺には居ない。

 迷宮における深い階層の魔物ゆえに迷宮の外に魔物がいたところでそれらよりも強いのである。

 もっとも海中、海底、深海には海竜など海の過酷な環境で生き延び強くなった魔物もいるわけであるが。

 彼らの場合は近辺に人魚という存在がいて、それらが周囲の環境を維持していたからこそ敵がいない状況であったともいえる。

 そしてその人魚を彼らは標的とした。さすがに人魚たちの住処は自分たちでも犠牲が大きくなる。

 ならば人魚たちが外に出たところを襲う、そういう行動をしてきた。

 時折取り逃がし、複数体で出てくるようになり確実な狩りはできなくなってきた。

 しかし、それでも彼らは人魚を狩る。己の性ゆえに。

 そんな彼らだが、今回大きな変化があった。彼らの巣に人魚が現れたことだ。

 その人魚の意図は不明であるが、巣まで来た理由があるのだろう。

 ならば殺す。狩る。逃がす意味もない。

 魔物たちの内の数人を人魚に向けて送る。

 巣にいる魔物の数は結構減ったが一体の人魚を相手に負けるはずもない。

 人魚を殺し戻ってくるだろう。そうしたら次はいつ、どこで、どうやって人魚を襲おうか。

 人魚を一人送ってきたのは生贄だろうか。偵察だろうか。

 わからないが、そろそろ本格的に狩りに動くべきか。

 色々な考えを魔物達は浮かべていた。それが再び現れるまでは。


『(さあ、行くわよ!)』

『(……いや、いいけどさ)』


 人魚が海を高速で移動して魔物の巣へと突っ込んできた。

 それは彼らの知る人魚の速度ではない。

 明らかにその人魚の速度は速かった。そしてそれは先ほど見た人魚であった。

 魔物達はすぐに人魚に対し攻撃をしようとする。だが、反応自体が遅れている。

 人魚は剣を持っている。一気に魔物に近づきその剣を閃かせ容易く命を奪う。

 二体が殺され魔物達はようやく人魚にまともに対応できるようになった。

 槍を人魚に向けて突く。正面、左右、さすがに上下は無理だった。

 その攻撃を人魚はさっと泳ぎ回避する。


『(いいわね、使いやすいわ)』

『(適応しすぎだろ……)』

『(あんまり覚えさせてくれなかったのは残念だけど、これだけでも十分すぎるほどね!)』


 人魚はあまりにも強くなりすぎている。それは一体何故か?


『(いくわよ! <高速化>!)』


 人魚が強くなった要因。それはスキルである。

 この世界に存在する生物は基本的にスキルを覚えることが可能である。

 スライムならば生まれつき一つ覚えられるように。

 もっともスキルを覚えることを正確に認識している魔物は少ない。

 そして人魚もまた同じくスキルに対する認識はない。

 これは彼らの環境によるものだが、彼らがスキルを必要とするほど切羽詰まっていなかったのもあるだろう。

 しかし、マネーリアはアズラットからスキルについての説明を受けた。

 そしてアズラットと相談して有用そうなスキルを獲得することとなったのである。

 まず<ステータス>これは覚えるかどうか迷うところであるが、マネーリアはそれを覚えた。

 自分のレベル、強さを認識するのがいいと思ったからだ。

 もっとも種族スキルは表示されないのであまり意味はない。

 覚えたスキルを記録されているのは利点であるのでそちらの方で役に立つだろう。

 そして<水泳>を覚えようとした。

 元々泳げる彼女であるが、その能力を高めればかなりいいと思ったからだ。

 しかしこれは覚えられなかった。これに関しては、元々有している能力だからだろう。

 覚える必要がないものだったからとも言える。

 種族のスキル……アズラットでいえば<振動感知>などは覚えられない。

 <変形>も覚えられないはず。そういうふうになっている。

 それはともかく、なら何を覚えればいいか……となって覚えたのが<高速化>。

 水中を高速で移動できればそれだけで大きく有利となる。速度は攻撃にも防御にもつながる力だ。

 次に<剣術>または<剣技>でも覚えたかったようであるが魔剣はアズラットが彼女に渡した貸与物。

 後で回収するつもりのある武器のスキルを覚えさせるのはどうか、ということでアズラットはそれを覚えさせなかった。

 どちらかというとネーデと同じで<危機感知>などの方がいいだろうと思ったようだが、そこはマネーリアも色々と迷う。

 そしてとりあえず現状は<ステータス>と<高速化>でいいや、と判断しそれだけで済ませたようだ。

 ちなみに<ステータス>はスキルの覚えられる数も示しているわけだが、それを見る限りでは今の所全部で六つ。

 なお彼女のレベルは三十四。具体的なレベル上昇で覚えられる数が増えるかは不明である。

 そんな感じでスキルに関してはいろいろと考えられたが、戦闘で使っているのは<高速化>のみ。

 それでも十分に強い。そもそも<高速化>はスキルの中では優秀で強力である。

 武器のスキルを覚えていないため、武器を強く有効的には扱えないが、普通に使う分には問題ない。

 この世界ではスキルは大きな影響があるが別にスキルを覚えてなくとも技術は使えるものである。

 高速で移動する彼女は一気に魔物に近づき剣を振り切り捨てる。魔物側に回避する術はない。

 そしてそれに対応しようと行動しようとするが、その攻撃は彼女に通じない。

 高速で移動する彼女は相手の攻撃を遅いものと認識する。

 攻撃を見極め逃げることなど容易である。

 ここに来るまで戦いの経験のない存在がそこまでの戦闘技術を持ち得るはずもないのだが、出来ている。

 もっともそれは戦闘技術を高めた末のものではなく、高まった能力と覚えたばかりの優秀なスキルゆえのものである。

 つまりはレベルとスキルにおけるごり押し。

 あとは魔剣という強力な武器におけるごり押しである。

 一体二体三体と、次々にマネーリアは魔物を倒していく。

 そのマネーリアに魔物側が恐れをなした。

 魔物側は残り四体にまで数を減らした。

 元々の数よりもさらに少ない数、マネーリアを追った魔物数よりも少ない。

 その魔物の数で勝てるはずがない。ならば魔物側のとる行動は……


『(あ、逃げたわ!)』

『(追うぞ!)』


 魔物が逃げる。それを見たマネーリアが逃げたうちの一体を追い一刀両断にする。


『(あと三体! ここにいるのはそれで全滅だ!)』

『(わかったけど……追わなきゃいけないの! 面倒ね!)』


 残りの三体、そのうちの一体を追って切り捨てる。残り二体。


『(どこに行ったの?)』

『(あっちだ!)』


 アズラットが魔物逃げた方向を示す。

 <知覚>の範囲はかなり大きく、範囲を制限すればかなり遠くまで届く。

 そして今のアズラットはマネーリアの<高速化>の影響下にいる。体を覆っているゆえに。

 そのため魔物の逃走の速度は遅く感じているわけである。

 アズラットに教えられた方向に進み、魔物を切り捨てる。

 そして最後の一体を追った。


『(これで! 最後っ!)』


 逃げた魔物の最後を魔剣で断つ。これでマネーリアが特攻を仕掛けた魔物の巣は壊滅。

 そこにいた魔物達は殲滅されたのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 人魚も魔物のはずでは? 人間以外は全て魔物だっていう設定忘れてないか?
2020/05/27 16:49 退会済み
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