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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
四章 異世界探訪
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200.5 海底に逃げたら

私はマネーリア。この海に住んでいる人魚の一族の一人。

人魚は魔物じゃないから、そこはよろしくね!

えっと、まあそんなことはどうでもいい話ね。私達人魚は海に住む人に近い種族。

基本的には海底に住んでいるわけだけど、それなりに浅い海底に住んでいるの。

深いところは圧力や魔物の危険が大きいし、食料も少ない。浅い所に住むのも当然よね。

そんな私たちだけど、今私たちは結構大変な状況にあるの。

海の中では魔物の危険は多いわ。地上のようにわかりやすい境界がないからどこにでもやってくる。

一応縄張りみたいなものはないわけじゃないんだけどそれでもどこまでも追ってこれるわけだから。

それに食料の取り合いも起こる。地上と違って海の中は前後上下左右あらゆる方向に移動ができる。

獲物の捕まえやすさが大変なのよ。捕まえるための道具を作るのも手間があるし。

地上に近いかなり浅いところにいる人魚たちは人間と海で得た物を交換して道具を得ると聞いたこともあるけど……

私たちは浅いけど深めなところに住んでいるからそういうことはできないわ。

他の人魚との交流もあればまだ話は違うかもしれないけどお互いの住んでいるところが全然違う。

近い所に同族の住んでいる場所がないこともあって孤立気味なの。

どうしてそうなってるのかは知らないけどそうなっているものは仕方がないわ。

面倒なのはそういうことじゃなくて、魔物のこと。

魔物が現れること自体は別に珍しいことじゃない。

時々魔物が現れるということは今までもあった。

でも、それ自体はあまり高頻度じゃない。

魔物にも縄張りはあるし、適当に移動する場合でもそこまで数は多くない。

海の魔物はどうしても群れるということが難しい。餌の問題があるからね。

だけど、その魔物は群れで現れた。そのうえ武器も持っており、頭もいい魔物だった。

それが今回の厄介なことに繋がっているわけ。

彼らと私たちの戦いは決して私たちが負けているわけではない。

ただ、どちらかと言うとこちらの方が不利な状況にある。

数の問題ではこちらの方が多いのだけど、そもそも戦える人魚はそこまで多くはない。

魔物と戦うことを想定して私たちは鍛えているわけではなく、せいぜい時折現れる魔物に対処できる程度。

獲物を狩る漁師はいるけどその人たちの実力はそこまで高いわけじゃない。

魔物側もあまり多いわけではないみたいだけど、私たちでは勝てないから数に頼ることにしている。

勝てないといっても本当に全く勝てないわけではないからそこは勘違いしないように。

ただ、効率が悪い。一体を相手にするのに武器を持った複数人で挑まなければならない。

相手も群れるし、場合によっては逃げることもある。

移動速度ではほぼ拮抗、これじゃあ追いかけるのも大変。

だから基本的には戦わず、複数人でまとまって行動するようにして向こうが襲ってくるのを躊躇わせるようにする。

それでも襲ってくることはあるから、その時は皆で分散して逃げるようにしていた。

今日もまた、そういう感じで襲ってきたから私たちは分かれて逃げた。

そこまではいつも通り、問題は逃げられるかどうか。

こうやって分散して逃げることはよくあるけど、逃げきれないこともある。

実際帰ってこれなかった仲間は結構いた。そして今日は私が追いかけられる羽目になった。

私は全力で逃げた。逃げて逃げて逃げて……今日の魔物はしつこかった。

かなり逃げたけど、それでもまだ追ってきていた。

いつの間にか私は結構海の深いところまで来ていた。

そこで私は何か変なものが広がってきてそこにぶつかった。

それが私の今日の一番のおかしなことだった。


今日私が出会ったそれは人魚でもない、私たちを襲っている魔物でもない化け物だった。

いや、多分魔物、一応知っているけどスライムっていう魔物だった?

でもなんか違うような気もする。

スライムってもっと小さくて、そもそも水の中にいないものよね?

水の中にもこういうどろっとした変なのいるけど。

そういうのもこういう深いところにまではこない。

水辺付近にいるものらしいけど。

だってこういう生き物って深いところだと潰されるらしいし……

なんだけど、それは何故か水の中でも全然平気。広がって私を受け止めた。

本当ならこれくらいどうということはないはずなんだけど何か知らないけどぐにゃーって粘ってた。

おかげで暴れても逃げられなくて困る。っていうか、逃げられなくて捕まったままだった。

なんとか逃げ出そうと思っていたところに、私に対して声が届いた。

海の中って会話とか普通の手段じゃできないから基本的に<念話>で話しているのよね。

同じ<念話>だけど、何か違うような感じもしたけど、それはいいわ。

その<念話>の主が誰なのか、と言うと……スライムらしいわ。私を捕まえていた。

はっきり言って、そのスライムのことを信用できるとは思わなかった。

でも、私はそのスライムの言葉に頼るしかなかった。

私を追っていた魔物が私が捕まっている間に追いついたから。

私じゃどうしようもないから頼るしかないでしょ?

それでそのスライムを頼った結果。

何か契約すると会話されてその後魔物を退治してくれたみたい。

凄いとは思ったけど、別に助けてもらわなくてもそもそも捕まらなければ逃げ切れた可能性はある。

その点においてはスライムの言うことはちょっと信じきれないところではあるんだけど……

でも、その後のことを考えるとスライムの言っていたこともちょっとわからないわけでもない。

後で住むところに戻るとき、深いところから浅い所への移動だった。

つまり私は深いところに移動していたということ。

魔物たちは深いところからきている、というのは私たちの方でも推測されていた。

つまり私は魔物のいた方向に向かっていた可能性があるということ。

確かに彼らの住むところに誘導されていた可能性はある。

それでも、スライムの言うことを全面的に信じる理由はないけどね。

まあ、そういうことがあったんだけど、スライムは私に地上に送ってほしいと言ってきた。

でも別に私がその話を聞く必要性はない。スライムは困るみたいだけど、こっちには関係ないし。

それに地上に送るのも大変なことよ。距離もあるし、水の中から出ないといけない。

地上にまで私が行く必要ないけど水面に行かなきゃいけないし、人間には私たちを捕まえようとするやつもいる。

色々と危険があるのよ。面倒な。でも、その話を聞いて思いついたことがある。

スライムは私を追ってきた魔物を苦もなく倒した。つまりスライムはあの魔物より強い。

それなら……スライムに頼んで魔物を倒してもらえばいい。そのお礼に地上に送ればいい。

その提案をしたい……と思ったのだけど、私だけではどうにも不安がある。

魔物も別に私がその居場所を知っているわけじゃないし、私じゃ戦うこともまともにできるわけじゃない。

そういう危険なことは私以外の出来る人に任せたほうがいい。

だから一旦私たちの住んでいるところに連れて行き、長に頼んでスライムの手助けをしてもらう。

そういうことにした。だからスライムを連れて住むところに戻ることになったの。











まあ、その後どうなるか私はよく考えてなかったわね。

スライムも一応魔物だっていうこと、忘れていたみたい。

それに…………私は自分の住んでいたところの問題を、全く知らなかった。

それは後で知ったことだけど。

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