表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
四章 異世界探訪
202/356

199 遭遇

 魔物からの攻撃を受けながら、攻撃に対応し魔物たちを飲み込みながらアズラットは進む。

 進み続けると途中から攻撃の意味がないと理解したか、縄張りがあるのか、あまり魔物が寄ってこなくなった。

 それでもしつこくアズラットに攻撃してくる魔物もいる。そのあたりは魔物たちの個性の差か。

 そうしてくる魔物も飲み込み、更に進んでいると周りの様子が普通の状態になっていると感じられるところまで来た。


(お……このあたりからあの魔物の群れの影響を受けていないエリアかな? それならそれでいいが……結局あそこに関してはどうするんだろうな。まあ、そこそこ深い海底にある迷宮だからあまり気にする必要もないか? よほどやばいのでも出てこない限りは……そこまで影響は出ないだろう。海自体陸地に生存する生物にはあまり極端にかかわることもないだろうし、多少海の生態系が変わったところで……問題はあると思うけど、なんとかなること……なのか? そこは正直言うとさっぱりだよな)


 海の生態系がどれだけ変化しても地上に影響はない……とは言わないが、海が関係しない場所ならば影響は少ないだろう。

 まあ、海を渡り大陸を移動するような人間にはとても大きい影響があるだろう。

 しかし、そういったことを考えても人間にどのような対処をさせればいいかもわからない。

 深海に来るというのは中々に難しい特殊な条件がいる。

 耐圧、水中適応、夜目、そのうえで魔物に対して戦える実力がいる。

 本来は水中に適応しない生物である人間が水中に適応する生物である魚系の魔物に水中で簡単に勝てるわけがない。

 魔法だって雷や炎は使えないだろうし、水も厳しい問題がある。

 土も迷宮内では辛いだろうし、遠距離攻撃は威力が落ちる。

 近距離でも物理攻撃は威力が落ちるだろう。実に水中とは度し難い面倒くささがある。

 アズラットであるならば……物理的攻撃手段が来るような場合であればどうとでもなる。

 魔法系のスキルでも、最終的に物理的攻撃手段になるのならばどうとでもなる。

 海底の迷宮において一番の問題は最奥にいる迷宮の主がどのようなものか、だろう。

 竜王のように場合によってはアズラットでも勝てない可能性は高い。

 まあアズラットが迷宮攻略をするつもりがないのでそういう話はあまり意味のないことであるが。


(迷宮ってあんなことになるんだな。そもそも発生要件すらわからないんだけど……なんでこんな場所で発生したんだ。まあ迷宮側も人間の住んでいる場所の近くで発生する意味合いもないだろうけど。っと、さすがにどんどん上の方へと行ってるな。<知覚>スキルは便利だ……現在の位置がわかるし。まあ、世界地図があるわけじゃないから海抜での判断になるが。海抜ってマイナスでも使えるんだっけ?)


 そんな事を思いつつ、アズラットは自分のいる場所が徐々に高所……深海地点からは高所である、というのがわかって嬉しい。

 現実的に考えれば確かに海面、陸地に近くなっているのかもしれないが……しかし、深いことに変わりはない。

 海底二百メートルよりもまだ深い位置である。

 そんな状態で陸地が近いとは口が裂けても言えない。まあ、今までが今までだ。

 それこそ本当に深海と言えるくらいに深い海底にいたのを、頑張って移動して来たのだ。

 道のりの半分を超えることができれば嬉しいと思うのは普通のことだろう。まだまだ長いのだが。

 <知覚>の能力は高くなっており、かなりの範囲がその効力の有効範囲となっている。

 範囲を前方に絞ればその分距離も伸びる。

 まっすぐ進むのであれば有効範囲を絞ってもいい。

 問題は周囲から来る水棲生物の危険だが、今の所アズラットにその危険はない。

 むしろ前に何があるのかを確認できた方がある程度行動の指針になるため、扇形で正面から左右九十度を<知覚>の範囲としている。

 単純に考えれば四倍の知覚範囲を増やせるはずだが、さすがにそれほど単純ではないようでおよそ三倍の距離だ。


(さて……特に何もないな。まあ、前へ前へと進んでいればいいか。東の方……何かあるって話だけど、どこまで行けばいいんだろうな。ま、海面に近くなったらいっそどこに行くかを考えて移動してみるのもありか? <跳躍>と<空中跳躍>で海面まで浮き上がる、っていうのは無理だからやらないが……結構な重さの石でも取り込めばある程度高いところまで行けるかも。まあ、そこまで行った所であまり遠くが見えるわけでもないだろうけど。明るさがある程度あれば物は見えるだろうけど、水の中だしどのみち難しいよなあ。いろいろ考えないといけないから面倒くさい……地上ってかなり住みやすくて楽だったんだな)


 地上への郷愁を抱きつつ、アズラットは海の中を進む。

 地上に行ける可能性があると話に聞いた方向に進む。






 進んでいると魔物に襲われる。普通の魔物のように見える魔物だ。

 いや、魔物に普通も何もないのだが。


(……なんだろう? 何か違和感があるな)


 魔物と戦い、その魔物に対しアズラットはどこか奇妙な違和感を抱く。

 しかし、それをすぐには理解できない。


(んんー…………気にしてもしかたがないか)


 魔物を倒しそのまま進む。同じ種族らしい魔物が時折現れ襲ってくる。


(…………どこかに巣でもあるのか? まあ、いいけど)


 別にアズラットにとっては特に害になるものではない。

 しかし、妙にそれらが気になるところである。

 もっともそれらを調べるつもりはない。アズラットの目的は地上に行くことだ。

 そうであるため、特にかまうこともなく進んでいるが……今度は別の存在を<知覚>する。


(ん? これは…………)


 アズラットの<知覚>は前方方向へと向けられている。

 その中に何かあればそれを情報として取り入れるようにしている。

 魔物、建築物、乗り物、生物、その他いろいろな地上へと行くことに繋がりそうな情報を。

 もちろんその大半はただの知っていてもあまり意味のない、必要のない情報になる。

 だが、ここで何やら奇妙な、少し良さげな情報につながりそうな存在を<知覚>する。


(これは……人魚か?)


 それは下半身が魚、上半身が人である存在だった。アズラットの言う通り人魚である。

 一応人魚と言う種は魔物として竜生迷宮にもいた。アズラットが関わることはなかったが。

 今では地上に出て海の中の色々な所に散らばっているが、基本的には比較的陸に近い浅い海にいることが多い。

 住み心地や餌の関係、場合によっては人との繋がりを作るのも必要になるからそうなる。

 それがこの深い海層に出てくるのは少々奇妙に感じられる。

 もっとも、アズラットはそこまで細かくわからない。

 他に人魚がいないこの海底に人魚がいるのはかなり珍しいと感じるくらいだろう。

 そして、重要なのは人魚の存在だけではない。

 その人魚を襲う魔物が存在していることだ。

 魔物に襲われ、追われているのが現状のその人魚の状態であるらしい。


(……人魚か。話せる相手かどうかはわからないが、助けて恩を売るのはありか? そうだよな、助けて地上に連れてってもらう手助けをしてもらうってのはありだよな。まあ、助けたからってこちらのことを助けてくれるかどうかはわからないが……どうせそこまでの手間でもないし、少しくらいいか)


 相手の移動ルートを<知覚>を使いながら調べ、そのルートに移動しそこで待ち構えるアズラット。

 そしてその相手が自分の上を通過する前に……<圧縮>を解除しその存在を捕える。


(<圧縮>解除!)


 広がったアズラットの体は人魚の体を受け止める。

 ぶにゃんと液状ながら水の中で広がるわけでもなく、弾力のあるスライムの体に受け止められた。


『(きゃあっ!?)』

(<念話>か…………んん?)


 人魚を止め、その<念話>に微かな違和感を感じつつ、アズラットは人魚と会話を始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ