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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
四章 異世界探訪
199/356

196 陸地を目指して

 船の墓場で財宝の回収を行っていたアズラット。

 途中で魔剣との遭遇というハプニングもありつつ、回収を続行する。

 回収自体は何ら苦労することでもない。

 単純にそこに存在する物を回収するだけだからだ。

 誰に邪魔をされるわけでもなく、この場所には魔物も存在せず、脅威となる者はない。

 まあ魔剣による被害だけはアズラットとしても吃驚仰天だったが魔剣の回収もできている。

 今後何かが起きる可能性はあるが、しかしまあそれもまた一つの出来事だろう。


 それはともかく。財宝の回収自体は順調に進む。

 順調に進めば財宝はすべて回収できる。

 つまり、船の墓場における用事は完璧に完了する、と言うことである。


(これで最後……かな? 流石にまた全部の船を確認しなおすとか正直言って面倒だからやる気にならないけど……これで全部だよな?)


 アズラットは最後の船で財宝の回収を終える。

 途中にインパクトのある出来事があったせいで他の印象が曖昧だ。

 ゆえにこれで全部の船を探索し終えた、と断言できない。

 いや、順番に進めていたので問題はないはずだ。

 しかし、記憶と言うのは結構不完全な物。

 地図できちんと確認したりすれば話は違うかもしれないが、さすがにそれは無理だ。

 確認自体も船自体それなりに数があり手間がかかる。そこまで労力を使うのは流石に無駄だ。

 だが、そういう時こそスキルに頼るべきなのである。

 アズラットはそういうことができるスキルを持っている。

 どうするかと悩んでいるアズラットに対してアノーゼから指摘が入る。


『アズさん、アズさん』

『アノーゼ? 何か用事か?』

『いえ、用事と言うか、アズさんの悩みを一発で解決する案件を提供するだけですけど』

『それはありがたいな。どうやるんだ?』

『……アズさん、自分でそれを思いつかないのはどうかと思いますよ? なんで自分のスキルのことを忘れるんです? いえ、たぶん忘れていないでしょう、今も使い続けているんですし。ただ、その応用をもっとできるということをきちんと理解してもらいたいと私は思います。<知覚>スキルでその場所における船の中に財宝が残っているかどうかの情報を取得すれば一発で財宝があるかないかわかるんですよ! 財宝の中身やどこにあるかなんか調べなくとも! 船の中に財宝が残っているかという条件で<知覚>で情報を取得すればいいだけなんです! それくらい自分で思いついてくださいよ!』

『…………ご、ごめんなさい』


 ちょっと語気が強いが、これに関してはアズラットのスキルの応用力が低いのが悪い。

 まあ、少し勝手な言い分でもあるが。

 期待するのは勝手だが、期待した通りに行かずに怒るのは筋違いだろう。


『いえ……私の方もちょっと言いすぎですね。アズさんならそれくらいできる、と思い込んでいるから……なんでしょうけど』

『期待に応えられず申し訳ない』

『いえ、いえ、そういうことじゃないんです! 私がアズさんを神聖視しすぎなんです! ヤンデレストーカー目線で!』

『神様に神聖視されてるの!? っていうかストーカーとかヤンデレとか自覚あるのかお前!』

『いえ、いえ、いえ、べ、別に自覚とかはありません……ないんだからねっ!』

『ツンデレ風に言っても誤魔化されるかっ!』

『うう、まあ落ち着ていください! 活動記録から心の中までおはようからおはようまで覗いているというだけで、別にそこまで問題はないはずですよ!』

『問題ありまくりだっ!?』


 そんな二人のドタバタとしたやり取りがしばらく続く。

 基本的にはアノーゼのボケとアズラットのツッコミである。

 これに関してはアノーゼは半分天然半分意図的なボケだ。

 彼女にとってはこういうやり取りも一つの楽しみだ。


『はあ……はあ……まあ、いいや…………いちいちツッコんでると疲れる』

『大丈夫ですか?』

『アノーゼにだけは心配されたくないな、これ。いや、まあいいけどさ。えっと、財宝の回収は終えたし……当初の目的通りにしたいんだが、このまま進んでいいんだよな? 真東』

『え? ああ、そうですね。別に真東に進んでいれば問題ないと思いますよ』

『……そうか』


 アノーゼは東、と言っていたが別に真東とは言ってなかったような、とアズラットは思い出す。

 この辺りはアズラット自身の記憶が曖昧だが、恐らく真東ではなかったかもしれない。

 真東は思い込みかもと思う。

 事実は曖昧だが、アノーゼは今回の言葉に関しては少し適当に言っている雰囲気をアズラットは感じた。

 真東に進んでいれば問題ない。これは確かに事実だろう。だがどう問題ないのか?

 今回陸地に向かうつもりで船の墓場に来たが、アノーゼは最初からこちらに進めたかったのではないだろうか?

 そんなふうにアズラットは邪推をする。

 何と言うか、彼女はとても色々な点で怪しいのである。


『そんなに心配されても困るんですが……』

『ああ、そういえば心を読める……違う、覗き魔してるんだっけ』

『覗き魔っていうのやめてください。実際に東に行けばいいだけです。東のほう、真東でも構いません。ただ、北東や南東はあまりよくないというか、ずれますから……ルート的に時間がかかることになりますけど、それでもいいなら』

『いや、そこは信頼しているというか……アノーゼは必要なことに関して嘘はつかないだろ?』

『はい。アズさんにとって必要なこと、重要なことに関わるなら、嘘は言いません』


 その物言いに関しても少々怪しいところはある。ここでアノーゼが言っているのはアズラットにとって、必要重要なこと、だ。

 そこで陸地に到達するためとは一言も言っていない。それ以前にも、陸地に到達するのに必要とは一言も言っていない。

 アノーゼはそこをはっきりとは言っていない。曖昧な言い分で煙に巻いている。

 それは嘘は言えない、言ってはいけないとしているからだ。


『そうか。まあ、東に行けばいいっていうのならそうする』

『はい……アズさんが普通に陸地に行くよりも早く陸地に移動できるルートです。おすすめとは言いませんが、いろいろと役に立つ意味はありますから』

『わかった。じゃあとりあえず行くとするよ』


 そう言ってアズラットはアナウンスを切る。


(……アノーゼは本当に一体どうしたいんだろうな。嘘は言っていないんだろうけど……結構誤魔化してる部分は多そうだ。まあ神様ってことだし言えないことも多いんだろうからまあ仕方ないのかもしれないが)


 話しているとそんな雰囲気は一切見えなくなるくらいボケボケっとした雰囲気をしているが、アノーゼはスキルの神である。

 神とは言っても天使、中位ほどの役割を任されたそれほど大したことのない存在であるが、一応神である。

 スキルのことに関しての指摘はアズラットも思わず黙るくらいの強さもあったくらいだ。

 そこを忘れてはいけない。

 <アナウンス>で色々とアズラットにアドバイスをしたりと関わっているが、本来神はこの世界への干渉はあまりしてはいけない。

 全面禁止ではないが、過剰な干渉は禁止だ。

 アズラットに教えられることも、ある程度制限がある。

 これはアノーゼ自身が制限しているのか、神のルールに抵触するのかはわからないが、あまり追求しすぎても面倒に発展する。

 そもそも、アノーゼの言い分を全面的に信じること自体よろしくないことだ。

 神の言いなりはただの道具に過ぎない。

 この世界で生きているアズラットは己ですべてを決め、己で行動するべきなのである。

 あくまでアノーゼの言葉は参考に留めるべきである。


(とりあえず東に向かおう……今更行かないって選択肢もないし)


 アドバイス自体は参考にする。

 そもそも、今までアノーゼとかかわってそのアドバイスを参考に方針を決めていることも多い。

 それを今更アノーゼが怪しい、神だから問題がある、とかそういう理由でやっぱりやめたとする方が変だ。

 頼っているのはこちらなのだから、誠実にその言葉を信じよう。

 そうアズラットは思い、東に歩を向けた。


(……崖登り面倒くさいなー)


 その前に、船の墓場から出ないといけないわけであるが。

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