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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
四章 異世界探訪
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195 剣のあれこれ

(っ!?)


 剣に触れると同時に膨大な情報がアズラットを襲う……情報とは言っても、それは感情だ。

 感情の波、ただ、それは感情としてアズラットは感じることができない。

 何故かというと単純にその量が多すぎるゆえにだ。水滴と津波では感じ方が全く違うだろう。

 その膨大な波にアズラットの精神が一気に吹き飛ばされる。もっとも一時的にであるが。


(………………今走馬灯が見えた気がする。気のせいだと思うけど)


 精神的にその感情の波の圧になかなか疲れたように感じるアズラット。

 もちろん肉体的に疲労はない。

 そもそもスライムは肉体的な疲労を感じることはない。

 ただ、精神的にはすごく疲労を感じてる。

 まあ、意識が消えたりしないだけよかったとも言える。


(今の精神攻撃は何だったんだ……? たぶん、感情に何か影響するようなもの、だったのかな……?)


 アズラットは剣から感じたものを感情の何か、として捉えている。

 実際には感情の波なわけだが、そもそも剣が感情を持つこと自体普通ではありえない。

 それにその感情の波は一種の攻撃、または防衛手段として捉えることができるだろう。

 剣に触れた者に対する、所有者以外の物に対する攻撃を行うことによる防衛。

 魔剣、神剣などの特殊な武装の類ならばそういう物があってもおかしくないとアズラットは思う。


(っと、剣から手を……手じゃないけど、身体を離したほうが……って、もう触れてても大丈夫なのか?)

 

 先ほどの感情の波、精神的な攻撃は本当に一時的な物だけだったようだ。

 現在もアズラットは剣に触れているが特に何か起きている様子はない。

 仮に先ほどのが一種の防衛手段ならばまだ何か来てもおかしくはないが……特に何も起きない。


(あれっきりだったのか? まあ、そもそも盗まれることとか奪われることを想定されていないとか。いや、そもそもこういうものをスキルで付与するのってできるんだろうか……できたとしても一回しか使えないとか、そういう可能性はあるか。第一いったいいつからそのスキルの効果が残ってるのか、ってことになるんだけど。そこまでスキルって長持ちするのかな?)


 スキルにより武器などに付与する盗難防止などの罠、そういうものだとアズラットは考えた。

 その場合問題になるのはスキルがどれほど長持ちするかという点、そして付与したスキルがどのような性能かと言う点。

 まず剣がいつからこの場所にあったかの時点でわからない。スキルに関しても不明点が多い。

 精神系のスキル自体見たことなく、それを付与するスキルも存在自体知らない。


(アノーゼに聞いてもいいが……いや、別に聞く必要性ってないよな。剣を回収するかどうか……まあ、他の財宝と同じで持っていくつもりだけど。一応触れても大丈夫なようだし、さっきのようなことにはならないかも? 安全は絶対と言うわけじゃないだろうけど……もうちょっと確認しよう。もしかしたら人間は致死だけどスライムだったから効かなかったとか……ありえなくもないか。毒とか食べて死なないとか人間じゃできないことができるのは確認済みなわけだし。大丈夫そうなら持っていこう)


 特にこれ以上害がないのであれば別にいい、問題ない。

 そもそも海底にある財宝は根こそぎ持っていく。

 そういう方針であるため一度害があった物であってももう大丈夫そうなら持っていくようである。

 もしかしたらまた同じことが起きるかもしれないというのに割と能天気と言うか楽天家と言うか。

 まあ、<同化>で保管している間はそういう部分は大丈夫なのかもしれない。

 ところで、アズラットは気づいていないようだが、先ほどから剣から感じている強大な気配は消えている。

 それ自体は感じてはいたが比較的受け続けることで慣れていた。

 ゆえに慣れて感じなくなったものだと思っているようだ。

 しかし実際にはアズラットが剣に触れた時点から消えている。

 つまり、先ほどの感情の波と何らかの関係があると考えられる。

 もっとも、アズラットはそのことに気がついてはいない。


(さて……あと残りは少ないし、取れるだけ取ったら……あとは陸を目指すだけだな)


 アズラットは海底に残り続けるつもりはなくこの船の墓場での財宝回収は単純にロマンの追求だ。

 そもそもからしてやる必要性もなく、財宝を得たところで使い道すらないわけである。

 果たしてそこに何の意味があるのか。

 まあロマンとは意味があるべきものでもないのかもしれない。

 ただの自己満足の追求、と言うことでもいいだろう。スライムの生は何もなくて退屈だ。

 そういった娯楽がなければ心の充実には繋がらないのかもしれない。











 海に生きる生き物は物に内包される力を感じやすい傾向にある。

 それは海の中では生き物を探すのも大変だし、少ない所、海底などではあまり生き物がいないのも原因だろう。

 それゆえに海底に沈む船と言うのは格好の獲物で、そこに存在する力のある物は沈んだ時に食らわれることも多い。

 深海に存在する海の魔物、リヴァイアサンやクラーケンなどを倒すと稀に古い武器を得られることもあるがそういう理由だ。


 さて、ここでアズラットの訪れた船の墓場での話に移ろう。

 この船の墓場には特別な、魔剣と呼ばれるような超が頭に就くような特殊な剣が存在する。

 その力はアズラットのようなあまりそういった知覚能力の高くない存在ですら感じるほどのものである。

 重要なのはそれが強大な力を出していることと、海中に存在する魔物がそういった物の感知能力が高いこと。

 もしその船に魔物が近づけばその力を目的に近づく可能性が高い。

 まあ、魔物によってはその力の強大さに恐れを抱き逃げるものもいるだろう。

 しかし、実際には近づく魔物の方が多いはずだ。そして魔物はその剣を喰らい自身に取り入れる。

 剣自体は消えずとも、その力は魔物の力の一部として一時的に取り入れられるだろう。

 普通ならばそうなっているのが基本なのである。


 だが、その剣はそうなっていなかった。

 膨大な力を、アズラットですら警戒するような力を持ち得ているというのに。

 可能性はいくつかある。一つはアズラットに対して起きたような防衛機構の存在。

 アズラットが感じた感情の波のような精神攻撃を今まで触れてきた魔物に対して行っている可能性だ。

 しかし、これは否定できてしまう。

 もしそうならばそこに存在する死体があってもおかしくない。

 だがアズラットはそのようなものを発見していない。

 発見したのは剣の以前の持ち主だろう死体のみ。

 では他にどのような可能性があるか。

 一つはアズラットが近づいたことでその気配が出てきた可能性。

 ありえなくもないが、それでは防衛機構をアズラットに対し一度しか効果がなかったことが謎になる。

 まあ、その一度が効かないことで防衛機構が消え、気配も消えたというのは可能性的にはあり得るかもしれない。

 他にも一つ可能性がある。それは気配の範囲。

 気配の範囲が極めて狭い範囲、室内とか建物内のみだった可能性。

 これは一応あり得なくもないがそもそも剣がそのような気配を出すこと自体異常であったりする。

 まあ、そこは今更だが。


 ところで、剣の行った防衛機構。これは感情の波、と言う形での精神攻撃だった。

 だがよくよく考えてみるとそのような防衛手段をなぜ剣に持たせたのだろうと疑問に思うべきだ。

 いくら魔剣と言えどもそのような防衛機構を詰め込むのはおかしい。

 そもそもそのような防衛機構を付加できるものか?

 そしてその感情の波も、確かに結構な精神的衝撃かもしれないが、死ぬとは限らないものである。

 一時的な行動不能でもいいかもしれないのだが、それでもやはり少し奇妙に思えてくる。

 そのうえ、その感情の波も……様々な感情が詰め込まれておりわかりづらいが、主の感情は歓喜だったのである。

 アズラットはその感情の波が膨大で一瞬でしかも一時的な意識喪失に陥ったため見分はできていないが。

 なぜ歓喜なのか? そもそも、魔剣の魔剣たる所以、性質も不明だ。

















 アズラットは知らない。

 その魔剣はかつて神から人に譲渡された力の魔剣。

 その魔剣は意思を持ち、所有者を転々としてきたことを。

 魔剣の本来持ち得る資格を持つ持ち主のため、世界を転々としてきたことを。

 魔剣の持つ運命ゆえに、また出会いの運命のために、海底にたどり着ける運命を探しそれに伴ったことを。

 その持ち主とは誰か。

 持ち得る宿した神の力は、すでに失われ所有者へと還っている。

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