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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
四章 異世界探訪
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193 船の墓場

(これはまた………………景色とかそういうのは基本的に興味ないけど、こういうのはちょっと別腹だな。壮観と言うか……なかなか見られるような光景じゃないし。っていうかこういうのって海底とかに来れないと絶対見れないようなものだよな……希少性抜群じゃないか?)


 もっともその存在があるからと海の底まで来てみたいものでもないだろうと思うアズラット。

 船の墓場というのは確かにどれだけ頑張って見ようと思っても環境や状況が揃わないと見れないだろう。

 だからと言ってそれに見る価値があるか、そもそも見ようと思っても来られるかどうかは別の話。

 今アズラットがこの場にいるのも、そもそもは偶然の連なりによるものである。

 海の底まで来たいと思って来たわけではないのだからそうなるだろう。


(しかし……ここまで来たのはいいが、ここを迂回していかなきゃいけないのか。それはそれで面倒だが……かといってこの船の墓場に入るのもどうかと思う。でも…………なんだろう? 流石にこれをスルーするのは冒険心に反するというか何と言うか。っていうか、ここに何かあるような気がするって本能的に感じる! まあこんなところに何もないほうがおかしいだろうけどさ!?)


 ファンタジーな異世界の海に沈んだ無数の船群。

 当然その中に何か重要なものがあってもおかしくない。

 いや、これが物語か何かならば必ず重要なものがあるだろうというくらいな舞台である。

 仮に重要な物がなくとも船の中には沈む前に積まれていた荷物が残っている可能性は大いにある。

 もっとも鉄などの大半の金属は錆び付いているし食料品とかは既に無くなっているだろう。

 もしかしたら海賊船に乗っていた財宝や乗組員の骨になった死体くらいはあるかもしれないが。


(うーん…………行ってみたほうがいいのか? でも時間も使うし、下りるわけだから戻るのにも時間がかかるし…………)

『行った方がいいと思いますよ?』

『……そうか?』

『はい。アズさんは何かあると本能的に感じているんですよね? それは何か意味あってのことでしょう。己の感覚を信じ、行ってみるのが一番いいと思います。それが一番正しい道筋でしょうから』


 アズラットのような特殊な存在、大きな力を持つ存在は気配や雰囲気、直感で時々特殊なものを感じることがある。

 それはその者の本能によるものだが、大抵そういった感覚は重要な物である。

 危険ならば危険と、求めるものがあるなら欲求を、どうしたいかと考える前に、こうしろと自分に対し命令を出す。

 いや、もしくは本能とは違う……もっと世界規模な何かの可能性もあるかもしれない。


『じゃあ、行くだけ行ってみるよ』

『財宝とか少しわくわくしてきますね。あったら回収しておいた方がいいですよ、どうせここまで来れるような人もいませんし、眠らせておくのはもったいないですから』

『どうやって持って帰るのさ……』

『<同化>を持っているの、忘れていません? それで指輪を今も保持したままじゃないですか…………』

『あ』


 記憶と言うのは基本的に曖昧と言うか、使わない部分は基本的に忘れていくものである。

 それはスキルに関してもそう。

 最近アズラットは<ステータス>で自分のステータスを見ることすらしていない。

 それゆえに自分のスキル構成すら半ば忘れがちである。

 特に<同化>は使う必要性がないのもある。

 利便性はあるし、使い道がないわけではないのだが……今回のような特殊な事例でもなければ使う必然性がない。

 そもそもアズラットはスライムであるため、道具やら財宝やらを入手したところで使い道がないのも大きい。

 使うことができないものをわざわざ集めようとは思わない。

 まあ、世の中にはコレクターと言うものも存在する。

 使い道がなくとも集めるだけでも十分な意味があるだろう。


『忘れてますね……一度自分の状態を見直したほうがいいのではないですか?』

『………………後で』


 ここでアノーゼに言われた通り、<ステータス>を使い自分の情報を見直すのは負けた気がする。

 アズラットはそう思ったため、自分の情報を見直すのは後回しにしたらしい。






 さて、船の墓場に沈む多くの船を探索することにしたアズラット。

 数は多いので結構労力を使うことになるだろう。

 それ以前に船に乗るのも結構一苦労である。ただ、アズラットは少し良い手を思いついたためあまり移動には苦労しない。


(今まで気づかなかったが、こうすれば<跳躍>使いやすいな!)


 岩などのそれなりに大きさを持ち重量のある物を自分の体で包み取り込みながら<跳躍>を使う。

 <跳躍>自体は体の中に重い物を持っていても使うことができる。

 スキルのレベルが高いおかげだろう。

 そして重い物を体の中に取り込んでいればその重量で自然に沈む。

 アズラットだけならば流されるような水流でも重量物があれば話は違ってくる。


(……ただ、結構面倒なんだよな。取り込まないようにするのも、これを抱えたまま移動するのも。<跳躍>を使って速く移動できるのはありがたいが、もうちょっとどうにか考えたほうがいいかな? とはいっても、今はもうスキルの新規取得もできないし、今の自分の状態でやっていくしかないだろうけど)


 <跳躍>と<空中跳躍>を合わせることで移動が楽にできる。

 船に跳び乗る……とまではいかずとも、外壁に取り付きそこから跳びあがれる。


(よっと…………さて、中の様子を見てみるかな。っていうか壊れたりしないだろうな? よく考えると水の中に沈んでる船って腐ってたりするんじゃないの? 張り付いたらこの重いの置いていこう……流石に危険かもしれん。まあ、別につぶされたり落ちたりしたところで特に問題もないけど)


 別に船が腐ったり朽ちていたりして壊れたところで別にアズラット側に対しては何も問題ない。

 ただ、移動に問題が起きたりする可能性があるとあまり問題が起きないほうがいい。


(最悪の場合この船全部を一度全部飲み込むのもありか……? 大きさ的にやろうと思えばそういうこともできそうな気がするけど……)


 場合によっては<圧縮>を解除し元の大きさに戻ることも考慮にいれる。

 ただ、そう考えるのはほんのわずかな間だけ。


(いや……この海底で<圧縮>を解除するのはよくないか。元の状態で水圧に耐えられるかと言われると……<変化>を併用すればどうだろう? まあ、そのあたりはいいか。えっと、<知覚>を使って内部の物品情報……いや、ロマンがないな。見てからその見てる対象のみを<知覚>で情報収集、そこでお宝の種類を確認選別でいいか。そもそも全部持っていくつもりだから細かいことを気にする必要はないんだけど)


 この海底までくるような人間は誰もいないだろう。

 お宝などの回収は基本的に根こそぎすべてである。

 どうせ誰にも文句が言われないからこその容赦のないやり口である。

 まあ、まだアズラットに地上に持ち帰られた方が使われる可能性はありそうだからそのほうがいいかもしれない。


(さて、中身は………………うわ)


 中にあったのは骨。恐らくは乗組員だっただろう人間たちの骨である。

 まあ、さすがに全員が船と一緒に沈んだわけではない。

 船の大きさからして船を動かすのには足りない数だった。

 とはいえ、結構な人数が死んでいるが。


(なむなむ…………放っておくのがいいか、食って消してやるのがいいか……船ごとと言うわけにはいかないが、さすがに人くらいはどうにかしてやるか。まあ、本人たちは海の中で眠っているほうがいいのかもしれないけど)


 死体を放置するのは人としてどうか。

 まあ今はスライムで魔物なわけだが、そういう考えがあるため死体の処理を行う。

 まあ、処理とは言っても取り込んで食するだけだが。

 実は<同化>で運べる可能性もあったりするがそれは思いつかなかったらしい。


(死体以外はないのか? まあ、そもそも沈んでいるのが海賊船やお宝を運んでいる船ばかりじゃないだろうしなあ……)


 旅船だろうと、漁船だろうと、沈むときは沈む。

 仮にお宝目当てならばそれっぽい船を探したほうがいい。

 とはいえ、アズラットは一応全部調べるつもりなのでそれっぽいものを探さずとも、いずれは目当ての船に当たるだろう。

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