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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
四章 異世界探訪
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181 エルフの行方

 その類稀な極めて強力な戦闘能力……主に防御力でエルフを追い払ったアズラット。

 しかし、エルフを追い払うことは別に主目的ではない。

 現状のアズラットは山を下りつつ、ついでにエルフの里を見つけられればその様子を見るくらいの意思である。

 まあ、エルフの里に近づくと危険の可能性が高いのであまり行くつもりはない。

 先ほどエルフの女性に見つかったことで厄介なことになりかねないという思いもある。

 そんな感じなので祭儀場から下りる道を把握しつつ、その道からは逸れて進む。

 しばらくのんびりと進んでいると、祭儀場への道を登ってくる三人のエルフの存在に気付く。

 動いていては自身の存在がばれるかも、一応エルフの女性にばれたわけだしと隠れるアズラット。

 そうして隠れつつ、三人の様子の確認とその会話を盗聴する。


「まったく、なんで調査に行かなきゃいけねえんだよ。あいつの言葉なんて信じられねえだろうが……」

「嘘をついている様子はない」

「嘘をついてないってんなわけねえだろ? スライムがーとか言って、この山にスライムがいるわけねえだろうが」

「スライムはいるだろう……ほとんど見かけないが」


 スライムは何処にでもいる。それは基本的なこの世界における常識だ。

 ただ、スライムはそう表に出てくることはなくちょっと出てきたとしても他の魔物や動物に倒される。

 そもそもスライムは魔物のなかでは最弱くらいの弱さなのでこの山では生き残れるようなものではない。

 それでもいるにはいる。

 自然発生するスライム……普通にはまれるスライムもいなくはない。

 基本的にスライムの増殖方法は分裂によるものだが、分裂ではない発生も一応ある。

 迷宮とは別で、普通に発生するスライムもいる……かもしれない。そもそもスライムは生態的に謎も多い。

 すべてが解明されているわけではないため、現状では何とも言えないのである。

 と、そんな話はともかく。この山にもスライムはいるのだが、エルフの彼が言っているのはそういうところではない。


「そうじゃねえよ! スライムに矢が効かなかった、魔法が効かなかった、そんなこと言ってるのを信じられるわけねえだろ? スライムってあれだろ、ちょっと斬りつければ死んじまうくそ雑魚じゃねえか。それに攻撃が効かねえとかありえねえっての」

「まあ、普通はそうだが……」

「世の中にはスキルを持つ魔物もいる。スライムと言っても普通のスライムではなく特殊なスライムも……」

「ああ、はいはい。そーいうのもいるんだろうよ。スライムにゃありえねえって話だろうけどな。知性の欠片もないスライムがスキルを持つとかねえだろ。スキルを持つ魔物は頭がよくて強い魔物か、俺たちエルフや人間に近い人の姿を持つ奴らだろ。スライムはそのどっちにも当てはまらねえだろうが」


 この世界におけるスキルの取得はスキルの取得を意識する必要がある。

 逆に言えば、スキルを取得するための明確な意識がなければスキルを取得できない。

 まあ、あくまで基本的なスキル取得に関してであり、例外も多々あるのだが。

 ともかく、スライムがスキルを持つということはほぼない。

 極めて稀な超異例な事例でもなければ。

 その超異例な事例がアズラットと言う極めて異端な存在であるわけだが、それについてはおいておこう。

 そういった事例が普通ならばあり得ないとされるため、語っているエルフはその存在に関して懐疑的であるようだ。

 特殊なスライムに関しても、そもそもそういったスライムが発生する環境がいる。

 この神山においてはそういった環境は存在し得ないため、発生するはずがないというのもある。


「おおかた自分のミスで攻撃した魔物に攻撃が通用しなかったからそういってごまかしてるんだろ。はっ、雑魚が森に出向いて調子乗るからそんなことになるんだ。俺らがでなきゃいけない羽目になるとか、ざけんなっての」

「…………流石にそれはないだろう」

「ああん?」

「仮に何かの魔物を倒せなかったにしても、その対象にスライムをあげるのは考えにくい。お前が言ったように、本来ならスライムではそういうことはありえないのだから」

「…………まあ、確かにスライムをあげるのは変かもしれねえが」

「だからこそ、逆に真実なのではないかと思える。荒唐無稽、事実としてあり得ないような嘘をついたところで信じてはもらえない。そんな嘘をわざわざつくのは変だ。ならばそれは嘘ではなく、真実であると考えることはできないか?」

「流石にそれは考えすぎじゃねえのか?」


 あまりにも嘘としか思えない内容だったゆえに、逆にそれが嘘ではないのではないかという推測に至る。

 そもそも、そんな嘘をついて何になるのか。彼らを行かせるため、危機感を持たせ信じ込ませるためならばもっと強い魔物が出たと話すべきだ。

 それを、攻撃が通用しなかったスライム、というのはあまりにも奇妙でおかしく聞こえてくる。

 スライムがそんな実力を持つはずがない、見間違いか、嘘か、だれでもそう思うような内容だ。

 それは言った本人でもわかるはず……と考えるのならば、わざわざばれるような意味のない嘘を言ったことになる。

 流石にそれはおかしい、となるとつまりは本当のことを言っているのではないか、ということになる。

 もちろんそれを簡単に信じられるほどその内容は現実味があるものではないのであるが。


「………………? 何かいる?」

「ん? どうした?」

「何か魔物がいる……かもしれない」

「かもしれないって何だよおい!? いるのかいないのかはっきりしろ」

「スキルの問題だろう……どういうことだ? どこにいるのかはわかるのか?」

「あまりはっきりしないが……結構近くにいるような感じがする」


 そういってアズラットのいる方向へとエルフの一人が視線を向けた。


(っ! もしかして俺がいる方向がわかるのか? ただ、かなりあいまいな感じ……っぽいな、言っている内容的に。<隠蔽>)


 アズラットは話していた言葉の内容から完璧に位置把握をできているわけでないと推測する。

 そして、自分の持つスキル<隠蔽>を使い己の存在を隠す。

 このスキルは己を隠すスキル。それはスキルや認識も対象である。

 確実なものではない。例えば犬系統で匂いを追ってくる存在がいれば、匂いの途切れ方でいることがばれるかもしれない。

 途切れた地点にいるかもしれない、また<隠蔽>を用いても微量に香るかもしれな匂いでわかるかもしれない。

 まあ、そういうスキルについての細かい話はさておき。

 アズラットの<隠蔽>によりその存在を認識できなくなる。

 それにより、アズラットの存在を感じていたエルフはぴくりと反応する。


「…………感じなくなった」

「なに?」

「何かいるように感じていたが、いなくなった」

「それただの気のせいじゃねえのか?」

「それはわからない」

「一応調べよう。もしかしたら彼女が見つけた何かに関係するのかもしれない」

「それはねーとおもうんだが……」


 そう会話しながら、彼らはアズラットの<隠蔽>を用いながら隠れているところを素通りしていく。

 しばらくアズラットはそのまま待ち………………<隠蔽>を解いてちょっと急いで山を下りる。


(まさか感知能力があるとは。スキルだろうけど、どれくらいの範囲を感知できるかは知らないが、急いでおこう)


 一応それなりに遠くに行った様子であるとはいえ、どこまでアズラットを感知できるかはわからない。

 他の魔物がいればその存在を感知することでアズラットに対する認知が薄まる可能性もあるが、どうなるかは不明だ。

 ゆえに、ちょっと急いでアズラットは山を下りる。

 そうして山を下りていき…………


(……これ、エルフの里かな?)


 エルフの里の入口が見えるところまで到達した。

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