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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
四章 異世界探訪
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177 神山登山

(また登山か…………登山は一度経験しているからあまりしたくない、っていうか別にする分には苦労することもないしいいんだが、メリットがないんだメリットが。体力がつくわけでもなし、景観がよくてもそれ自体は別に得にもならない。いい景色に価値がないとは言わないが、俺はあまりそういうのには興味ないし……まあ、見られる分にはいいんだけどさ)


 アズラットは景色に対してあまり価値を感じていない。

 建物などは建築様式や人の技術などで価値を見られるが、単純な景観だと思い出にしか残らないのであまり価値を感じない。

 なので登山とか無駄に苦労するだけであまりメリットがあるとは感じないのがアズラットの精神性である。

 しかし、さすがに神山は単純な山だけというわけではなく。

 そこにいる魔物の強さや数が周辺とは違う。

 様々な魔物を見られたりそれを食する機会があるというのはそれなりにメリットと言えるだろう。

 別にアズラットに味覚はないので食道楽にもならないが。


(まあ、アノーゼの話だと何か祭儀場があるという話だし…………魔物とかもある程度は足しになるし、そういう点ではちょっといいかな。祭儀場がどんなのか知らないけど、興味はあるんだよな。神山とつくくらいだし、何かそっち系の神話とかそういう関係か? オカルトには興味がある……まあ、俺の存在のほうがオカルトだろうけど。転生、異世界移動、よくよく考えると結構とんでもない話だよな)


 そもそもアズラットの存在自体が結構な異常な存在であり、またアノーゼとのつながりも結構なおかしな出来事である。

 今更神話についての話、祭儀場の意味とかを知ったところでどれほどの価値があるか疑問である。

 それでも自分のことではない、そもそも自分のことですら詳しく知りえない以上いくつも情報収集手段が合った方がいいのには間違いないだろう。

 この世界の神について……アノーゼに聞くのが一番ではあるが事情を話してくれるとも限らない。

 自分で関係各所に赴きいろいろ見てみるのもいいだろうという判断である。

 まあ、アノーゼが言いださなければ聖国に行って神山には来ていない。

 聖国を訪れたその後も神山に来ることはなかった可能性のほうが高いのだが。


(……しかし、この神山とやら、あまり人の手は入ってないみたいだな。一応冒険者の来たような痕跡はいくらかあるが……まあ、魔物が強いからか? 迷宮の結構深めの階層で出てくるような魔物だし、そこまで来れるような実力を持つ冒険者じゃないとダメそうだからしかたがないのか?)


 神山に出て来る魔物は強い魔物が多い。そしてその魔物に対抗できる冒険者は少ない。

 基本的に迷宮の深い階層に出てくるような強い魔物はあまり迷宮の外の世界には存在しえない。

 竜とか、一部の特殊な魔物はともかく、基本的にそこまで極端に強くはない。

 そのせいもあり、迷宮の外で活動している多くの冒険者はそこまでの強さを持たない。

 これは場所柄の問題もあるだろう。

 アルガンドであれば迷宮帰りの冒険者がいて結構な実力者が多い。

 しかしこちらの大陸にはアルガンドほど迷宮が多く存在しない。

 それゆえに強者と言える冒険者が少ない。

 迷宮の外にはあまり強い魔物がいないため、鍛えるのが難しい。

 また聖国の特長の影響もある。

 魔を排除するための動きを見せる宗教国家ゆえに、根本的に魔物が少ない。

 もちろん聖国から離れればそれなりにいるが、聖国周りにはあまり魔物がいない。

 それが聖国の人員の強さに影響する。

 レベルを上げ実力を得るには魔物を倒す必然性があるのだから。

 そして聖国の特徴ゆえに、魔物素材を持ち込めないため冒険者もあまり来たがらない。

 聖国の考えに賛同する冒険者や、魔物素材を使っていない武装を持つ冒険者、観光目的であるならば話は違ってくる。

 だが多くの冒険者は魔物素材を使った武装を使っているため、この場所に来ることはできない。

 魔物素材ですら禁じられてしまうのだから冒険者には辛い。

 まあ、仮に冒険者が多くいても、中々厳しいことには変わりないのだが。

 一応誰か来たような痕跡があるのは、この神山に強い魔物がいるのを知って海を越えてきている冒険者がいるからである。

 単純な強さだけでなく、その持ち得る素材もまた目的だろう。

 なお、冒険者は来ているが聖国の人間は来ていない。

 ゆえにあまり管理されている感じがないわけである。

 魔物をどうにかするつもりがあるようだが、別に積極的に討ち滅ぼしに行くわけではないようだ。


(…………あっち以上に登るのが面倒な。まあ、人間よりは登りやすいか)


 アズラットはスライムであるため、かなりの悪路でも登りやすい。

 人間の手が入っていない未知と言うことは人間が来ることのない場所であるということだ。

 しかし、それは同時に少しアズラットにとっての疑問も浮かぶ。


(……人が来ないのに本当に祭儀場なんてものがあるのか? いや、今は使っていないのなら……あるのか? それとも別にルートがあるとか? そういえば神山にあるとは言っていたが、どのあたりにあるとかは言ってなかったか。確か……エルフの里がどうの、とか言ってたか? エルフに管理されている? 神山と聖国は何らかの関係がある感じだったが……どうなんだろう。聖国とエルフが手を組んでるっていうのはたぶんないと思うのだが)


 アズラットの知識では迷宮に存在するエルフは魔物。

 聖国は対魔物の宗教を掲げているため、敵対していると考えられる。

 実際には現状ではエルフなどは人型の魔物扱いだが魔物のような敵対行動をしない種に関しては扱いが微妙になっている。

 これは単純にエルフの中で魔物扱いされる者とされない者がいることもありかなり複雑なことになっているから、というのも理由にある。

 まあ、聖国としてはエルフが神山を管理してくれているほうが自分たちが管理する必然性がなく楽と言うのも理由だろう。

 一応聖国の人間も神山には来るのだが、周りの魔物の強さがあってあまり積極的に期待わけでもない。

 魔物の間引きなど、危険なことはエルフに任せて利用する。あくどい考え方である。






 そうしてアズラットは頂上付近まで登った。無駄に登った。

 しかし、道中にも頂上にも祭儀場らしきところはない。


(逆側か……そもそも山って言ったって結構広いなからな。山脈くらいの規模ではないけれど)


 神山は一応単独の山で頂上はそれなりに高所であるが広さは普通の山と同じくらいの広さである。

 まあ、山が高いため普通の山くらいの広さと言っても結構な広さであるが。


(っと……あれか? あの広場っぽい感じの所。祭儀場、と言うが……まあ何か儀式っぽい場所には見えるが……どちらかというとストーンサークルのほうが近いんじゃ? きちんとした儀式場的な物じゃなくてもっと古い史跡みたいな感じに見えるなあ……)


 山の頂上から見下ろせばおおよそある程度は何処に何があるかは見える。

 流石に雲を超えるほどの高い山々ではなく見下ろして下が雲海で何も見えないということはない。

 そういう山も探せばどこかにあるかもしれないが、さすがにそこまで高いと人の手も届きにくい。

 まあ、どこにも山に登ることを目的としたバカはいるらしく、時々頂上まで登っている者もいる様だが。

 どこかの誰かの話はともかく、普通の山の頂上で下を見下ろせば山の側面が見える。

 そういうことであるのでアズラットはあっさりと登ってきた側とは反対の方向に祭儀場があるのが見える。

 元々神山の管理はエルフが行っており、聖国はそのエルフと相対し戦わないよう逆側に国を作っている。

 歴史的にエルフのほうが先に神山に手を付けており祭儀場はそちら側の関係であると考えられる。

 ゆえに聖国側から登れば祭儀場に当たらないのはある意味仕方のない話だ。


(ま、とりあえず下りてみますか)


 アズラットは祭儀場に向けて頂上から下りていくことを決める。

 登るのは結構な手間がかかるが、下りる分にはアズラットの場合<跳躍>もあるし単に落下するだけでも構わない。

 それゆえにかなり早く移動できる。

 あっさりと、祭儀場へとたどり着くのであった。

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