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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
四章 異世界探訪
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166 迷宮外の生き物

 夜。流石に夜間は馬車も止まり、冒険者たちも夜警の人間以外は基本的に寝ている。

 その間であればアズラットが<隠蔽>を解いても見つかりにくい。

 そもそもアズラットはスライムなので気配が少なく見つかりにくい傾向がある。

 まあ、人間の持つスキル次第でもあるし、人間以外では話た違ってくる。

 もっとも熱感知で発見できるかはわからないし、匂いもあるかどうかわからない。

 どちらかというとスライムはそのどちらもないものであるため、探知は難しいかもしれない。


(っと……基本的に夜でも行動に問題ないのはありがたいけど。流石にこういう場所だと夜はあまり物が見えないな。明かりがないからな……まあ、森だからだろうけど)


 基本的に人間の手が入っていない森は自然のまま成長し、そのため場所によって明るさが違う。

 間伐をしていない所は木々が多く、そのせいで光が差さずまた木が多いため進みにくくもなる。

 アズラットはスライムなので明かりがなくとも構造自体は把握できる。

 ただ、視界で物を見ることができないのが残念な所だ。

 振動感知で構造把握できるが、やはり直に物を見たいわけである。


(まあ、昼間になるまで待ちますか……こういう夜だと危険な魔物が出る、とか定番らしいし……)


 そんな感じでアズラットは森の中でしばらく待機することにした。

 昼間に行動したい、というのもあるが、冒険者たちに関しても離れるようにしたいからである。

 アズラットが一緒に来た馬車とその冒険者はまだ近くにいる。

 自分から離れてもいいのだが、相手の移動を待ってもいいだろう、というわけである。

 そうして冒険者たちが出発する。

 彼らの中の一人は先日から続いていた奇妙な感覚がなく、それに戸惑う。

 ないほうがいいことであるのだが、いったいなぜなくなったのかわからないので戸惑っている。

 まあ、なければ特に問題ないため、普通に彼らは目的地へと向かって去って行った。


(よし……それなりに明るくなったし、人の気配もないし、森の中を探索するか。あんまり明るくないけど……これくらいなら普通に見えるし。スライムだからあまり視力はそこまで良いとは言えないだろうけど)


 スライムの視界として重点されるのは振動感知による視界なので普通の視界はあまりよくない。

 それでも光を見るくらいは問題ないし、今のアズラットはかなり普通に物を見ることができる。

 森の中、アズラットは知識としてはいくらか情報を持っているが実際の森を探索する経験はない。

 いや、迷宮の森を探索してはいるが迷宮の森は迷宮内部独特の性質の森で外とはまた違っている。

 とはいえ、そこまで大差はない。迷宮内であろうと迷宮外であろうと森は森である。


(…………魔物がいない、っていうか出遭わないな。迷宮内だと頻繁に出遭ったんだが……まあ、あれは迷宮内だからか。虫とか獣とか普通の生物は多い感じ? 植物も……迷宮とはまた違う感じだな。何が違うかって言われると……わかりにくいんだが。感覚的な物は説明しづらいな……別に説明する相手もいないが。ネーデがいなくなったから会話をする相手もいないんだな……そういえば。なんというか、ちょっと寂しいかもしれん)


 迷宮の外では魔物が少ない。もちろんいないわけではないが、魔物よりも獣のほうが多いだろう。

 魔物と獣の区分に関してはいろいろと謎だが、あまり細かく区分しなくてもいいかもしれない。

 化け物っぽいのが魔物、それ以外が獣、くらいに思っていればいいだろう。

 アズラットは適当にそういう認識だ。

 迷宮内部ではアズラットが出会う存在は魔物が主であった。

 そもそも、迷宮内に自然発生するのは大半が分類としては魔物である。

 厳密には動物もいないわけではないが外にいる動物とは正直別物、魔物と言っていい存在である。

 アズラットはそういう存在ばかり見ていたため魔物が少ないのは少し奇妙に感じている。

 しかし、そもそも迷宮の外、この世界には魔物のほうが絶対数としては少ないわけであるが。

 迷宮における魔物の発生と、それが外に出ることを考えると迷宮がこの世界の魔物の発生源とも考えられるわけである。

 まあ、そういったことに関しては現在も研究されているようだが、あまり調査は進んでいない。

 この世界における歴史はあまり伝わっておらず書物も多く作られていないため記録が残りにくい。

 昔ながらの石板や石壁に記された歴史はあるかもしれないが、それも多くは残ってはいないわけである。

 もっともこの世界には世界の始まりから見守る神様がいるためそちらに話を聞くのも一つの手だろう。

 まあ、普通は神様と話をすることはできないのだが。普通は。

 と、そんなことは気にせず、アズラットは森の中を進んでいる。

 特に何に出遭うでもなく、安全に。

 いや、普通は魔物でなくとも獣と出遭うかもしれないのだが……なぜか、アズラットは避けられていた。

 振動感知能力により、自分が近づくと相手が自分から離れるように逃げていくのを感じていた。


(もしかして俺、避けられてるっぽい? 別に何もしてないんだけど……迷宮内ではこんなことは…………同じスライム種以外ではなかったとおもうんだけどな)


 基本的に迷宮外の存在にとってアズラットは途轍もない脅威の存在である。

 レベルにしてアズラットは七十を超えている。

 一方、迷宮外の存在の多くは高くて二十から三十くらい。

 もちろん戦いを己の仕事とする冒険者は話が違ってくるが、それでも四十に行くかどうかだろう。

 根本的にレベルは高レベルになるほど上がりづらくなるためあまり高いレベルまでいかないことが多い。

 このレベルの差は相手との力の差になるわけだが、これに関しては感知能力の高いものほどそれを理解する。

 人間は感知能力をスキルによってあげられるのだが、根本的な部分で知性の高さにより本能的な感知能力が低い。

 それに対し、野生動物などは元々生存競争に忙しい生活を送るためか、本能的な感知能力が高い。

 そのせいでアズラットのレベルを感知し、近づこうともせずに逃げるようになっているのだろう。

 なお、このレベル差による脅威度合はレベル差よりも相手のレベルが大きな影響となる。

 竜王とのレベル差が四十である場合と、アズラットとのレベル差が四十である場合では前者のほうが感じる脅威は大きいだろう。

 まあ、そういったいろいろな理由があり迷宮外の魔物はアズラットを避ける傾向がある。

 では迷宮の魔物はなぜスライム種のみがアズラットを避け、他は避けないのか?

 これに関しては迷宮の魔物は迷宮によって生み出されているのが主である、というのが大きい。

 迷宮に存在する魔物が迷宮外から侵入してきた存在に対し逃げるようでは迷宮にとっては困る。

 そういう本能的に感知する脅威、またはそれに対して逃げようとする意志が封印されている……のかもしれない。

 はっきり言って、そのあたりはあまりわかっていない。

 そもそもそういうことに関して調べる能力がない。

 なので恐らくはそうである、という推測が主となっている。

 まあアズラットは知る由もないのだが。


(ま、襲われないのは都合がいいけど……食事の問題はあるか? ま、それは何とか頑張って確保すればいいか。<跳躍>と<空中跳躍>や<圧縮>の解除による反動で一気に跳んだりすればかなりの速度で近づけるし。<隠蔽>からの不意打ちでも行けるか?)


 アズラット自身は基本的に襲われないのならばむしろそのほうが都合がいい。

 食事の確保という点で色々面倒は多いが、単に食べるならば動物でなくともいいであるわけだし。

 と、そんな感じでアズラットは森を見て回ることにした。

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