表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
四章 異世界探訪
164/356

161 スライムの山登り

(ふう……ふう…………別に体力があるわけでもないけど、なんとなく精神的に疲れるなあ……)


 今アズラットは山を登っている。場所は竜生迷宮の存在するその場所だ。

 竜生迷宮は山の中に入り込むような洞窟みたいな形をしている。

 その迷宮がある場所は結構大きな山だ。

 その場所をアズラットは登っていた。


(しかし、高いなあ……まあ、高いほうが都合がいいといえばいいんだけど。<アナウンス>が通じない状況だからな……まったく)


 今のアズラットの持つスキルのうち、<アナウンス>はとても便利なスキルであるといえる。

 なぜならこの世界に事をよく知っている神々と話ができるスキルなのだから。制限はあるが。

 アズラットの場合その<アナウンス>で会話ができる相手はアノーゼのみだ。

 ちなみに<神託>と呼ばれるスキルもある意味疑似的に<アナウンス>のような使い方はできる。

 会話と言っても、直接会話のやり取りに関しては<アナウンス>でないとできない。

 しかし、見ている相手ならば言葉や思考は神様側で聞いたり見たりできるので、それで疑似的な会話ができる。

 <アナウンス>と呼ばれるスキルがなぜ会話ができるのかは少々疑問ではあるが、まあそういうスキルである。

 しかし、そのスキルを今封印されている。かつて四階層で暴走進化した時のように。

 今回もアノーゼはアズラットを暴走進化させたのだから似たようなものだと考えることはできる。

 しかし、完全な黒塗りにされて封印され使えないのは少々アズラットとしても不安である。

 前はスキルが元に戻って再び会話することができたが、今回はどうだろう、と思うところだ。

 一度は許しても二度目は許さない、なんてことがあってもおかしくない話なのだから。


(まあ、俺のほうで考えていても仕方のないことだが。アノーゼ側で起きたことを俺がどうこうできるわけじゃないし……まあ、俺のせいなんだろうけど。ちょっとこれまでいろいろアノーゼに頼りすぎていた側面はあるよな……)


 アズラットは今までアノーゼの助けを受けている。

 スキルに関してもそうであるし、いろいろな指針に関してもそう。

 アノーゼは神であるためこの世界のことには……まあ、アズラットよりは詳しい。

 そのため、いろいろと聞きそれを参考にして行動を決めることができていた。

 スキルに関しても、何を得ればいいのか、どう扱えばいいのかもまたそうである。

 しかし、今はもうその助けを受けることができない。

 そうなって初めてアノーゼの重要性を理解する。

 普段はいつも見ているストーカー的な気質のある彼女だが、その想いは本物である。

 彼女の行動はとてもアズラットにとって大きな助けとなっているのである。

 今回もアズラットはアノーゼにこの世界のことを聞きどこに行くかを決めるつもりであった。

 だがそれができない。困ると同時にアノーゼのありがたみを分かったのである。

 と、そんな経緯だが、だからアズラットは行動しない、できないというわけでもない。

 わからないのならば知ればいい。

 どこに何があるか、まずは行動してみないとわからないこともあるだろう。

 だが闇雲に何もわからないまま進むというわけにはいかない。

 どこに何があるのか、ある程度見当をつけないとやりづらいわけである。

 そのためアズラットは山を登っていた。高いところからならば、下に何があるかを見つけやすい。

 街、村、都市、国、道、馬車、どこかの場所、移動している乗り物、人々の動き。

 その何かを見れば、どこに行けばいいのかなんとなく見当をつけられる……とアズラットは考えている。


(ふう……しかし、登るのは大変だな。<跳躍>を駆使すれば比較的楽だが……それでも大変なんだよな。人の手が入ってない場所だし、そもそもあまり道らしい道がないし……獣道もろくにない。ときどき山に生えている植物とか鳥の巣らしいものは見かけるが……っていうか、結構な断崖絶壁じゃないか? いや、言うほど断崖絶壁って感じでもないが……)


 今アズラットの登っているところは道のない断崖絶壁。

 いや、本人の言う通り断崖絶壁と言うほどでもないがけである。

 反対側は竜生迷宮に入る場所が存在し、町のようになっているので実に登りにくい。

 ただ、どちらからにしても人の手が入っていないためとても登りにくいわけであるが。

 一応あちら側からは比較的登りやすいというだけであり、どちらにせよ登るのは大変だろう。


(っと……時々鳥が襲ってくるな。こんなところで元気なものだ)


 その断崖絶壁を登りながら、時々鳥が襲ってくる。

 とはいっても、迷宮の外の普通の鳥なぞなんのその。

 アズラットの強さであれば鳥程度に殺されることはない。

 むしろ触れる先から取り込み食い殺せる。

 ただ、それをするほどアズラットは飢えているわけではないし必要なことでもない。

 そもそも下手にアズラットがあれこれすると生態系を破壊しかねない。

 それを理解しているので手を出さない。

 少々吹き飛ばして脅かし近づけさせないようにするくらいである。






(よ、ようやく登ってこれた……!)


 山頂付近。そこまでアズラットは登ってきた。正直な話、そこまで登る必然性はない。

 下のほうだけをみるのであれば、ある程度の高さまで登ればそれでよかった。

 しかし、アズラットは一番上まで登ってきた。

 まあ、反対側も見れるし、アズラットの目的には世界観光もある。

 世界を見て回る、という点においては山頂からいろいろと遠くまで見るのも一つの内容だ。

 そもそもこの世界の険しい山を山頂まで登山するというのも一種の観光だろう。

 まあ、普通の人間だったならばとても登るのが難しい場所だっただろう。

 今のアズラットはスライムであり、そのおかげで壁に張り付くのも容易であった。

 また、迷宮の外にいる生物に襲われてもそれほど危険でなかったのもスライムだったからだ。

 もし普通の人間でここに来ようとしたのならすごく大変だった。

 ある意味スライムでよかったのかもしれない。


(おおー……あんまりこういう光景に感動を覚えないタイプだけど、なかなか……)


 アズラットはあまり綺麗な景色に素晴らしい、と感動するタイプではない。

 別に綺麗な景色を綺麗と感じるがわざわざ見る事にあまりメリットを感じないタイプ、ということである。

 思い出、というものにどれほどの価値があるのだろう。苦労してみたいとおもえるものだろうか。

 そんな感じの精神性であるが、わざわざここまで来た以上景色を見て楽しまなければ損である、とも考えるタイプだ。

 そういうことでアズラットは山頂付近で景色を見ている。

 完全に山頂であるわけではないが、そこまで気にしていない。

 ある程度山頂付近なら十分だという考えである。

 実際そこまで山頂に行くメリットもないのだが。


(……村、町。足元、迷宮の出口は町だなあ。あっちの方には村……か? でも、でかい所も見えるな。あっちは……そうだな、ここ以外にも山はあるよな。山脈って程じゃないけどあっちの方に山が続いてる。ただ、一番高いのはここか。そんな場所に竜生迷宮があるのか……まあ、それはいいとして。あっちにでかい街……いや、都市か? 川沿い、あっちの山のほうから続いている川沿いにあるのか。じゃ、あっちの川に言って、そこから下ってみるか。人に出会う危険もあるから、近くから隠れられそうな道を通じて行くのが一番……馬車とかそういうので行くのもありだが、人の近くにいるとばれる可能性もあるからな……冒険者じゃない人間もスキルを持っているかも? いや、持っていてもおかしな話じゃないか。でもレベルは? 冒険者とかは魔物とか倒しているからレベルが上がるが、普通の人間はどうなんだろう……そもそもこの世界のスキル事情とか詳しくどうなってるんだ? 聞いたことあったかな……ああ、アノーゼに聞くこともできないから面倒な……ま、とりあえず、行くだけ行ってみるか)


 アズラットは別に何でもできる万能な存在ではない。

 何でも分かる存在でもなく、才知の存在でもない。

 ゆえにやれることをやるしかない。そもそも正しい選択などそうあるわけではない。

 アズラットは山頂から<跳躍>と<空中跳躍>を駆使し、川のほうへと向かった。

 そして、その川の近くを下っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ