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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
三章 竜討の戦い
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141 竜狩り竜装備

 ネーデとアズラットは十八階層を逆走し十七階層に戻る。

 十八階層に繋がる十七階層の経路、そこでの竜は十六階層側からの侵入で出現する。

 なので戻る分には基本的に危険はない。

 ただ、一度竜が出た状態になっていると話は変わってくる。

 幸いなことに挑戦したが勝てそうにないので戻ったり、竜に負けたりしたものはいなかったようだ。

 そういうことだったので問題なく十七階層を通過し、二人は十六階層に戻った。

 戻った直後では何をするべきか、と考える所。一応竜に挑戦するつもりではある。

 しかし、一度勝てたとはいえ、何度も戦うのは大変。装備の充実を図る必要がある。

 今のネーデはそれまでの経過もあってそれなりに素材を得ている。

 ついでに十八階層に侵入していることから記録の更新もしておくべきだろう。

 そういうことでエルフの里へ向かい、冒険者ギルドの出張所にて素材の提出を行う。


「これは……十八階層に行かれたんですね」

「…………」

「えっと……彼女と修行されていたようですが、一緒に行ったとか」

「違う」


 確かにネーデの修行はフォリアがやっていたのだが。

 途中でほっぽり出されたのでネーデはとても不機嫌である。

 まあ、必要なことはきっちりと学んでいるのでこれ以上必要ないともいえるのだが。

 ただ、ネーデの中でフォリアがどういう扱いになっているかというと……と言ったところだろう。


「竜は自分で倒した」

「……それは。えっと、冒険者カードを見せてもらえますか?」

「…………」


 ネーデは冒険者カードを提出する。ギルドの受付はそれを確認し、少し悩む。


「……お一人で倒したわけではない、のですね?」

「…………私は一人じゃないから」


 頭の上に少し上げるようにして視線を向ける。

 同じ冒険者ではないが、ネーデにはアズラットがいる。

 もし単独、ネーデ一人で竜を倒していれば<竜殺し>の称号を得ていたことだろう。

 なお、この単独というのは戦闘を行うその場にネーデ以外がいないという条件。

 つまりアズラットがいる限りはソロ討伐扱いにはならないので称号はつかない。

 ちなみに下手をすれば竜よりも強い存在を倒しているアズラットであるが、あちらは称号の類はない。


「そうですか」


 受付は少し納得いかないような感じにうなずく。まあ、アズラットの見た目はスライム。

 スライムがどれほど戦闘に活躍するだろうと思うところだ。それを言うことはしないが。


「それで、今後はどうなされるつもりでしょうか?」

「それは言わなきゃダメ?」

「いえ……ですが、一応確認くらいは、と」


 別に各々の冒険者の動向を確認する必要などないのだが一応は訊ねておくというスタイルである。


「しばらくは竜を倒す。武器とか、防具とか作りたいから」

「……そ、そうですか」


 受付はそのネーデの言葉に若干引いている感じだ。

 まあ、あっさり竜を倒すと言ってのけるのは少々異常だろう。

 竜というものは普通短期間で何度も挑むようなものではない。

 それくらいに倒すのが難しく、命の危険も大きい。

 とはいえ、竜の素材を得るという目的であればしかたがないのかもしれない。

 もっとも普通は最初に倒した時点で素材を得るのが一般的。

 この迷宮においては素材を得て戻るか先に進むかを選ばなければいけないので仕方がないのだが。


「……それで、素材の分は?」

「あ、はい。それはきちんと記載しておきましたので」

「なら、もういい?」

「はい……」


 ネーデにとってはほかの冒険者も冒険者ギルドも相変わらず。

 いや、冒険者はさらに悪くなっているかもしれない。

 フォリアとの最後がああいう形での終わり方なので冒険者不信は強くなっている可能性がある。

 一応ギルドに関してはそれまでと変わらない対応になるはずだが。






 と、そんなやり取りを冒険者ギルドの出張所でした後、ネーデとアズラットは竜へと挑む。

 一度勝っているとはいえ、勝負は水物。一手間違うだけで戦況は大きく変わる。

 フォリアの戦いをみて学んだとはいえネーデ自身の戦闘能力は大幅に上がっているわけではない。

 それゆえに、竜との戦いで小さなミスをするだけでも大きく悪いほうに戦況が傾くこともある。

 アズラットもいるし、ネーデ自身もそこまで弱くなく、スキルで幾分かカバーできるので大丈夫ではあったが。

 竜との戦いはネーデにとっては成長する機会のない自分のスキルを育てるいい場面だ。

 スキルというと少し勘違いするがネーデ自身の戦闘技術や戦闘勘のこと。

 スキルそのもののことではない。技能、能力と言う方がいいかもしれない。


 この世界において、明確にスキルとして現れる能力とそうでない能力がある。

 人間ならば鍛えればその分強くなるというのがそれだ。

 ある種種族スキルに近いが、スキルではないものである。

 アズラットの場合でも種族スキルによる成長要素があるが、蓄積された本人の感覚はスキルとは違うだろう。

 ネーデはそういったものを竜との対決の中成長させる。

 強い相手との戦いの経験。危険にさらされることによる危機感知能力。

 スキルではない、ネーデ自身の感覚でそれらを育てる必要がある。

 スキルでそういう物を持っているから難しくはあるが、意図的にスキルを発動しないで幾分か成長させられる。

 まあ、それをするのは大変なので基本的には経験的な成長や感覚的な成長に頼るくらいだが。


「こんなところ?」

『(とりあえずそれくらいでいいと思う……っていうか、たぶん取りすぎなんだよな)』

「そう?」

『(そもそもネーデが装備してるものに使う分だと大していらないだろうあ、って思うしな……)』


 既にネーデとアズラットは何度か竜を狩り、その素材を剥ぎ取っている。

 素材の確保自体は難しいものではない。倒しさえできれば後はいくらでも取り放題なのだから。

 武器の耐久の問題もありあまり無茶なことはできないが、竜さえ倒せばお金には困らない。

 今のネーデは既に武器を購入するのには困らない状態だ。

 そんな状態ならばいくらでも戦い様はある。


「骨、爪、牙、角……えっと、羽、ほかには?」

『(肉とか血とか、眼とか内臓とか。まあ、あまりそういったものは武器防具には使わないだろうしなあ。すでに確保している部位でも十分と言えば十分。まあ何に使えるかわからなくとも、向こうが何かに使えると判断すれば使うかもしれないからいくらか確保するのもありだろうな。肉は食べればおいしいだろうし)』

「アズラットはいらないの?」

『(残り物でいいよ俺は。基本的に今はそれほど食事に困ってないし)』


 ネーデは戦うだけで十分な成長が見込める。経験値、肉体と精神、スキル、そういった部分で。

 しかしアズラットの場合、戦って得られるものはスキルの経験値のみ。

 アズラットの成長は食事、取り込み消化し自分の血肉にして得られるものだ。

 また、経験値だけでなく肉体もそうである。アズラットの体の大きさは食事で得られる。

 とはいえ、竜を無理に食らう必然性は今のアズラットにはない。食べられれば上等ではある。

 一応それなりに成長し、進化もしているアズラットだがこれ以上の成長も望むところ。

 おそらくだがまだまだ進化もあるし、レベル的にももっと上を目指してもいいだろう。

 ただ、あまり焦っていないのでそこまで欲しがらないというだけだ。

 ちゃんと残った部分は全部取り込んでいる。


『(それはともかく、ある程度……ってどころじゃなく十分素材を確保したし、武器と防具を作ってもらおう)』

「うん」


 今回の目的は竜相手に強者との戦闘経験を得ることと、竜の素材を得てそれを武装に変えること。

 いつまでも竜に挑み続けるのを止め、十六階層で武器の作成を頼みに行くべきだ。

 十分素材が集まっているのでもういいだろうということで二人は戻り武器と防具の作成を頼んだ。

 そうして武器や防具を作ってもらった後、二人は十八階層へと再挑戦しに向かう。

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