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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
三章 竜討の戦い
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138 脅威は力のみに有らず

 十八階層は幻想の階層。ただ、何が幻想かといわれるとこの世界の住人は理解できないだろう。

 ただ、アズラットが見る限りではこの十八階層は幻想の生物が目白押しである。


『(ミノタウロスだ!)』

「おおきい牛人間だね!」


 牛頭の人型の魔物ミノタウロス。迷宮とはそもそもこのミノタウロスを封じるためのもの。

 少なくともアズラットの知識ではそうであるという話があることを知っている。

 力は強いものの、人型の力の強い獣人の魔物であるというだけで大した強さは感じない。


「燃えている蜥蜴?」

『(サラマンダーか? 精霊の類じゃないのか?)」


 燃え盛る蜥蜴の魔物、サラマンダー。世界によっては精霊ともされることのある存在。

 とはいえ、この場においてはただの炎を纏うだけの蜥蜴である。

 触れることが難しいという厄介さこそあれど、脅威ではない。


「っ!!!」

『(今のネーデなら十分にやれる、リベンジするぞ!)」

「うん!」


 かつて九階層で遭遇した最大の脅威、グリフォン。ネーデにとっては嫌な思い出だ。

 しかし、今のネーデであればそれはそこまで脅威ではない。竜すら倒している。

 ちなみに、この階層にはグリフォンと似たようなイメージのある魔物ヒポグリフもいる。


「……襲ってこないよ?」

『(ユニコーンだな。まあ、ネーデが清らかな乙女だから凶暴化しないんだろう……スライムである俺は無視か。まあ、何かやってくるつもりがないのであれば無視していいな)』

「倒さなくていいの?」

『(別に倒す必然性もない。襲ってこない相手と戦ってもあまり意味ないだろ? 素材は……角が薬になるとかそういう話があるくらいで、毛皮とかもいらないだろうし。それでも倒したいのならいいが)』

「……別に興味ないからいいや」


 どこか清浄な雰囲気のある角のある白馬、聖獣とも言われることのあるユニコーン。

 乙女……処女の女性にのみ懐くといわれ、そのせいか性獣とも言われることのある魔物である。

 この世界においてはただ乙女に懐く性質があるくらいで危険性も大したものではない。

 襲ってくるわけでもなければ脅威にもならないためネーデは無視することにした。


「……三つ首がある」

『(キマイラか……なかなか厄介そうだな)』


 三頭にして複数の獣の特長が含まれる体を持つ魔物キマイラ。人造ではなく自然に生まれた化生。

 まあ、迷宮に存在する魔物が自然に生まれた生き物かと言われると違うかもしれないが。


「汚い」

『(コボルト、で、ゾンビかー。せめてどちらかだけにしとけって思うかな)』


 狼の獣人に近しい様相の魔物、コボルト……のゾンビ。

 ゾンビ自体は自然発生もあり得そうだがコボルトのゾンビとなると少々人為的ではないだろうか。

 まあ、ゾンビを生み出す仕組みがこの階層にあるとするのならあり得るかもしれない。


「っ! ゾンビばっかり!」

『(……あの中心にいるローブを着た骨に注意しろ! たぶんあれが元凶だ!)』


 リッチ。世界によってその有り様や見た目には様々な違いがあるがこの世界ではローブを纏う骨。

 意図的なゾンビ大量発生の原因にしてその支配者。ただ、そこまで本体は強くない。

 しかし少々スキルを使用できるため中々に厄介な相手ではある。周りにゾンビを従えているし。

 ま流石にネーデだけに任せると辛いだろうということでアズラットもゾンビ一掃を手助けした。

 そのため比較的楽に戦いが終わった。


「……人の体に蛇の足」

『(ラミアか。もしくはナーガ? 男のラミアっているんだっけか?)』


 ラミア。女性の上半身を持ち、下半身は蛇の人型の魔物。なお、十六階層にも存在する。

 ただ、その存在をネーデは確認していないためその存在については知らない。

 ちなみにラミアとナーガはそもそも別の存在である。この世界には男のラミアもいる。


「……人型の魔物多くない?」

『(まあ、よく見られる魔物だからな、人型の魔物は)』


 人型をした蜥蜴の魔物、リザードマン。半魚人の魔物、サハギン。既にゾンビで見たがコボルト。

 腕の変わりに翼を有する鳥人、ハーピー。上層でも見られるゴブリン。

 猪の獣人のように見えるオーク。巨大な人型の悪鬼、オーガ。

 頭部のないアンデッドに近い存在、デュラハン。

 半人半馬の魔物、ケンタウロス。下半身が複数の犬で構成されている魔物、スキュラ。

 十六階層においてはいくらかは人間に対し敵対的ではなく、話のできる相手もいる。

 だが十八階層においてそれらのすべては明確に人間に対し敵対している。

 なお、この階層にはエルフがいない。

 それを考えると意図的に敵対するようにされているのかもしれない。


「…………それにしても、アズラットはすごいね」

『(……? 何がだ?)』

「だってこの階層の魔物の名前、全部言えるんでしょ?」

『(うーん、知らないやつもいるとは思うんだが……今のところそういうのは見かけてないな。まあ、俺もあくまでそういう名前を知っているってくらいで詳しいことは…………知らないとは言わないが、そもそもそれが合っているかもわからない。俺の知識はあくまで何処から手に入れたかわからないものだからな)』

「ふーん……」


 ネーデはあまりそのアズラットの言葉に対し興味があるようには見えない。

 ただ、彼女はそんな知識を持つアズラットはすごい、くらいにしか思っていないだろう。

 アズラット自身はそもそもその知識の出どころも分からず、それ以前に記憶喪失で探り様もない。

 なぜかそんな知識を持っており、それがこの世界のものでない、前世の人間のものであるくらいしかわからない。

 だからあまり自信をもってこんな知識を持っている自分はすごいとは言えない。

 所詮ただの知識である。


『(っ、来るぞ)』

「……っ、犬、頭が二つ」

『(オルトロス? まあ、正直そういう魔物も今更な気がするが……)』


 二つの頭を持つ犬の魔物。ケルベロスの弟とも言われることのあるオルトロス。

 アズラットの知る限り神話に出て来る存在である。

 まあ、別にこの魔物に限った話ではないが。


(……ファンタジーの創作に出てくるような魔物ばかりだな、この階層)


 アズラットの言う通り、この階層に出て来る魔物は一般的なファンタジーに存在する魔物ばかりが出現する。

 基本的に多種多様ではあるが、それなりにメジャーな魔物しかおらず、だから殆どの魔物を知っている。

 ゆえにこの階層は幻想の階層と呼ぶことのできる階層なのである。

 ただ、それらの魔物は本当の意味でのアズラットの知識にある存在とは違っている。

 まあ、そのままではやばい魔物もいただろう。いろんな意味で。


「……あれ? 頭が蛇だね。変なの」

『(……あ、やばい)』

「え?」

『(気づかれる前に倒せ!)』

「えっ」


 ネーデが驚いている間にその魔物が振り返る。まるで髪の毛が蛇になったかのような魔物だ。

 メドゥーサ。メデューサ、メドーサとも呼ばれることがあるが、有名な魔物である。

 特にその魔物の持つ異能が名前と一緒で有名である。どのような異能であるかというと……


「っ!?」


 一瞬でネーデの<防御>に使われている防御膜が石と化す。

 それと同時にネーデの<危機感知>が反応する。

 メデゥーサの特長はその視線による石化だ。見た物を石化する能力。


「に、逃げるっ!」


 ネーデは<防御>が一瞬で無効化され、また<危機感知>で反応できない能力に恐怖する。

 そして躊躇せず逃げることを選んだ。

 少なくとも何もわからぬまま挑むのは得策でないと判断した。

 それに対し、アズラットは賢明な判断だと思った。


(……しかし、本当に視線だけで石化してくると厄介だな。コカトリスは不意打ちで倒した。もしかしたらバジリスクもいるんじゃないのかここ? 石化能力持ちってファンタジー界隈だとそれなりにいるよな……)


 防げない石化の能力。それは極めて脅威だ。石化の回復手段など持ちようがないのだから。

 まあスキルに対応手段はあるかもしれないが今のところ不明である。不明なものはないのと同じ。

 アズラットはあとでアノーゼにそういうスキルがあるかどうか尋ねることとした。

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