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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
三章 竜討の戦い
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134 アズラットの階層突破

 順調に鍛えレベルの上昇とスキルの強化に勤しむアズラット。

 しかし、それなりにスキルのレベルも上がり、強力な魔物も食らい、失われたものを補填した。

 そうしてアズラットはリベンジに向かう。十七階層、骨の蜘蛛の先にいる魔物を。


(よし……二回目だが、行けるかね……?)


 エルフの里から行ける十七階層の魔物を倒し、その先に進む。

 別に蜘蛛の魔物は倒さずとも行けるが、行きがけの駄賃のようなもので倒している。

 もちろんレベルも上がるしスキルの経験値にもなる。安全度も高い相手である。


『行くんですか?』

『まあ、またやばいことになったら流石に挑戦するかどうかは考えるけど……』

『あの魔物相手だとアズさんでも死ぬ危険の高い魔物ですから本当は挑んでほしくないんですが……』

『具体的にはどのくらいの強さなんだ? 一応竜もいたが、それよりも強いのか?』


 竜種とはアズラットの知る限り最強の種族である。

 果たして今から挑む相手はそれよりも強いのか。


『確かに竜は強いですが、あの狭い場所でならばその行動の大半は制限されます。それにアズさんの場合、ブレスにさえ気を付ければほとんどの物理攻撃は平気ですよ? 空を飛べない竜相手ならどうとでもなると思います。今なら<空中跳躍>で相手の攻撃範囲から逃れるのも容易いでしょう。そもそも、竜が強いのは高い攻撃力と高い防御力、多彩な攻撃手段に各属性に対する耐性、つまりは高い万能性でありながらそれぞれ高性能の能力となっていることが理由です。逆に言えばその防御能力を無視できる相手、その攻撃能力を無視できる相手には竜はそこまで強いとは感じない相手です。アズさんの場合、炎にさえ気を付ければ竜を相手にする場合ほとんど大丈夫でしょう。一部の竜はスキルを使ってくる場合があるのでそれが少し怖いくらいでしょうか? 一方、あの魔物はアズさんの防御能力をやすやすと超えます。そのうえ攻撃範囲が広いですから、アズさんの弱点である核を容易に破壊することができる可能性があります。逆に言えば防御能力などを考えれば竜よりははるかに倒しやすいはずですが……』

『ふうん……強さ的にはどうなんだ?』

『こちらの魔物のほうが竜よりも強いでしょうね。ただ、この場所ではという但し書きが付きますけど。あの魔物は移動ができませんから』

『どういう魔物だよって言いたくなるなあ……』

『迷宮内のみ存在できる魔物もいますので。今までもそれに近い魔物は何度も見てきましたよね?』

『まあな……』

『ともかく、行くのは構いませんが……絶対に、絶対に死なないでくださいね? 末代まで祟りますよ?』

『死んだらその時点で末代なんですけど? そもそもスライムに子孫なんてできてたまるかって話なんだが……』


 分裂ならともかく、子を成すのはまともな手段では不可能である。まあ、できなくもないのだが。

 そんな話はさておき、アズラットは先に進む。アズラットがその先に踏み入れ、魔物が出現する。

 以前見た時と変わらぬ様相、魔物というよりは一種の迷宮のシステムに近いそれは特に動きを見せない。


(………………)


 しかし、アズラットが侵入すると同時に翼がアズラットに向けて羽を飛ばしてくる。

 それは以前と変わりがない。アズラットの場合その羽は受けたところで特に害のない攻撃である。


(こちらは問題ない。防ぐまでもないな……問題は……っ!)


 その羽の攻撃を受け、吸収し、アズラットはその次の攻撃を待つ。

 相手の魔物は八本の腕を持つが、そのうちの虫の足のような腕がアズラットに向け振るわれる。

 アズラットの持つ振動感知の能力、それであればその動きを事前に探知できる。

 しかし、それでも相手の攻撃が速い。一方、アズラットの動きはどうしても遅い。

 もともとスライムという種族はそこまで機敏な動きができるわけではない。

 <跳躍>を用いたとしてもだ。

 <跳躍>を用いてその足の攻撃を回避しようとするが、だが回避しきれない。

 幸いなことに、以前攻撃を受けた経験もあり羽の攻撃を受けた後に<防御>を展開していた。

 その<防御>が攻撃を受け、撓み、破壊される。そして吹き飛ばされる。

 <防御>によって攻撃が受け止められ、威力が減衰し、<防御>を破壊できてもアズラットは切り裂けなかった。

 その結果叩き飛ばされ吹き飛んだのである。


(っと!)


 その吹き飛ばされた勢いのまま壁に叩きつけられそうになる。

 別に叩きつけられたところで構わないが、叩きつけられた後からの復帰が容易ではないだろう。

 そう判断し、アズラットは<空中跳躍>を使い軌道を変更した。

 それでも勢いは完全に殺されていないので壁に取り付く。そのまま相手に向けて<跳躍>。

 アズラットの行動と同時に、魔物の腕も動いていた。

 アズラットが元々叩きつけられるだろう位置に向けて。

 そしてもう一つの腕も今度はアズラットが今取り付いた壁に向けて振るわれる。


(っ! もう一度っ!)


 <跳躍>あの後、さらに<空中跳躍>。もう一本の腕の動きを振動感知で察したからだ。

 そしてアズラットの軌道に向け腕が振るわれる。

 まだもう一本あるが、先ほど振るわれたままの状態である。

 そして残りの腕は人間の腕であり、物理的な威力で考えればアズラットには通用しない。

 そもそも虫の足とは違い伸びがそこまででもない。近づけば流石に届くので危険はあるが。


(よし、懐! ここまでくれば……って、さすがにそこまで楽でもっ!)


 虫の足の腕はその長さゆえに、近距離では扱いづらい。

 まったく届かないわけではないがやりにくいだろう。

 そのうえ下手をすれば自分を傷つけることになる。

 もっともこの魔物がそれを気にするかはわからない。

 ただ、人の腕は違う。近くに来るアズラットに向けて振るわれる。

 単純な物理攻撃はアズラットには意味がない。

 しかし、握り潰そうとしてくるならば少し話は違うだろう。

 アズラット自身は<圧縮>により潰されているような状態であるため押し潰す攻撃には強い。

 それでも潰されるとやりづらいところである。

 一応<圧縮>を解除すれば手を開かせることはできそうだ。

 とはいえ、わざわざ潰されたいわけでもない。


(体の内側に逃げるっ!)


 <穿孔>。穴をあけその中に逃げ込む。流石に体の中には相手も届かないだろう。

 ここで相手が動けないということが大きい。アズラットを振り払う手段がない。

 それ以前に体内に入り込まれれば流石に振り払えない。その手も足も、体内には入れられない。


(よし……っていうか、急ぐ必要はないんだよな? 無理に<圧縮>を解除して攻撃する必要性も……ないよな?)


 相手の体内であれば極めて安全である。流石に相手も身体を自由に操ることはできない。

 体内にいるアズラットをどうにかして外に出す手段、もしくは体で押し潰す手段がない。

 そもそもアズラットはスライムであり、その消化能力があれば振れている限り溶かし食らうことができる。

 ゆえに、今のアズラットは極めて安全だ。


(……あ、時間かかるんだっけ)


 ただ、アズラットなど、スライム種は死んでいる相手と生きている相手で消化できる時間が違う。

 死んでいる相手のほうが消化速度は速く、生きている相手は消化に時間がかかる。

 であれば、無駄に時間をかけるよりも早いうちに殺して食らうほうがいいだろう。


(……ちょっと惨いかもしれないが、悪いな)


 じっくり消化されるほうと体内で大きくなって内側から爆裂四散するほうがいいのか。

 常識的に考えればどちらもひどいことに変わりないだろう。

 ともかく、体内から魔物は爆散し、その命の火を消した。

 そしてその亡骸をアズラットは取り込んでいく。


(…………意外にあっさりと勝ってしまった)


 相手は恐ろしい、そう以前感じていた相手であるはずだが、今回はあっさりと倒してしまった。

 もちろんアズラット自身危険なタイミングは幾度もあったので実際はそこまであっさりではない。


(まあ、いいか……これで十八階層に行ける、わけだが。ま、ネーデが育つのを待つか)


 アズラットだけで十八階層に行くことができる。しかし、アズラットはそうしない。

 今は分かれて行動しているがネーデが現在鍛えている最中だ。

 ひとまずアズラットはネーデが育ち、強くなるのを待つ。竜を倒せる程度に。

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