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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
三章 竜討の戦い
133/356

132 特殊なスキル取得

 <スキル:跳躍のレベルが五十に到達しました>


(おお?)


 現在十七階層にてレベルと共にスキルを鍛えているアズラット。

 あまり頻繁にステータスを確認しないためどの程度成長しているか基本的に不明である。

 そのため成長がどの程度かはわからないが、とりあえず鍛えろと言われた物を育てている。

 しかし、そんな折に唐突に響くアノーゼのものとは違うアナウンス。

 <アナウンス>はアノーゼがアズラットと話すためのものだが、それとはまた別だ。

 どちらかと言えばスキルを取得するときに来る無機質なそれに近い。


 <スキル:空中跳躍を自動取得します>


(えっ!?)


 アズラットは積極的にスキルの取得をしようとはしない。スキルには枠が存在するからだ。

 そのうえ一度取得したスキルを忘れることは出来ず、後で使い道が無くなろうとも消せない。

 スキル自体は損にはならないが、しかし枠を埋めて他のスキルを覚える余裕がなくなるのは困る。

 そういうことでアズラットは積極的にスキルを覚えない。覚えないようにしている。

 だが、いきなり強制的にスキルの取得をさせられてしまった。これは困る、と焦っている。


『ちょっ、ちょっとアノーゼ!?』

『どうしましたか……と言わずともわかります。今取得したスキルに関してですよね?』

『ああ! どういうこと!? 勝手にスキルを覚えたんだが!?』

『落ち着いてください。落ち着いて……』

『……そう簡単に落ち着けるか。とりあえずどういうことだ? 前に何か……そういえば<跳躍>について何か言ってたよな? 本当にどういうことだ?』

『ああ、だから落ち着いて……』

『一度本気で物申すぞ? 関係各所に文句をつけてやる』

『いえ、意味ないですから!? ちょっと混乱してますよね!? 深呼吸! 深呼吸を!』

『スライムに肺はないわっ!』

『アズさーん!?』


 何やら妙な状況になっているが、とりあえずアズラットとアノーゼのやり取りがしばらく続く。

 流石に少しアノーゼに文句をぶつけていればアズラットも落ち着く。


『……で、結局何なんだ? 勝手にスキルを取得したようなんだが』

『スキルの一部にはそういう感じに取得するものがあるんです。とりあえず、一度<ステータス>を使ってみてください』

『……<ステータス>』


 別に言わなくてもステータスは表示されるが、雰囲気でつい言ってしまうアズラット。

 まあスキルの発動を宣言したほうが確認したという事実をアノーゼも把握しやすいだろう。

 言っただけで<ステータス>を発動しないこともできるので実際には何とも言えないが。


『・種族:エンペラースライム Lv58

 ・名称:アズラット

 ・業

    スキル神の寵愛(天使)

    ■■■

    偽善の心得

    契約・ネーデ

 ・スキル 11枠(残2)

  <アナウンス>     <念話>

  <ステータス>     <契約>

  <圧縮lv74>    <防御lv26>

  <跳躍lv50> ――― <空中跳躍>

  <穿孔lv23>    <隠蔽lv51> 』


『……なんだこれ』


 思わずつぶやくアズラット。それまでのスキルとはまた違う特殊な表記になっていたからだ。

 いや、そこも妙ではあるが、それ以上にスキルの横に表記されている物もおかしい。


『……スキル枠が減ってない?』


 アズラットの覚えているスキルは今回覚えた<空中跳躍>を含め十。

 それに対しアズラットは五回進化し、初期枠の一と業の追加を含めスキル枠は十一だ。

 つまり覚えられるスキルは本来なら残り一つになるのだが、表記では残り二枠と表記されている。


『はい。<空中跳躍>は少々特殊な条件で覚えられるスキルです。先ほどアナウンスがあったと思いますが、<空中跳躍>を覚える条件は<跳躍>のレベルが高いことが条件となります』

『確かにそんな感じのアナウンスだったが……それとスキル枠については別だろう?』

『そうですね。ですが<空中跳躍>は<跳躍>を前提として取得するスキルで<跳躍>の派生スキル……別々のスキルではなく、<跳躍>の一部のようなスキルなんです。それゆえに<空中跳躍>は<跳躍>のスキルに含まれるのでスキル枠を消費せずに覚えられるスキルです。だからそろそろ良いことがあるかも、みたいな感じに言ったんですよ。新しいスキルを覚えられるうえにスキル枠を消費しないわけですから』

『……なるほど』


 先ほどことによっては文句を言うぞ、みたいにアノーゼに言っていたためアズラットは困っている。


『別に気にしなくてもいいですよ。それに関しては私が内容を明らかにしなかったのが問題です。スキルに関して色々と厳しい管理を行っているアズさんにはむしろ言っておいた方がよかったかもしれませんね』

『それは言える事や言えないことに抵触したりはしないのか?』

『……どうでしょう? 一応私は派生するスキルと言うものが存在する、ということは言えますが、どのスキルがどのスキルに派生するか、とかは言えないと思います。厳密には意識してあれがどうなる、これがどうなると詳しく言うことはできませんね』

『どういう理屈だそれ……』

『そもそもこういったことは規則で決められていることではないんです。ですがあまりこちらで把握するようなことを詳しく教えるのはやめてね、って感じなので一応意識して明確に教えるということはしません。ちょっと情報を漏らすくらいなら別に大丈夫ですけど。それにスキルの派生に関してはそちらで人間がスキルに関する記録をとっているものもありますから……もしかしたら別に言っても問題はないかもしれません』

『ふんわりしすぎじゃないのか、それ……』


 かなりふんわりしているが、神様が管理している物事は基本的にそんなものだ。

 厳格に管理されている物は世界の法則に組み込まれており、神様が直に管理するものは曖昧なところが多い。

 これは神が完璧な存在として成立していないからこそである。

 ミスを考慮しているためふんわりしているのだ。


『まああまり気にしない方がいいですよ? 細かく考えたら多分困惑します』

『……まあ、いいけどさあ』

『しかし、これで便利になりますね。<跳躍>のあと空中で更に跳躍することができますから』

『確かにそれは利点が大きいな……』


 <跳躍>での移動、跳びかかりはアズラットの基本的な移動手段、攻撃手段だ。

 <圧縮>を用いた攻撃手段の方がメインとなっているが、結局近づいて攻撃する必然性がある。

 そのため<跳躍>で跳びかかるのであるが、空中で軌道を変えると言うことが基本的にできない。

 空中に躍り出た場合その後回避できないと言う欠点もある。狙い撃ちにされてしまうだろう。

 しかし<空中跳躍>があれば話は違う。空中でも跳躍ができるため、何か危険があれば回避可能だ。


『一応問題点としては<空中跳躍>は一度の<跳躍>で一回しか使えないことです。上から落ちるなどで空中に出た場合でもそうですが。つまりは空中にいる間に一回しか使えず、どこかに接地するまではもう一回使うことはできません』

『二段ジャンプ的なものか……接地、っていうのは地面とかじゃなきゃだめとかの制限はないよな? 天井とか壁とかでも大丈夫だよな?』

『恐らくは。でも普通は壁とか天井に接地できませんけどね』

『その点に関しては俺はスライムだからな』


 不定形ゆえに天井や壁に着地できる。そもそもスライムが<空中跳躍>を覚える事自体特殊だろう。


『そうですね……ですが、一応試した方がいいでしょう。いざ本番で使って駄目、ってなったら困りますし』

『わかってる』


 流石にいきなり命のかかった戦いで試すつもりはない。


『……ふむ』

『どうしました?』

『これがあれば、もう少しなんとかなるか……?』

『まだ挑むのは早いです! なんとなくわかりますけど、<防御>をもっと鍛えてから行ってくださいね!』

『……わかったよ』


 さすがにアノーゼに忠告された過去もあり、それなりに素直にアノーゼの指示を受け入れる。

 未だスキルのレベルが低いと言うのはアズラットも自覚がある。

 ひとまずレベルを上げ、鍛え、また<空中跳躍>にも慣れ、それからリベンジを果たす。

 意外とアズラットは執念深いようである。

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