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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
三章 竜討の戦い
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127 最強種

 竜。その存在は改めて言うまでもないものだが、世界最強の種族である。

 強固な鱗、強力な肉体、そもそもからして巨体である。そして翼も持ち空も飛べる。

 飛行能力があるというだけで生物としてはかなりのアドバンテージになるだろう。

 そして炎を吐け、スキルも使え、種族によっては知能も高い。

 そのうえ竜種によっては雷を支配したり嵐を生み出したりもできると言う話もある。

 水の中でも自由に移動できる者もおり、溶岩の中も進むことができる。

 そういった逸話や伝承には事欠かず、出会えば死、出現すれば滅びが待ち受ける。

 もっともその存在は迷宮の外の世界においてはあまり見かけないものであるらしい。

 極めて強く、種としても最強であるが、その総数がそもそも少ないのがまず一つ。

 そもそも数が少ないため繁殖もまた難しい。食糧事情もあるだろう。

 そして最強だとしても無敵の存在ではなく、人間でも竜に勝てる存在はいる。

 冒険者であればその総勢を以てかかれば竜の一匹や二匹退治できなくはない。

 もちろん弱い冒険者だけではただ犠牲が増えるだけなのだろう。

 強い冒険者、それこそ竜生迷宮の十七階層に侵入できるような冒険者が必要だ。

 そしてその十七階層には明確に竜という障害が存在する。

 ただしこれは迷宮の外で竜を倒すのと違い、狭い迷宮内部という特徴がある。

 その点に関しては外に存在する竜よりも制限が多いということになるだろう。

 もっとも、相手側もその狭い空間を利用できると言う点を忘れてはならない。


「…………ここだよね?」

『(恐らくは。まあ、他の場所と比べると分かりやすく大きな洞窟になってるし)』


 ネーデとアズラットは十六階層の最初に来た場所、入り口からすぐの森の側に来ていた。

 エルフの里からいける場所は蜘蛛のいるボス部屋のみである。

 他のルートを通るには一度エルフの里から森側に戻ってこなければならない。

 この森にはエルフや獣人以外にも人型の魔物が存在し、時々それに遭遇する。

 ネーデもこちら側に戻ってきたときにゴブリンと遭遇していた。

 まあ、十六階層のゴブリンは最初の方にいたゴブリンよりは強い。

 しかしゴブリンはゴブリン。ここまで来ているネーデにとってゴブリンは大した強さではない。

 なのであっさりと倒し、十七階層への入り口……森側に存在するその場所に来たのである。

 そもそもここの森にいる魔物や獣も大したものではない。ここまで来ていれば自然とそうなる。


『(まあ、他の人型魔物の住処になっているのがわかればすぐに戻るように言うからあまり気にするな)』

「うん、そこはお願いするね」


 他の人型魔物がその先にいると下手をすれば殺し合いになりかねない。

 場合によってはネーデだけの問題では済まないだろう。なので違う場合アズラットが注意をする。

 アズラットの振動感知であればある程度の範囲から中に何かいるかどうかの探知ができる。

 もし竜が存在すればその存在も探知できるだろう。もっとも、居ない場合もあり得るが。

 二人は中へと進む。アズラットの振動感知には何者も反応しない。


「……大丈夫?」

『(ああ。何も存在している気配がないな)』

「竜もいないの?」

『(十七階層の強い魔物は現れたり消えたりするらしいな。基本的に前にここに来た人間がいて、それが倒されるか逃げるかなりすれば残っている、みたいな感じらしい。時間がたてば自然に消えて、また人が来ればその時に現れる……ということらしい)』

「そうなんだ……なんでそんな変な風になってるんだろう……」


 ネーデにとっては疑問に思うことだが、ダンジョンに住む魔物のアズラットには推測がつく。


『(魔物も何もいないから放置すると食事がなくて餓死するから、じゃないか? 飢えて弱ったところを襲うって言う手段もできてしまうだろうしな)』

「それができれば楽だね」

『(だからできないようにしてるんだろ……まあ、そこまでの考えが迷宮にあるかは知らないけど)』


 迷宮の謎は多い。ともかく、二人は先に進み広間に出る。


『(っ! 出たぞ!)』

「うん、見えてる!」


 広間に入り突如出現する竜。それにアズラットが反応し、当然ネーデにも見える。

 そして竜にもネーデの姿は見えている。竜はネーデを見て咆哮をあげた。


「えっと、これ、戦えるの?」

『(狭いしなあ……)』


 蜘蛛を倒して進んだ先にいた鳥の様相を持つ巨人のいた場所と比べると少し広く感じる広さだ。

 そして竜の位置から恐らく回避して先に進もうと思えば実現できる可能性があると思う所である。

 もっとも竜をどうにかして回避すること自体の難易度が高いのだが。

 単独であるネーデなら比較的可能性のある方法だが他の冒険者には無理だろう。


「っ! たっ!? わっ!? ううっ!?」


 竜の攻撃は多彩。爪、牙、角、翼、尻尾、その体そのものも武器である。

 その上まだやってきてはいないが遠距離攻撃のブレスまであるのだ。とんでもない脅威である。

 当たれば即死、とまではいかないが一撃でも受ければ確実に吹き飛ばされる。

 そして吹き飛ばされれば大ダメージは間違いないだろう。今のネーデでは死活問題だ。

 <防御>があれば一撃を受けても死にはしない。<防御>が耐えて受けてくれる。

 しかし、竜の体当たりで吹き飛ばされる際に確実に<防御>は消滅、その運動力は消えない。

 勢いのまま壁に当たれば洒落にならないことになる。そういう点ではまともに受けられない。


「怖いってこれ!」

『(わからなくもない。そもそも相手の体が大きいから全体が当たり判定だものな!)』


 まず相手の大きさが大問題となる。

 こちら側の攻撃は何処を狙っても当たりやすいが、当たりやすさで言えば相手も同じ。

 そして相手の攻撃はネーデの攻撃と違い当たった場合致命的になり得る。

 それに対してネーデの攻撃は当たったところでダメージになるかどうかすら怪しい。

 竜の体が強固で強靭、竜の鱗を切り裂きその内に届かせるのはネーデでは難しいだろう。


「っ! ダメ! 弾かれてる!」

『(撤退! 戻るぞ! 逃げるぞ!)』

「うん!」


 案の定ネーデの攻撃はその鱗で弾かれている。ワイバーンに通じても本物の竜には通用しない。

 それくらいにワイバーンと本物の竜には戦力に差が存在する。

 竜はこの世界に存在する最強の種族。それは並大抵の能力では超えることは難しい。

 それを思い知らされネーデとアズラットは十七階層から逃げ帰るのだった。






 エルフの里に戻ってきたネーデ。半ば分かっていたこととはいえ竜に負けて気落ちしている。


「はあ……」

『(流石に竜は強かったな。まあ、十七階層を越える上で一体倒すだけで済むルート、他の集落を通らないルートだ。集落で戦闘する可能性を想定するなら他のルートでは三回戦うことが一回で済むわけだ。難易度が上がって当然だ……まあ、だからあまり落ち込むなよ?)』

「うん」


 アズラットの言っていることは少し意味が分かりづらい。

 なのでネーデはあまりはっきりとわかっていない。

 とはいえ、アズラットが励ましていることくらいはわかる。なのでネーデは頷いた。

 しかし、だから何だ、という話になる。気分が回復したところで悩みが解決するわけではない。

 竜に挑むにしても、あの鳥の巨人に挑むにしても、どちらもネーデでは敵わない相手だ。

 倒せない以上先に進む手がない。

 もちろん他の集落からのルートを進むことを考慮しないわけでもない。

 だがエルフの里のような特徴が他の集落にあるとするのならその難易度は高いことに間違いない。

 エルフの里にいる人型魔物、虫の亜人にエルフの数は百以上。

 他の集落もそれほどまでの数がいるとなればまず戦えない。数は力だ。

 アズラットに任せれば不可能ではない……が、それはそれであまりネーデも使いたくない手である。


「どうしよう……」


 どうすれば先に進めるか。それについてネーデは悩んでいた。

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