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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
三章 竜討の戦い
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121 先に進む前に

 第十六階層、エルフの里の宿にて一泊したネーデとアズラット。

 なんだかんだで迷宮で過ごすのは過酷であり、自分たちではわからない疲労もある。

 休息や睡眠食事をとっていたとはいえ、ずっと迷宮暮らしの二人はかなり疲れていた。

 安全な場所で、何かに怯えることもなく警戒することもなく休めるのはとても大きい。

 そのためネーデもアズラットも久しぶりの安穏とした時間を過ごすことができた。

 とはいえ、ネーデの所持金も無限にあるわけではない。

 それなりにワイバーンの素材を持っていたのでお金に換えられたがそれだけだ。

 また新たにお金を集める必要がある、いやそれ以上に先に進むことを考慮するべきである。

 ここで難しい問題がある。十六階層の構造だ。


「えっと……よくわからないんだけど、ここってどうなってるってこと?」

『(まず今いるエルフの里だが、この里に似た他の人型の魔物の集落っていうのが各地に存在するのはわかるか?)』

「うん、多分……あのここに来る前に会った獣の人とかが住んでいる所、だよね?」

『(ああ。この集落も含め、そういった人型の魔物が住む集落群、そしてその人型の魔物が食料を得るため獣や食べられる草花が存在する森、基本的にはこの二つの構造だ。最初に入って来た十六階層の森、そこからそれぞれの集落に繋がる洞窟が存在し、その洞窟の先が十七階層であるらしい)』

「そうなんだ……ってことは十七階層にはここからすぐに行けるんだね」

『(そうだ。だが、同時に問題がある)』


 二人はここエルフの里で人間相手に情報収集をした。厳密に言えばネーデがだが。

 詳しく教えてもらうのにはギルド関係者がいいが、それ以外の店員や情報通も色々知っている。

 ここから必要なものを揃える過程で幾らか話を聞きながら情報を集めそれをまとめている。

 ネーデは頭が悪いわけではないが、あまり頭を使う機会が多くなかった。

 そのため知識が入ってもあまりそれを上手に使えない。それをアズラットが補完している。

 まあ、今はそれでいいだろうとアズラットは思っている。いずれはどうにかする必要があるが。


「問題?」

『(ああ。十七階層は構造自体は単純だ。各集落から通じる場所にとても強い魔物が存在する、そして最終的にどの集落から進んでも十七階層の最後で合流することになる。問題はこの強い魔物に関してだ。各集落……まあ、このエルフの里以外の集落は基本的に人間を受け入れないらしいからあまり関係の無い話ではあるが、各集落から行ける十七階層に出てくる強い魔物はそれほど強くない。いや、強いは強いらしいんだが、その先にいる魔物と比べると比較的強くない。えっと……なんて言えばいいかな。このエルフの里からいける十七階層だと、一つ目の場所がエルフの里からいける十七階層の強い魔物となっていて、その先にいるのは他の集落から繋がる十七階層の強い魔物がいる場所ともつながっている場所らしい。なんというか、十七階層は最終合流地点の手前にもう一つ他の集落からの合流地点があって、そこにさらに強い魔物がいる、らしいってことだ)』

「……? えっと……えっと?」

『(まあ、簡単に言えば十七階層に入って強い魔物と戦う、その先でもう一回強い魔物と戦う、そういう感じらしいな。二回強い魔物を倒して先に進めば十七階層を攻略完了する、ってことだ)』

「それならわかりやすいね」


 ネーデの場合、単純に何をするか、どうするかを列記するほうが話は速い。

 もっとも、それでは理解力の成長につながらないが、このあたりは説明する側の能力もいる。

 果たしてアズラットに説明力があるかどうか。わかりやすいように説明できるかは個人差がある。


『(だけど、これはあまりお勧めされないらしいな)』

「え? なんで?」

『(魔物が強いからだ。エルフの里から一回目の場所にいる魔物はまだ倒せるらしいんだが、その先にいる魔物が強すぎてどうしようもないらしい)』

「そうなんだ……それは面倒だね。でも、私とアズラットなら倒せる……かな?」

『(わからない。ただ、今までの冒険者が決して弱い冒険者ばかりとは思えない。そういった冒険者でも先に進めていないのなら……多分難しい、と考えるしかないだろうな)』


 ネーデとアズラットも決して弱いわけじゃない。

 しかし、それでも確実に勝てるとは言えないだろう。

 二人とも自分たちが弱いとは言わないが、決して強いと言える核心があるわけではない。

 ネーデは他の冒険者に対しては拒絶気味であるが、決して相手を弱く見ることもないはず。

 少なくともアズラットがこう言っているのならば事実なのだろうと納得する。


「……んー、じゃあどうするの?」

『(お勧めされている手段がある)』

「お勧め? なにか回避できる手段があるの?」

『(このエルフの里から通じる道以外の行き方があるってことだ)』

「へー……でも、確か他の集落には行けないんだよね?」


 他の集落には行けない、少なくともこのエルフの里ほど簡単には受け入れてもらえない。

 その点に関してはアズラット自身が語っている。そうである以上他のルートは使えない。


『(一つだけ十六階層の森から十七階層へと直行できる道がある。そこだと戦う必要のある強い魔物も一体だけしか出てこなくて、それを倒せばそのまま十八階層へと行けるらしい)』

「そうなんだ。だったら楽だね」

『(……そうだな。出てくる魔物が竜じゃなければな)』

「あ……竜、なんだ?」


 十四階層、十五階層でのワイバーンとの戦いも二人の記憶に新しい。

 ワイバーンであれば一体を相手に倒すことは難しくない。しかし複数は無理だった。

 そして今度は竜である。竜は複数出てくるわけではないらしいが、ワイバーンよりも強力。

 ただ、場所が場所なので空を飛ぶ相手と戦うことにはならないだろう。そこはありがたい。

 しかしやはり竜はワイバーンなどよりも強力。空を飛べないが代わりに広さがない。

 そういう点ではまた戦いづらくもある。まあ戦いづらさに関しては今更だ。


「それで……どうするの?」

『(最終的に竜相手に勝てる道を進む……のが一番なんだが、戦って勝てると思うか?)』

「…………ちょっと無理かなあ」

『(まあ、そうだよな。ワイバーン相手でも苦戦するんだし)』


 ワイバーン相手に苦戦する状態で本物の竜、ドラゴン相手に勝てるかと言われれば厳しいだろう。

 ネーデ自身竜を倒せると自信をもって豪語することは不可能だ。


『(だから一応基本方針はこの先、エルフの里からいける場所にいる十七階層の強い魔物を倒せることを目標にする。その先にいる魔物もどれくらい強いのか覗いてみたいところではあるが……駄目そうなら即帰還、レベルとスキルの充実を図ってから竜へと挑戦。その方針で行くつもりだ)』

「うん、わかった」


 そういった方針で決定した。

 これらの話、情報を集めるのに行った買い物で武器防具は揃っている。

 必要な食料に関しても、この先いるかもしれない道具についても購入した。

 なのでもう十七階層へと向かってもいい。


「それじゃあ行こう!」


 そう言って意気揚々にネーデは十七階層へと向かう……つもりだったのだが。


「ねえ、少しいい? 時間ある? 余裕あるかな?」

「え……? 私、ですか?」


 先へと進む前に、一人の少女……のような冒険者に話しかけられた。

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