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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
三章 竜討の戦い
110/356

110 対竜修行風景

「ふっ!」


 ネーデが息を吐き持っている槍を投げる。一直線、真っ直ぐに投げる。

 空に翼竜の姿は見えない。そもそも空に何かいるようには見えない。

 十四階層には森が存在する。その森に向けネーデは槍を投げている。

 その先に特に獲物となる魔物がいるわけではない。ただ投げるだけだ。


「……本当に大丈夫? あっちに誰かいたりはしないんだよね?」

『(ああ。いくらか先に進んで確認してるしな。まあ、後から人が来た……ってことまでは保証できないが)』

「うん、そこまではいわないけど……大丈夫かな?」

『(まあ、不安があるなら少し角度を上向きにするのもいいかもな。もしくは上空に向けて投げるとか。結局のところ<投擲>の練習、スキルに慣れる、レベル上げなわけだから)』


 レベル上げ。それもスキルのレベル上げである。


「本当にレベルってあるの?」

『(ステータスの方では確認できるからな。<投擲>にレベルがあるかはわからないが、基本的なスキルはレベルがあるらしいし)』

「でもこれには出ないんだよね……」


 ネーデが冒険者カードを出してそれに視線を落とす。


『ネーデ Lv40

 称号

  契約・アズラット

 スキル

  <剣術> <危機感知>

  <身体強化> <跳躍>

  <振動感知> <防御>

  <治癒>   <投擲>

  <保温>


 実績

  竜生迷宮三階層突破

  竜生迷宮十階層突破(仮)』


 ネーデの持つ冒険者カードの方にはスキルはでるがスキルのレベルは出ない。

 それに対しアズラットは自分のスキルのレベルまで確認できる。

 お互い自分の持つもので確認できる限界が違うためそのような判断になる。

 とはいえ、ネーデは基本的にアズラットの言い分を信用する。

 実際スキルを使えばその性能が上がることは既にネーデ自身実感としてわかっている。

 だがそれが<投擲>にも適用されるかどうかはわからない。

 そして、<投擲>は物を投げることをしないと使用判定はされない。

 積極的に物を投げるということは基本的にあまりないのである。

 まあ、軽く投げるようなことはあるが、明確に<投擲>のスキルを使用してのものではない。

 そのスキルにその内容、動作が含まれるからと言ってそれだけでは影響しない。

 結局スキルは明確にスキルを使われる行動でないと使用したことにならないのである。

 そのあたりの厳密な判定に関してはわからない。恐らくは管理神だけがわかることだろう。

 細かい話はさておき、ネーデは現在<投擲>を使用しそのレベルを上げている。

 それもこれも翼竜に翼に穴を開けるだけの威力の<投擲>を可能にするため。

 持っている武器、槍だけを竜の体の一部を用い強化したところで限界がある。 

 武器が強力であろうとも、スキルが弱ければ攻撃の威力はあまり高くない。


「はっ!」


 気合を入れてネーデが次の槍を投擲する。

 なお、この槍は簡単に作った槍であまり強力ではない。

 基本的に投げ槍は使い捨ての物である。あまり立派な物を作り使っても仕方がない。

 レベルを上げるだけならばそこまで立派な物は必要ないのだから。


(さて……ネーデには<投擲>の訓練をさせておくとして、俺がやるべきことは……十五階層の調査だな。ネーデに先に進ませるにしてもある程度内容を見ておかないと……それに進む場合、ネーデに何をさせるべきか、どう進むべきかも考えないといけない。俺だけならば問題はなさそうだがネーデもいる状態となるとな……)


 十五階層はワイバーンたちが無数にいる彼らの巣である場所だ。そこが終点ではない。

 その先、進む道がある。十六階層に続くだろう道が。問題は十五階層を通る必要があること。

 先に行った通り十五階層はワイバーンたち翼竜の巣。そこをまともに通るのは難しい。

 アズラットであればそこまで難しくはないだろう。スライムであるため小さく隠れやすい。

 スキルの関係もあるし、よくあるスライム穴の類も十五階層ならばありそうだ。

 ワイバーンもスライムの動向を気にしたりはしないだろう。それゆえにアズラットは安全だ。

 しかしネーデは違う。ネーデは人間であり冒険者である。武器も持っている。

 そんな存在が自分たちの領域に侵入してきたとすれば恐らくはかなり苛烈に攻撃して来るだろう。

 ゆえにネーデが侵入することは望ましいことではない。

 しかし、先に進むためには十五階層に必要である。ではどうすればいいか?

 一応候補はあるがそれを確定させる意味もありアズラットは十五階層へと進むつもりなのである。


(…………まあ、問題があるとすれば)


 アズラットが十五階層へと行こうとすれば確実にネーデがついてくることが問題だろう。

 言うことを聞いてくれるところはあるが、果たして離れることは彼女は了承するだろうか。

 依存されることはアズラットとしては悪くない。少々過剰だがその分頼りに、信用もできる。

 その分離れ難くなっている。ネーデ側が引き留めるからだ。


(……ま、そこは俺が普通に話し合ってなんとかするしかないな。別に置いていくわけでもないし、多分聞いてくれるよな?)


 誰に問いかけているのか。自問自答か何かだろう。






 当然ながら、アズラットがネーデに対し伝えた一時的に離れる行動に賛成を貰うのは難しかった。

 まあ、ネーデからすればアズラットがいなくなるのは耐えがたいことだろう。

 それに十五階層は危険地帯であるのはネーデもわかっている。

 そこにアズラットだけで行かせるのは心配である。

 しかし……アズラットの言うことに対しネーデはあまり強く出ることができない。

 彼女は基本的にアズラットの意見には賛成を示す。

 アズラットの言うことの方が正しいと信じているから。


「戻ってきてよ?」

『(<契約>をしてもいいが……)』

「そこまではいいよ」

『(そうか? まあ、安全かどうかの確認だけだ。先に進んだりはしない。やばそうなら即逃げてくるからあまり心配する必要はないぞ)』

「わかってる。十五階層の入り口付近で<投擲>の修行をしながら待ってるからね」

『(ああ……それでいい)』


 ネーデとしてもアズラットが心配であることには変わりないようでできるだけ近くで待つようだ。

 待ちながら、言われた通り<投擲>を鍛える。別に<投擲>を用いて破壊を行う必要はない。

 <投擲>のスキルを鍛えるにはスキルを意識しての投擲で十分。

 攻撃威力も攻撃による破壊も必要ない。

 逆に言えばそれだけでスキルを鍛えることができる。広い場所も敵も必要ない。

 なのでスキルを鍛えながらアズラットの帰還を入り口の側で待つことができる。


「じゃあ、とりあえず十五階層の入り口まで行く?」

『(そうだな。っと、作ってある槍とかは十分か?)』

「あんまり……必要なら幾らか動物とか魔物とか狩るけど……<投擲>を鍛えるだけならいる?」

『(……多分必要はなさそうだな。正直<投擲>を鍛えるだけならその辺の木の枝とかでもいいし、石ころくらいでもいい。まあ、時間がかかるようなら食事とかを得る必要はあるだろうが……)』

「……お腹がすいたら狩りには行くけど、出来るだけは待つね」

『(ああ。そうしてくれ)』


 そうして二人は十五階層と十四階層の境界、十五階層へとつながる洞窟の手前に来る。


『(<隠蔽>はないからワイバーンに見つからないように注意しろ。姿は隠せないからな?)』

「うん。行ってらっしゃい」

『(ああ。ま、朗報を待っててくれ……と言えるかもわからないけどな)』


 久しぶりのアズラットの単独行動。ここまでほとんどネーデと一緒だった。

 明確な一人行動はとても久しぶりである。

 久々すぎてどう行動していたかアズラット自身も忘れかけだ。


(ま、大丈夫だろ……)


 心配はあるが、今のアズラットはとても強い。なので恐らくは大丈夫……だと考えている。

 まあ実際に行ってみるまではわからないのだが。

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