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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
三章 竜討の戦い
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102 空中戦闘に向けて

『そういうわけで、空中にいる相手との戦いに関して有効なスキルについて訊ねたいんだけど』

『先ほど彼女と戦ってから決めよう、って言っていたと思いますけど? いきなり私にスキルについて聞いてくるのはどうなんですかそれ?』

『それはそれ、これはこれ。一応話を聞くだけはいいだろうと思うぞ?』


 アズラットとしては決める事自体は実際に戦い、そこからネーデと話し合って決めるつもりだ。

 しかし、それと事前に情報を得るかどうかはまた別の話である。

 確かに決めるのは戦ってからでいいが、その時点からアノーゼと話すのは手間だ。

 ならば事前にある程度話して置き、方針を幾らか決めておいた方が都合がいい。


『で、実際空中にいる相手に対抗するのにいいスキルって言うのはあるのか? 今までどうにも、上手く動けない中、空を飛んでうざったい敵って言うのはネーデでは相手をし辛かった。そもそも空を飛んでいる敵自体相手をし辛い所はあるからな』

『例えば十三階層がその例ということになりますね。あの場所では<投擲>で使えるような投げる物がなかったというものもありますし、根本的に動きづらいと言うものがありました。そのせいで空を飛ぶ敵とは戦いづらかったのは事実なのでしょう』


 ネーデの空中にいる相手に対する攻撃手段は主に<投擲>、次点で<跳躍>である。

 <投擲>は地面にいる状態での攻撃手段、自身がその場から動く必要性はない。

 <跳躍>は地面を蹴って空中に跳び上がり、相手に近づいた所で剣を振るい攻撃する。

 どちらも自分か物を空中に跳び上がらせそこにいる相手に攻撃するものだ。

 根本的にその両者には自由度という物が足りていない。

 空を飛ぶ魔物は基本的に自由に空を飛べる。上下左右前後、全方向自由自在に動ける。

 一応その生物に由来した飛行手段であるため、その場で飛び続けられるとも限らない。

 しかし、それでもかなりの自由性を持てることには間違いない。

 一度跳びあがったまま一直線に進むだけということはない。

 ネーデの<投擲>や<跳躍>はそういう点では単純な攻撃にしかならない。

 一旦空中に躍り出ることはできるがそれだけ、避けるのは容易と言えるだろう。


『そうですね、彼女の現在の攻撃手段では空中に存在する相手との戦いはかなり難しい物になると思います。いえ、実際難しかったわけですし。空の相手の届く彼女のスキルは<跳躍>と<投擲>、補助で<身体強化>などがあるにしても、結局のところ物を投げるか自分が空にいる相手のところに向かうかの二択。それは攻撃手段としてはあまり適当ではありません』

『俺の方も<跳躍>くらいしかない。まあ、<圧縮>の解除を利用して上から、伸ばした体の利用という手段も使えるけど……それでも根本的には一緒だな』

『はい。どれも結局のところ空を自由に移動する手段ではないわけですからね。考えていることはそういうこと、つまり空を自由に行動できるスキルということでしょう?』

『……まあ、一番考慮に入れるべきはそういうことなんだろうけど』


 空を飛ぶ。相手と同じ立場に立つ、それができれば最もいい手段と言える。

 だが、何時か覚えていないがアノーゼが言ったことがあったかもしれない内容がある。


『でも、お二人とも"空を飛ぶことはできない"、"空を飛んだこともない"。そうであるのならば、恐らくは空を飛ぶためのスキルは得られない』

『……そうなるのか』

『はい。例えば<念話>のスキルは私の<アナウンス>を受けていたから覚えられることのできたスキルです。人間である彼女は少々特殊でかなり多種多様なスキルを得られるだけの権限はありますが、それでもあらゆるすべてのスキルを覚えられると言うわけでもない。特に飛行手段系統のスキルはかなり難しい物です。まあ、例外はないわけではないのですが、それはそもそもからして飛行手段としてのスキルではないと言うのもありますし……』

『例外ってのは?』

『例えば<重力>。単純に考えれば重力の影響を受けないようにすれば、疑似的な飛行状態にできます。重力の方向を考えればある程度移動も制御できると考えられるでしょう。まあ、制御の手間やそれを行えるだけの技術の問題など様々な問題はありますが……』

『それはまた難しいな』

『他にも<風魔法>なども一例です。ですが、単純に<風魔法>を覚えても、飛行をできるくらいまで強化されるまでどれほど<風魔法>を使う必要があるのか。それを考えると難しい所ですね。あ、アズさんは<風魔法>は覚えられませんから。それは先に言っておきます』

『ああ、うん、そう……』

『やりようによっては例えば力。移動能力としての力としての使用により無理やり移動させる。<念動力>などで無理やり中空で動かすとか、地面に対して反発力……<斥力>ですか? そういうのを利用するとか、逆に<引力>で無理やり相手に引きつけさせるとかそういう手立てもありますね』

『実に難しいな、それ』


 やり方としては空中にいる相手との戦い方は色々とある。だが、それはまた難しい。

 基本的に自由に飛行するスキル、というものは覚え難いからである。

 もちろんこれが飛行能力を持つ存在や、せめて羽や翼を持つならまだ話は違う。 

 しかしそうでない生き物はスキルという形でも飛行系のスキルは覚えにくいのである。

 それゆえに、"飛行手段としても使えるスキル"を覚える形になるのである。

 大体はそれは力をかけ続けられるタイプのスキルとなる。


『つまり、空中で自在に動けるスキルは基本的にはない、覚えられないってことか』

『そうなります』

『それはまた……面倒な話だな』


 ある意味スキル頼りになる、というのは彼らの場合仕方がない。

 飛行能力の無い生物であるとどうしてもスキル以外で飛行する相手に対抗手段がないのだから。

 そうアズラットは考えている。しかし、その様子にアノーゼは少し疑問に思う。


『……何で飛行することばかり考えているんですか?』

『え?』

『地面に引きずりおろした方が楽だと思いますけど……』

『…………』


 アノーゼの言うことは極めて単純なものだ。引きずりおろす。逆転の発想である。

 難しい話ではない。相手の土俵に上がるのではなく、相手を自分の土俵に引きずり下ろす。

 極めて単純な話であるが、アズラットはつい相手と相対する方向性で思考していた。

 それゆえにずっと飛行するスキルばかりを考えていたのである。


『た、確かにそうだよな』

『もしかして、今まで思いつかなかったと。まあ、アズさんはなんというか、強くなったせいもあって弱い側の立場では考えなくなったのかもしれません。自分で強い相手に挑み、勝てるようになった。悪いことではないかもしれませんが』

『うぐ……』


 かつてスライムであったころは弱かった。だから自分から挑むことはない。

 しかし、今のアズラットは四回も進化し、レベルも高くスキルもあり強力だ。

 それゆえに、相手に直接戦いを挑める。それが思考の幅を狭めていた。


『よし、じゃあとりあえず引きずり落とす事に関しても考証しよう』

『空を飛ぶ手段はまったくいい手段がなかったですし、それもいいのではないでしょうか?』


 とはいっても、アノーゼはそれも難しいのではないかとも思っている。

 実際のところ、飛行手段以上に飛行している相手を落とすのは難しい。

 それは"飛行手段の阻害"だからだ。つまり飛行手段に対抗できるものが必要である。

 逆に言えば、それは飛行手段としても扱えるものになるのではないか?

 極端な話だがそう思う内容だからである。


(まあ、検証してからで構わないでしょう。多分駄目だと思いますけど)


 アノーゼはそれについては言わなかった。

 考えればいい案を思い浮かぶかもしれないからである。

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