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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
三章 竜討の戦い
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101 巨大飛行生物対策

 十四階層に戻って来たネーデとアズラットはワイバーンの対策を始める。

 しかし、それ自体はあまりうまく行く様子を見せていない。


「……どうやってあれの相手をするの?」

『(そこなんだよなあ……)』


 現状ネーデとアズラットは十四階層にやってくるワイバーンを相手にしようと考えている。

 しかし、そのワイバーンを相手にしようにもワイバーンは翼竜または飛竜と呼ばれるもの。

 つまり彼等は基本的に飛行していることが多い。十五階層では高い所に住んでいるし。

 十四階層に訪れる彼らは空を飛びながら獲物を物色している。

 そんな空を飛んでいる相手に対しネーデとアズラットが取り得る有効手段が少ない。


『(<投擲>を使って倒す、とは考えたが、当てる事自体は出来るかもしれないんだが……問題は突破力なんだよなあ)』

「突破力……」

『(ネーデは決して弱いわけではないだろう。だが、相手は腐っても竜。亜系の翼竜飛竜とはいえ、腐っても竜。竜ってのは大体は強いもんだ。その体の鱗と強靭な肉体は強固な防御を、その強靭な肉体と営利な爪と牙は比類なき攻撃を、さらに言えばあれが竜であるなら……ブレスってくるかもなあ)』

「竜、怖い」


 竜という生物はおおよそどの世界においても最大最強の生き物とされることが多い。

 実際のところは不明であるし、相手は本来の竜とは違う翼竜または飛竜と呼ばれる亜竜系統。

 しかし、それでもやはり竜は竜。普通の魔物と比べると並大抵の強さではない。

 ネーデの持つ<投擲>は確かに優秀な攻撃手段となるだろう。

 だが、果たして竜を落とせるほどか?

 そもそも<投擲>に使えるほどの良い投擲物があるかも疑問である。

 剣など刃物を投げられるのならそれなりにいい攻撃手段になるかもしれない。

 だがネーデの持つ刃物はその持っている剣のみ。あまりたくさん持つこともできない。

 そして、石や岩は十二階層まで戻らなければ入手が難しい。

 一応十五階層でも回収できる可能性はあるが、身の危険の方が大きいだろう。


「……でも、実際それくらいに危ないの?」

『(それが分からないから困ってる。今のところワイバーンは十五階層でみたぶんぶん飛び回っている姿と、十四階層に来て森にいるそれなりに大きな動物を襲い喰らって持ち帰ってる姿くらいだ。実際どれくらいの攻撃能力を持つかはちょっとわからないんだよな。まあ、あのサイズがサイズだからそれだけでも単純にやばいって話にはなってくる。大きいってことは強いってことなのが既に証明されているからな……)』


 大きいと言うことは脅威である。これは十二階層、九階層で示されている。

 巨人、巨虫、巨大蚯蚓。それらよりも低規模ながら、大きな魔物は色々な階層で出ている。

 そしてそれらの魔物が結構な脅威であるのは戦ったネーデ自身が分かっている。

 まあ、例外的に大きさはさほどでもないがとんでもない脅威になった魔物もいたが。

 どちらかというとワイバーンもそれに近い性質があるかもしれない。

 アズラットの知る限り、ワイバーンもグリフォンも同じような幻想の存在であるのだから。


『(まあ、ワイバーンの強さはさておき。実際どうやって戦うつもりだ? 相手は空を飛んでいる。そしてあの大きさだ。はっきり言って相手が空を飛んだ状態のままブレスを吐いてきたらこちらには対抗策とかないぞ? 近づくのですら大変な状態なんだからな)』

「うーん……」


 ネーデは<跳躍>のスキルを持っている。

 それは空にいる存在に対する対抗手段……にはなり得ない。

 厳密には、そのスキルで飛行している魔物に届き得る可能性はある。

 しかし、それは継続的に作用しない。<跳躍>を使い上空にいられる時間はわずかなもの。

 すぐに重力に引かれて落下する。そもそも空中を自由に移動する手段ではない。

 下手な使い方をすれば一方的に攻撃を受けるだけの状況になりかねない。


「何かスキルを覚えるとか?」

『(安易にスキルを覚えるのもどうかと思うけどな……とりあえず考慮しよう。まあ、まずお互いどういう強さなのかを確認したいところだが)』

「えっと、冒険者カード……見る?」

『(参考までに)』


 ネーデの現在の状態、および<ステータス>のスキルを用いて自身の状態も確認する。


『ネーデ Lv38

 称号

  契約・アズラット

 スキル

  <剣術> <危機感知>

  <身体強化> <跳躍>

  <振動感知> <防御>

  <治癒>   <投擲>

  <保温>


 実績

  竜生迷宮三階層突破

  竜生迷宮十階層突破(仮)』


『・種族:スライムキング Lv43

 ・名称:アズラット

 ・業

    スキル神の寵愛(天使)

    ■■■

    偽善の心得

    契約・ネーデ

 ・スキル 10枠(残1)

  <アナウンス>    <念話>

  <ステータス>    <契約>

  <圧縮lv67>    <防御lv11>

  <跳躍lv38>    <穿孔lv3>

  <隠蔽lv38>    <>    』


(なんというか、かなり強くなったのはわかる。スキルの充実もわかる。<圧縮>だけ妙に高レベルな気がするな……ネーデのレベルからすれば覚えられるスキルは十だ。取得しているスキルが九だから確かにスキルを覚えることはできる。その点で言えば俺も今は……スライム、ビッグ、ヒュージ、ボス、キングで五番目。寵愛の恩恵もあって十のスキルが覚えられるから一枠の空き。これはネーデと一緒か。まあ、余裕があると言えばあるかもしれないが……やっぱりもうちょっと汎用性のあるスキルか、万能性の高いスキル、もしくは本当にやばい場合の対策手段となるスキルが欲しい。今のところワイバーンは厄介ではあるかもしれないが、現状から考えれば絶対に新しいスキルを取得して戦うべき相手かも不明。そもそも、何のスキルを取得する? アノーゼの言う所では俺の得られるスキルはスライムという主の性質に由来する限定的なもの。ネーデはわからないが、仮に得るとして何を得る? <飛行>? 仮にそれを得て、どれほど自由に扱えるか。翼もない生き物がそのスキルを十全に扱えるかも謎。まあ、そのあたりはアノーゼに訊けばわかるか……うん、やっぱり自分だけで考えても答えは出ない。むしろ一度ワイバーンと実際に戦ってみてから自分たちで対抗できる相手なのかどうかを確認したいな。まあ、空を飛んでいるからどうしようもない、という理由でスキル取得を考慮する流れになっているわけだが。実際の所や利用はなくはないだろう。<投擲>を当てて気を引く、空を飛んだままずっと、とは限らないし近づいてくる可能性もある。向こうも腹が減っているなら焼いて殺すよりも直接食い殺しに来るかもしれない。色々と試してからでも遅くはないな)

「アズラットー? また考え事ー?」

『(ああ。とりあえず、だ。今はまだスキルの取得は置いておいた方がいいと思う。実際今のネーデや俺がワイバーンに敵わないかどうかなんてのは挑んでもいない以上わからない。空中にいるのが厄介なのは変わらないのだが、色々とやって本当に現状ではどうしようもない、となった場合に初めて対抗するためのスキル取得を考えることにした方がいいと思う。いざという時のためにスキルは空きを作っておいた方がいいからな。グリフォンの時の事とかを考えると)』

「……うん」


 九階層にいた時、グリフォンに襲われた時。

 ネーデは死にかけた。アズラットもかなり危険だった。

 あの時ネーデを生かしたのはその時点で覚えた<治癒>のスキル。

 あの時アズラットが助かったのはその時ネーデが覚えた<投擲>のスキル。

 その二つはスキルの空きがあったからこそ覚えることができた。

 一時の対抗策としてスキルを覚えるのは愚策であるが、死ぬかもしれない時はその愚策も必要だ。

 だからスキルには空きを作っておいた方がいい。汎用性か万能性のあるスキルを覚える。

 そういう基本方針を取っているのである。あれこれスキルを覚えずに済むように。

 複数人であれば協力の使用もあるが、今のところネーデとアズラットはこの二人だけなのだから。


『(まあ、ひとまずワイバーンを見つけて追って、挑んでみるのが必要だろうな。やれるだけやってみよう)』

「うん」


 十四階層で何度も見かけるワイバーン。それに対し、実際に戦闘を挑んでみる。

 傍から見てあれこれと考えるだけでは意味がない。

 実際にどうなのかを確認しなければならないだろう。

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