01
「ここ、民家だよな……」
家に侵入したヴァージルは、まず当然にもほどがある呟きを漏らした。
家の中は薄暗く、人のいる気配は感じられない。
ぼっちだった。外の景色が雨というのも、寂しさを加速させる。
「ま、雨が止めばいいんだし」
ヴァージルは敢えて明るく言った。
それから雨が降りやまない窓の外を眺めつつ、これからのことを考え始めた。
親友のこと、この屋敷のこと、屋敷の主人のこと、人間のこと、自分のこと。
そうこうするうちに、雨は小降りになっていた。
「お、これぐらいならいけるな。さあて、帰るか」
扉に手をかける。
がちゃん。
明らかにカギのかかっている音が聞こえた。
ヴァージルは視線を手の上に落とす。
何度か確かめるように手を引いてみても、結果は同じ。がちゃん、がちゃんと、開かない音が聞こえるだけ。
「マジか」
もうこうなったら不法侵入がどうとか気にしている場合ではない。早急に中の人を探し出して、カギを見つける必要がある。
ヴァージルは手を扉から離した。
カギがかかっているなら、何度も音を鳴らして足掻いても、意味はないからだ。愚者の愚行である。
「台所かな、これは」
呟いて、ヴァージルは知る。自分の入ってきた扉は入り口ではなくて、裏口であることを。
裏口がオートロックされる現象に、ヴァンパイアである彼はまったく馴染みがなかったが、そういう理不尽があることはよく知っていた。
いつも理不尽を押し付けてくる愉快な親友のお陰だろうか。
「ヴァンパイアを朝に起こすなよ……」
痛む頭を抱えて、ヴァージルは廊下に出た。